豪で「日の丸ガス田」開発へ 国際石油帝石と仏トタル :日本経済新聞
ドマージュリーCEO
【パリ=古谷茂久】国際石油開発帝石とフランスのエネルギー大手トタルが、オーストラリアの大型ガス田「イクシス」開発で年内にも最終合意する。総事業費が当初見込みより、米ドルベースで5割増の300億ドル(約2兆3000億円)超に膨らむが、アジアの天然ガス需要の拡大は続くとみて事業着手に踏み切る。日本企業が初めて主導する「日の丸ガス田」開発が始動する。
トタルのドマージュリー最高経営責任者(CEO)がパリで日本経済新聞に明らかにした。イクシスは国際石油帝石が76%、トタルが24%の権益を保有。豪州北西沖で産出するガスを液化天然ガス(LNG)に加工して日本などに輸出する。日本には国内需要の1割近い年600万トンを電力・ガス会社に供給する。
ドマージュリーCEOは2日に来日し、国際石油帝石などとの協議に臨む。イクシス事業については「年内の最終投資決定に向けて準備しており、2016年後半には生産を開始できる」との見通しを示した。最終投資決定はプラントを発注する重要な節目。具体的な投資も始まり、事業は後戻りできなくなる。
総投資額については「300億ドルを超えるだろう」と述べた。これまでは200億ドル(約1兆6000億円)超としてきた。増える理由は明らかにしなかったが、「イクシスは当初予測より埋蔵量が多い。天然ガスだけでなくコンデンセート(超軽質原油)も豊富で、長期の採掘が可能だ」と指摘。ガス田がLNGの主要市場である日本や韓国、中国に近く、資源価格も上昇していることから「投資額以上に経済的な利点の多いプロジェクトだ」と述べて採算悪化にはつながらないとの見方を強調した。
そのうえで、事業資金の確保について、「(金融機関など)外部からの調達に自信を持っている」と発言。トタルが保有する24%の権益については「増やしたいと考えており、売却することはない」と言明した。
一方、福島第1原子力発電所事故の影響でエネルギー戦略の見直しを迫られている日本について「ガスの割合が高まるのは確実だが、再生可能エネルギーも大きくなるだろう」と予測。「今後、日本で太陽エネルギーの開発を進めたいと考えている」と述べ、再生可能エネルギー市場に本格参入する考えを示した。
トタルとは :日本経済新聞 トタル フランスを代表する石油メジャーで、世界各地に権益を保有し石油や天然ガスの採掘と生産を手掛ける。欧州を中心にガソリンスタンドも展開。再生可能エネルギー部門も強化している。2010年の売上高は1592億6900万ユーロ(約16兆6000億円)、グループの純利益は105億7100万ユーロ。ドマージュリー最高経営責任者(60)は1974年にトタル入社。開発・生産部門のトップなどを経て07年から現職。