これからの夢物語ではなく、今現実に動き出しているプロジェクトです!資源が枯渇する云々の中で、低品質の石炭は利用しきれない程の埋蔵量があるとされています。火力発電では通常使用出来ないものを使用出来る技術が出来た、朗報とされていました。この、低品質の石炭を使って肥料を作る、しかも今までは天然ガスを使っていた、その分の天然ガスは輸出にまわせる…素晴らしき連鎖です。インドネシアは1万程の島に2億人の人口が居る最貧層の途上国です。ここでの天然資源活用そして生産した肥料の輸出は、自ずから国力を付けるのに役立つことでしょう。また、現地での産業化、雇用にも貢献することでしょう。
IHI、石炭から肥料原料 世界初の設備 インドネシアで1000億円受注へ :日本経済新聞
IHIはインドネシアで、石炭から肥料原料のアンモニアを量産する世界初の設備を建設する。同国肥料大手と共同で実証施設を運営し2016年をメドに1000億円規模の大型設備を納入する。食料増産に必要な肥料の製造では天然ガスが使われるが、割安な低品位の石炭を使い製造コストを3割下げられる。
石炭は200年分とされる埋蔵量のうち水分が多く燃えにくい「褐炭」など低品位炭が約半分を占める。IHIは高温ガス化炉で褐炭を水素などに改質、アンモニアにする技術にメドをつけた。
インドネシア政府が設備の建設を後押しする。豊富な石炭資源の多くが低品位炭。IHIの技術を肥料向けに使えば、日本などへの天然ガスの輸出も増やしやすくなる。
IHIは14年度、ジャカルタ市近郊で国営肥料大手クジャンと褐炭処理量が1日50トン程度の実証設備を造り運営する。初期投資は約50億円。16年度に処理量が1日500〜1000トンの大型設備を建設する。1000億円規模の建設費用はインドネシア側が支払う。
IHIは豪州やインドなど各地に設備を売り込む。世界では新興国を中心に食料需要が拡大する。今後10年程度でも小麦など主要穀物の消費量は2〜3割増える見通し。食料不足を避けるためには低コストで肥料を増産することが必要になる。
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使いにくい燃料を 価値ある燃料に/
褐炭,バイオマスをさまざまな用途に使える ようにできる「 二塔式ガス化炉 TIGAR® 」
二塔式ガス化炉 TIGAR® は,他のガス化炉と比較してマイルドな条件で運転できる循環流動層 方式のガス化炉.蓄積のある流動層・プラント技術により経済的にも魅力あるプロセスを実現.
世界で使用されるエネルギー源には,石油,天然ガ ス,石炭といった化石燃料や,原子力,水力,風力, 太陽光,バイオマスなど複数あるが,エネルギー密度 が高く,容易に移動でき,使い勝手に優れる化石燃料 がその多くを担っている.
このうち,石油は輸送用燃 料,化学原料として幅広く使用されているが,中東地 域に偏在し,価格も不安定である.
天然ガスは,硫黄 分が少なく,また他の化石燃料と比較して CO2 の発 生量も少ないため,環境に比較的優しいとして,消費 が伸びている.そしてこれらの価格は今後上昇していくと予想されている.
一方,化石燃料のなかでは石炭 が最も可採埋蔵量が多く,比較的多くの国,それも政 治的に安定した国々に存在する.また,石油や天然ガ スと比較して発熱量当たりの価格が安くかつ価格も安 定しているため,多くの国で重要なエネルギー源と なっている.しかし,石炭埋蔵量の半分は,水分や酸 素分が多いため発熱量が低い褐炭や亜瀝青炭といった石炭であり,これらは低品位炭と呼ばれている( ミ ニ解説で石炭の種類解説 ).また,褐炭は自然発火し やすいためハンドリングに注意を要する.これらの理由によって低品位炭は,価格は安いが十分に利用され ていない.長距離輸送や貯蔵に向かないため,炭鉱近 くの発電所燃料など限定的な利用にとどまっているの が現状である.
一方,石炭をガス化して得られたガスは,主に H2 や CO で,そのままガスタービンやガスエンジンな どの発電用燃料にしたり,化学反応を経て化学原料や 輸送用燃料にしたりできる.
化学反応を経て得られる代表的な物質は,アンモニ ア,DME( ジメチルエーテル ),メタノール,メタン などである.メタンは代替天然ガス ( SNG ) として, 従来天然ガスが使われている用途の代替ができる.ま た CTL( Coal to Liquid:石炭液化燃料 )と呼ばれる液 体燃料を得ることができ,石油同様に燃料としてのみ ならず,化学原料に利用することができる.
したがっ て利用しにくかった低品位炭を安く効率的にガス化で きれば,発熱量の高い燃料や付加価値の高い化学原料 として利用でき,経済的にも,また資源の有効活用にもおおいに貢献できることになる.
IHI の二塔式ガス化プロセスは,まさしくこれを実現する技術であり,褐炭などの低品位炭だけでなく, 木質片などのバイオマスを含んだこれまで利用しにく かった燃料を付加価値の高い燃料・化学原料に変換す る技術である.
二塔式ガス化炉は,高温の砂のなかで燃料の燃焼 や,ガス化反応を行う流動層技術をベースとしてい る.ガス化反応を行うガス化炉と,燃焼反応を行う燃 焼炉の二つの炉からなるため,二塔式と呼んでおり, ガス化炉と燃焼炉を高温の砂が循環する循環流動層方 式である.
まず,褐炭やバイオマスなどの原料をガス化炉に投 入すると,熱による分解とそこに吹き込まれた水蒸気 との反応によってガス化する.ガス化しなかった残り の燃料は循環する砂とともに燃焼炉に運ばれ,そこに 吹き込まれた空気によって燃焼する.高温になった砂 は吹き上げられ,サイクロンによって燃焼排ガスと分 離されてガス化炉に戻り,ガス化に 必要な熱源とな る.
この二塔式ガス化炉は次のような特徴をもつ.
(1) 低温・常圧でのガス化
石炭ガス化複合発電 ( IGCC ) 向けなどで先行する 噴流床ガス化炉は,石炭中に含まれる灰分( 融点 は 1 200 ~ 1 500°C)を溶かして回収する必要があ ることから,およそ 1 500°C,かつ 3 MPa 程度の高 温・高圧で運転する.しかし揮発分が多くガス化し やすい褐炭は,1 000°C以下の温度でもガス化でき るため,このような高温でガス化することは効率的ではないと考えられる.
二塔式ガス化炉は褐炭をターゲットとし,灰分を溶かさないため,800 ~ 900°Cといった比較的低温, かつほぼ大気圧で運転する.したがって二塔式ガス 化炉は,高温・高圧ガス化炉と比較すると,褐炭を 効率的にガス化するだけでなく,高価な耐熱/耐圧 機構・機器が必要なくなり,入手性に優れた汎用品 を使用することができるため,コスト低減が可能と なる.またプラントとしても運転,保守メンテナン スが容易になる.
これらには,IHI が実績をもつ循環流動層ボイラ での知見が活かされている.
(2) 発熱量の高いガス化ガス
多くのガス化炉は,ガス化炉内 でガス化原料の一部を燃焼させてガス化に必要な熱源としている. このため,高価な酸素製造装置で 発生させた酸素をガス化炉に吹き 込みガス化剤とする.
しかし,二 塔式ガス化炉は,ガス化に必要な 熱源は燃焼炉から循環してきた高 温の砂によって賄い,ガス化炉で は水蒸気をガス化剤として使用す る.そのため,ガス化反応には酸 素の必要がない.また燃焼熱を発生させる燃焼炉では,空気を投入するが,燃焼炉と ガス化炉が分かれており,高温の砂だけがガス化炉 に回ることから,燃焼排ガスがガス化ガスに混ざら ず,化学原料用にも適した,発熱量の高いガス化ガ スを得ることができる.
(3) 多種燃料に対応
流動層であるため,石炭はもちろんバイオマスもそれほど形状にこだわらず粗粉砕のみでガス化原料と して使用することができる.石炭と同時に使用するこ とも可能である.再生可能エネルギーであるバイオマ スを使用すれば,CO2 排出量の増加は抑えられる.
このようなメリットをもつ二塔式ガス化炉を TIGAR® ( Twin IHI Gasifier ) と名付け,2004 年から開発をはじ め,2010 年より経済産業省の支援も受けて,現在は 給炭量が日量 6 t 規模のパイロット炉から,10 倍程度 の日量 50 t 規模にスケールアップした実証機に進む段 階である.
実証運転は,低品位炭が豊富に存在し,低 品位炭利用技術の開発を積極的に後押しするインドネ シアで行うことを計画している.そこでは,スケール アップ設計の確認,数千時間の長時間運転による保守 耐久性の確認などを行う予定である.
実証確認後の商用化段階では,まずは天然ガスを原 料としているインドネシア肥料工場の原料ガス代替を 目指している.インドネシアに豊富にある安価な褐炭 をガス化し,高価な天然ガスを代替できれば,肥料会 社にとっては運転コストの減少につなげることができ る.
なおインドネシアとしては余った天然ガスは重要な 外貨獲得源である LNG 輸出に回すことができる.そして,
インドネシアから LNG を大量に輸入している日 本にとってもインドネシアの LNG 輸出余力が増すこと はエネルギーセキュリティ上,望ましいことである.
商用段階での展開先としては,肥料会社だけでなく 他産業へもアプローチするとともに,インドや,オー ストラリアなどの褐炭が豊富に存在する国々へ参入を図る計画である.
IHI では循環流動層ボイラで培った技術に加え,石炭などのマテリアルハンドリング,液化天然ガスなど のプラントの経験がある.これらの知見を活かして資 源の有効活用につながる二塔式ガス化炉 TIGAR® プ ラントの早期実現を目指す.
ミニ解説 *******************************************
いろいろな石炭
(%)
:炭 素:水 素:酸 素
約 3 億 5 千万年前の石炭紀から数百年前の新第三紀にかけ地中に堆積した植物が菌類によって分解され,地殻変動の圧力や地熱などによって炭素分を中 心に固まった( 炭化 ).ほかに水素や酸素や微量の硫黄,窒素,ケイ素,アルミニウム,カルシウムなども含んでいる.一般に,年代を経たものほど炭素の比 率が高くなり( 炭化度が進み ),発熱量が大きくなる.
項 目
特 徴
植 物
泥 炭
たい 主に沼地などで植物が分解されずに堆積していき炭化することでできる.
褐 炭
炭素含有量が 70 ~ 78%の石炭で炭化度は低く,水分や酸素を多く含 んでいる.
亜瀝青炭
炭素含有量が 78 ~ 83%の石炭で,水分を含んでいる.着火性能がよく熱 量もあるため,電力用や産業用の微粉炭ボイラの燃料に利用されている.
瀝青炭
炭素含有量が 83 ~ 90%の石炭で,瀝青を含む比較的やわらかい特徴 をもっている. 一般的に石炭というと瀝青炭を指す.
無煙炭
最も炭化度が進んだ石炭で,炭素含有量が 90%以上となっている. そのため燃焼時の煙や臭いが非常に少ない特徴がある.
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問い合わせ先
株式会社 IHI エネルギーシステムセクター
電話( 03 )6204 - 7800 URL:www.ihi.co.jp/