マンション電力購入、最大9割減 JXエネが一括請負 「割安」 商機広がる :日本経済新聞
石油元売り最大手のJX日鉱日石エネルギーは2014年度にも集合住宅向けに電力自給率を大幅に高める電力システムの請負事業を始める。ガスで発電する燃料電池と太陽光発電装置を提供。マンション1棟が外部から購入する電力量を最大9割減らす。残る電力も東京電力など大手より安く提供して各戸のエネルギーコストを減らす。新たな電力サービスとして注目を集めそうだ。
原子力発電所の再稼働が不透明ななか、電力大手が家庭用電力料金の引き上げに動いている。NTTグループや大京などは集合住宅向けに割安な電力供給を打ち出しており、商機が広がってきた。JXエネはできるだけ電力を自給する事業モデルで特色を出す。
JXエネは電力の自給システムと、割安な大口向け電力供給を組み合わせて提供する。電力の自給システムは燃料電池、太陽光発電装置、蓄電池で構成。保守なども一括して請け負う見通し。
マンション側は足りない電力を外部から購入する必要があるが、JXエネが高圧契約の電力を販売する新電力(特定規模電気事業者)として供給。大手電力会社より5〜10%安い料金帯で各戸に割り振る。発電所は子会社の川崎天然ガス発電(川崎市、出力84.7万キロワット)を使う。
JXエネは横浜市と川崎市の社宅で実証実験を開始。太陽光発電装置、燃料電池、蓄電池を併用する横浜の社宅では必要な電力の8〜9割を賄えることが分かった。
燃料電池に使う都市ガスなどの料金も含め、電力をすべて外部購入するより、全体のエネルギーコストは下がる見通し。
また、JXエネは発電効率を大幅に高めた家庭用燃料電池を開発済み。価格は200万円以上するが、15年までに50万円程度に減らす技術開発も進めている。補助金なども活用して自給システムの初期費用を軽減、投資コストの回収期間を短くする。
分譲マンションの新規供給戸数は年間8万戸にのぼる。付加価値を高めたい不動産会社などの需要を開拓、燃料電池の販売拡大にもつなげる。
契約電力が50キロワットを超える大口向けの割安な高圧電力を集合住宅向けに一括供給し、各戸に小分けして柔軟な料金設定をするサービスが増加。最近ではケーブルテレビ最大手のジュピターテレコムも参入を決めた。政府が電力小売りの全面自由化方針を掲げるなか、JXエネは将来の電力事業拡大に向けサービスモデルを確立する。
原発事故後、火力燃料費の負担が増えた電力大手は料金を引き上げている。家庭向けでは東電が9月に平均8.46%値上げしたのに続き、関西電力と九州電力が来年4月の実施に向け政府に値上げを申請した。四国電力や東北電力も来年度早期に値上げする方針だ。