天然ガス供給、日本を最優先 米アラスカ州知事 輸出、19年にも軌道 :日本経済新聞
【ワシントン=矢沢俊樹】米アラスカ州のパーネル知事は日本経済新聞記者と会い、同州の北極海沿岸部での大規模天然ガス輸出計画が早ければ2019年にも軌道に乗るとの見通しを示した。「日本に長期、安定的にエネルギーを供給できる」として日本向けを最優先する考えを明言。レアアース(希土類)の供給拡大にも意欲を示した。
同州北部「ノーススロープ」は日本の消費量のおよそ9年分、35兆立方フィートともされる天然ガスを埋蔵する。同州政府と米エクソンモービルなど石油大手3社はこの地域で中長期開発を進めることで合意。パーネル知事は輸出開始時期について「現時点では19年から21年に市場への大量供給が可能になるとみられる」との見方を示した。
供給の実現まで時間がかかるのは北部から太平洋側までの約1300キロに及ぶパイプラインを敷設する必要があるため。環境問題などから計画実現を危ぶむ声もあるが、同知事は「40年以上前にアラスカ縦断パイプラインを引いた能力と北極海開発の豊富な経験がある」と強い自信を示した。
頁岩(けつがん)から採掘する「シェールガス」など非在来型天然ガスの開発により米全体でみた天然ガス埋蔵量は消費量の100年分に膨らんだとの試算もある。
アラスカ州のガスは技術革新で供給費用が大幅に下がるシェールガスではなく、従来型が占めている。日本の代替調達源に育つとの期待が強い半面、価格面では割高感は否めない。「アラスカ側がどこまで価格を引き下げられるかがカギを握る」(日本政府関係者)との声がある。
米では天然ガスの国内安定供給を優先するため天然ガス法で対外輸出に厳しい制限が課されている。同知事は「連邦の輸出許可の下で40年以上も日本に天然ガスを供給してきた」と日本への柔軟な供給が可能だとの見方を示した。
レアアースについては「南東部のボカン山地域などで極めて豊富な鉱脈が発見されている」として、州政府として開発に全力を挙げていると発言した。