炭素繊維が安くなり普及して行くと日本にとっての国力回復の切り札の一つとなることでしょう。2020年に2011年比4倍とのことですが、自動車も新たな局面に入って来ており、強度と性能を追究する高級車には不可欠のものとなりそうですね。液化ガスの容器になる等は、こんごの多用途化を示唆するものでしょう。生産方法も精度の必要なものも含めて、革命的な合理化が出来るかもしれません。職人技がどんどんPC化して行くと思います。
帝人は鉄より軽くて強度の高い炭素繊維を世界で初めて自動車向けに量産する。米国に約300億円を投資し、2015年までに生産能力を4割拡大する。米ゼネラル・モーターズ(GM)が量販車種に採用する計画で、帝人はGMへの主力取引企業として契約を結ぶ。車体を軽くできる炭素繊維の採用は日欧勢も検討中だが、本格的に導入するのはGMが初めて。車の主要素材の座を巡り、鉄鋼、化学大手の競争に拍車をかけそうだ。
炭素繊維は鉄と比べて強度が10倍、重さも大幅に軽い。米ボーイングの新型旅客機「787」の機体に東レ製の炭素繊維が採用され注目されたが、中長期的には自動車産業が最大の需要家になると予測されていた。
GMと帝人は昨年提携し、量産技術の確立を目指していた。今回、GMが炭素繊維を使用するのは15年以降に発売する一般向けの主力車種。強度が必要な骨組みの「構造材」といわれる部分の一部を鉄と置き換える。車の見栄えに影響する車の外側部分についても採用を検討していくという。
帝人は今月、松山市の工場で炭素繊維と樹脂を組み合わせた構造材を量産する試験装置を動かす。GMはこの部品で実車試験を始める。帝人は炭素繊維を自動車部品に1分以内で成形できる技術を確立、従来に比べ生産速度を10分の1程度に短縮したとしている。
生産能力はテネシー州にある工場を増強するか米国内の別の場所に新工場を建設し引き上げる。同社は日独にも炭素繊維工場を持ち、生産能力は現在、年間1万3900トン(世界シェアは2割)。東レ(同1万8千トン)に次ぐ2位だ。
炭素繊維の量販車への搭載はGMが初。日本の自動車大手も研究を進めているが、本格採用はGMより遅れそうだ。GMはハイブリッド車技術などで日本に先行されてきた歴史があり、炭素繊維導入では先を行き、軽量化による燃費向上を進める戦略とみられる。
炭素繊維は帝人が新しい生産技術を確立したため、鉄の数十倍だったコストが2倍弱まで縮まるもよう。今後、生産量や搭載車種が増えていけば車両価格を大幅に引き上げずに搭載できる可能性がありそうだ。
自動車向けでは東レが独ダイムラーとの取引を狙って欧州での生産体制を強化している。三菱レイヨンを含め日本の3社は合計で6割の世界シェアを握るが、各社の積極的な増産や技術力の高さで今後シェアが一段と高まる可能性がある。
炭素繊維の世界需要は20年までに年14万トンと11年実績と比べて4倍近くに拡大する見通し。自動車部品のほか、米国で生産が拡大する新型ガス「シェールガス」を輸送する容器の材料など新たな用途も広がっている。