津波対策の都市システム「グリーンマウンド」を開発 清水建設(10月16日)|復興計画WATCH …全文はURLをクリックして下さい。下には清水建設のニュースリリースを全文掲載します。
清水建設(宮本洋一社長)は16日、津波被害を軽減化し、かつ地域住民の避難場所を確保できる都市システム「グリーンマウンド」を発表した。ローテク・ローコストの津波対策として、津波被害が予想される太平洋側沿岸地域の自治体に対し本格的な提案活動を行うという。
グリーンマウンドは、緑の丘を利用した耐津波型の都市システムで、海岸線のグリーンベルト内などにちどり状に配置する「消波型マウンド」と、居住域に一定間隔で配置する「避難型マウンド」で構成される。従来の防波堤は津波に"剛"で正対するが、グリーンマウンドでは、消波型マウンドが"柔"で津波をいなし、避難型マウンドが地域住民の避難場所となる。
マウンドの形は、最も津波と正対しない円錐台を採用し、そのベースとなる規模は、小型マウンドが底部直径50m、頂部直径10m、高さ10mで、大型マウンドが底部直径110m、頂部直径50m、高さ15m。中小の建設会社でも施工できるように、法面の傾斜角を杭や擁壁が不要な30度未満に設定する。
ローテク・ローコストの都市システムが津波被害を軽減/ニュースリリース2012年−清水建設
〜津波に正対しない円錐台「グリーンマウンド」〜
清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、津波被害の軽減を目的に、ローテク・ローコストの対策で津波エネルギーを吸収し、かつ地域住民の避難場所を確保できる都市システム「グリーンマウンド」を開発、東北はもとより、大地震発生時に津波被害が予想される太平洋側沿岸地域の自治体に対する提案活動を本格化します。
太平洋沿岸地域の自治体は、東日本大震災で甚大な津波被害が発生したことから、津波対策の必要性に迫られているものの、財政難のおりから対策の進捗が遅れています。また、大掛かりな対策工事は施工の難易度が高く、限られた大手建設会社しか対応できないことから、短期間で全国的に展開することは不可能です。そこで当社は、ローテク・ローコストで津波被害を軽減するグリーンマウンドを開発したものです。
グリーンマウンドは、環境に優しい緑の丘を利用した耐津波型の都市システムで、海岸線のグリーンベルト内等にちどりに配置する「消波型マウンド」と津波被害の可能性がある居住域に一定間隔で配置する「避難型マウンド」から構成されます。従来の防波堤が津波の圧倒的なエネルギーに対して“剛”で正対するのに対し、このシステムの特徴は、消波型マウンドが“柔”で津波をいなしてエネルギーを吸収し、避難型マウンドが地域住民の避難場所になることです。
マウンドの形は、平面的にも立体的にも最も津波と正対しない円錐台にします。東日本大震災でも、円錐台形の小さな丘が津波をいなし、避難場所になった事例が報告されています。設置場所や期待する津波エネルギーの吸収効果によりマウンドの規模は異なりますが、ベースとなる規模は小型マウンドで底部と頂部の直径がそれぞれ50mと10m、大規模マウンドがそれぞれ110mと50m、頂部の高さは前者が10m、後者が15mです。法面の傾斜角を杭や擁壁が不要な30度未満に設定することで、中小の建設会社にも施工できるようにします。
マウンドの構成材料については、表層の0.3mを木材チップ、その下層の0.5〜1mを津波堆積物や浚渫土、その内側の土台を石やコンクリート塊とします。東北地方に建設する場合、その大部分を震災廃棄物で補うことで、廃棄物の処理・処分に貢献します。また、マウンド表面に植樹や種子吹付を行うことにより、竣工後、数か月もすればまさに“グリーン”マウンドとなります。
消波型マウンドの津波の遡上抑制効果については、数値シミュレーションにより確認しています。例えば、地盤勾配1/100の沿岸部に11mの高さの津波が到来することを想定したケースでは、マウンドが無いと海岸線から1,750mの範囲まで津波が遡上しますが、海岸線に沿って高さ10m、頂部直径10m、低部直径50mのマウンドをちどり状に4列配置することで、津波の遮蔽効果やマウンド表面の植栽の摩擦効果などにより、遡上範囲を1,150mに抑制できました。さらに、マウンドの背後地点での津波到達時間は約3分遅くなり、最大浸水深も8.5mから5mに抑制できました。
グリーンマウンドの工期と建設費は、構成材料を震災廃棄物で補えるか否かによって異なりますが、小型マウンドは6カ月、1億円から、大型マウンドは18カ月、5億円からとなります。
以 上
≪参 考≫
1.グリーンマウンドの概要 <colgroup><col width="40%" /><col width="20%" /><col width="20%" /><col width="20%" /></colgroup> 小型マウンド 中型マウンド 大型マウンド 頂部直径 10m 30m 50m 低部直径 50m 90m 110m 高さ 10m 15m 15m 頂部面積 78m2 706m2 1,960m2 頂部避難収容人数 50人 470人 1300人 震災廃棄物処理容積 8,000m3 46,000m3 79,000m3 工費 1億円 2.5億円 5億円 工期 6カ月 12カ月 18カ月 2.グリーンマウンドの活用方法消波型、避難型という一般的な活用方法に加え、マウンド内部に備蓄施設を建設する備蓄型、マウンド内部に駐車場やエネルギープラント、集会場等の建築空間を設置する建築空間内蔵型、マウンド頂部にホテルやオフィス、集合住宅棟を建設するタワー建築組み込み型等を想定。
3.海岸線防潮丘の実行プロセスとしてのグリーンマウンドの活用各自治体がマスタープランで計画している海岸線グリーンベルト内の防潮丘の実現プロセスにおいて、グリーンマウンドの活用が可能。防潮丘は膨大な規模となり、ローコストで短期間には構築できないため、ステップ1としてグリーンベルト内に消波型マウンドを複数列建設し、ステップ2としてマウンドの隙間に盛土しながら防潮丘を整備。ステップ3として、植樹等を行い防潮丘を完成させる。仮に防潮丘が完成に至らない過程で津波に遭遇しても、グリーンマウンドによる減災機能を担保できる。
海岸線のグリーンベルト内等にちどりに配置した「消波型マウンド」と居住域に一定間隔で配置した「避難型マウンド」
津波到来時には、避難型マウンドの頂部が避難場所となる。
海岸線のグリーンベルト内にちどり配置した消波型マウンド(断面図)