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memo ∞ 「ITの先端走る「ほぼ日」/糸井重里」 

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ITの先端走る「ほぼ日」 「あったらいいな」で高収益 :日本経済新聞

 競争戦略論で知られるマイケル・ポーター米ハーバード大教授の名を冠し、事業モデルが独特で稼ぐ力も備えた日本企業を表彰する「ポーター賞」。クレディセゾンなど大企業に交じって今年、社員約50人の東京糸井重里事務所が受賞した。コピーライターの糸井氏を社長に、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」を運営する。

 「ネットに自分のメディアを」と糸井氏が1998年に始めたほぼ日はコラムやインタビュー記事などを無料で流す。サイト訪問者は月111万人。広告は載せず、オリジナル商品のネット通販が主な収入源だ。

 業績は右肩上がり。2012年3月期の売上高は28億円と5年で6割増えた。この間、営業利益率は10〜16%。規模の差は大きいが、単純比較すれば、ネット通販の巨人、米アマゾン・ドット・コムの利益率(2〜5%)をしのぐ。

 高収益はデフレと一線を画す商品群が支える。例えば手帳。手で押さえなくてもページが開いたままになり書きやすい。そんな機能と品質にこだわり、1000円前後が相場の市場で主力品は3500円する。だがニッチではなく販売部数は日本一。ステーキも焼ける土鍋、デザイン重視の腹巻き――。類似品より数割から2倍以上高額なものがそろう。

 糸井氏が言う。「自分が本当に満足できるものなら欲しいと思う人が絶対いる」。サイトのコンテンツも商品も原則、社員のアイデアが出発点。面白いと社内も認めれば企画にゴーサインが出る。堅苦しい売り上げ目標や予算枠はない。

 もちろん勝手気ままに働いてもうかるほど甘くはない。会社の方向性や考え方の統一には神経を使う。毎週水曜には糸井氏が1時間、社員にビジョンを語る。サイトへのアクセス数や売上高、読者の声だけでなく、議事録や予定など社員の言動も共有する。

 篠田真貴子最高財務責任者は「他の社員から『見られている』ことが仕事への規律になる」と話す。年3回くじ引きでの席替えは、担当分野を越えて刺激し合い、新たな発想を生み出そうとの試みだ。

 小さな会社の変わり種経営とは片付けられない。

 この1年、世界が注目したIT(情報技術)ベンチャーはどこか。▽個人事業に必要な資金をネットで集めるクラウドファンディングのキックスターター▽手づくり品をネット売買するエッツィー▽好きな立体物がつくれる3Dプリンターのメイカーボット・インダストリーズ――。

 米国勢3社が示すキーワードは「ポスト大量生産・規格品」と「ネットとリアルの融合」。既製品ではなく、自分があったらいいなと思うものを時にコンテンツ、時に商品として提供する。ほぼ日の経営はビジネスの世界的潮流とぴたり重なる。

 「吹けば飛ぶような存在。まだまだ準備段階」と糸井氏。宮城県気仙沼市に支社を設け、ネットで情報発信しつつセーター生産に乗り出すなど成長への材料を探す。いずれ個性派創業者が退いても失速しない体制をどう具体化するか。重い課題はあるが、ネット時代の需要創出や組織運営のヒントが多い会社だ。

(編集委員 村山恵一)

ほぼ日刊イトイ新聞 - 目次

2012-12-24

ほぼ日刊イトイ新聞

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