水処理の使用電力8割減 発電微生物を活用 パナソニックや東大など、7〜8年後に実用化 :日本経済新聞
東京大学と東京薬科大学、パナソニック、積水化学工業は、発電する微生物を使って工場などから出る汚水を処理するシステムの開発を始めた。微生物が汚水中の有機物を処理しながら、施設を動かすのに必要な電力をまかなう。電気の使用量を最大で8割減らせるという。2014年度から実証試験を手がけ、工場や下水処理場向けに7〜8年後の実用化を目指す。
生物の多くは有機物を体内に取り込み、二酸化炭素(CO2)と水に変える。この際に生じた電子を、細胞が取り込んだ酸素に渡すことで、生命活動に必要なエネルギーを得ている。自然界には体内に生じた電子を放出する微生物がいる。
東大の橋本和仁教授と東京薬科大の渡辺一哉教授らは、こうした性質を持つ微生物を複数見つけて「微生物燃料電池」を試作した。マイナス側の電極の金属の表面に微生物を付けて廃水に浸すと、発生した電子が電極に流れて発電する仕組み。1リットルの下水を使って実験したところ、有機物を6時間で8割除去し、50〜100ミリワットの電気を得られた。
研究チームは約1トンの廃水を24時間程度で処理できるシステムを開発する。電池の規模を大きくし、使う電極の改良や微生物の組み合わせによる発電効率の向上などを進める。
施設の照明や監視・制御システムなどの電力もほぼまかなえるとみている。食品工場など有機物を多く含む廃水を出す工場で実証試験を実施。約2年間かけて廃水の処理能力や省エネ効果などを確かめる。
下水や工場廃水の処理施設は、有機物を除去して浄化するときに微生物を使う。廃水をかき混ぜて微生物に酸素を送るために電気が必要になる。新システムで使う微生物は酸素がない環境でも生きられるため、汚水をかき混ぜる装置が不要になり、電力使用を抑えられる。
また従来の処理施設では、増えた微生物は汚泥になるため、定期的に取り出して焼却処分する必要がある。新システムでは微生物の増殖が少なく、発生する汚泥の量も3分の1程度に減らせる見通しだ。