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真珠の小箱(213)「与謝野晶子/直筆の短歌103首 岡山で発見、未発表も」 

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与謝野晶子直筆の短歌103首 岡山で発見、未発表も - NetNihonkai-日本海新聞

 街行けば涙ぐまるるおもひでの必ずわきぬまづしきがため―。歌人与謝野晶子直筆の短歌103首が収められた原稿用紙が岡山県倉敷市内で9日までに見つかった。親交が深かった同市出身の詩人薄田泣菫に新聞掲載用に送った作品で、うち16首は未発表とみられる。

 与謝野晶子が詩人薄田泣菫に送った、未発表とみられる短歌が収められた直筆の原稿用紙

 就実短大(岡山市)の加藤美奈子准教授(日本近現代文学)らが、倉敷市に寄贈された泣菫の書簡類「薄田泣菫文庫」を調査し、発見した。加藤准教授は「晶子の考えがうかがえる生原稿で、近代文学の大変貴重な資料」としている。

 短歌はB4サイズの原稿用紙12枚に黒インクのペンで記されていた。「与謝野晶子」と署名が付されたものもあった。

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与謝野晶子:未発表?16首発見 薄田泣菫に送った直筆原稿から−−岡山− 毎日jp(毎日新聞)

 ◇未発表とみられる与謝野晶子の短歌の一部

生れたる日をば悲しと何の云ふ一萬日(いちまんじつ)の時の語れる

砂踏むを燒(や)けむとそしり網小屋の蔭(かげ)をあゆめり物思ふ人

わが世をばうちまどふことしきりにも續(つづ)きし頃のおぞましき日記(にき)

髪よりも静かなるなし夕ぐれの山の色よりみづうみよりも

街行けば涙ぐまるるおもひでの必ずわきぬまづしきがため

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 近代日本文学を代表する女性歌人、与謝野晶子(よさのあきこ)(1878〜1942)が、岡山県倉敷市出身の随筆家、薄田泣菫(すすきだきゅうきん)(1877〜1945)に送った短歌103首の直筆の原稿用紙12枚が見つかった。このうち16首は未発表とみられる。市の依頼を受けて泣菫の遺族が寄贈した資料を調査していた加藤美奈子・就実短大准教授(日本文学)が確認した。

 泣菫は1912年に大阪毎日新聞(現毎日新聞)に入り、随筆などを連載、学芸部長も務めた。遺族が04〜07年に書簡や作家たちの直筆原稿など約1700点を市に寄贈し、市は「薄田泣菫文庫」を設立して調査している。

 見つかった与謝野晶子の原稿用紙には、黒ペンで1枚に数首〜10首書かれていた。「紫影抄(しえいしょう)」「萱(かや)の葉」「秋の薔薇(ばら)」などのタイトルが記されたものや、晶子の署名が入ったものがあった。紫影抄のタイトルの下には朱書きで「一度にお載せ下さい」と書かれていた。

 103首のうち、87首は大阪毎日新聞紙上に掲載されたり、全集に収録されたりしているが、16首は初出が確認できなかった。泣菫が大阪毎日新聞社に勤めていた時期(1912〜23)や全集収録作品から、大正期の作品とみられるという。

 加藤准教授は「歌稿はルビがふられており、新聞掲載用に書かれた可能性が強い。そのまま泣菫の元に残されたかどうか不明だが、未発表の可能性が高い」と話している。倉敷市文化振興課は「日本の近代文学史上、大変貴重な資料だ。大事に保管して研究を進めると同時に、公開を考えたい」としている。【小林一彦、石井尚】

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◇与謝野晶子       

 1878(明治11)年、堺市生まれ。近代短歌の浪漫主義を代表する歌人で、詩歌雑誌「明星」などで活躍した。1901年、初の歌集「みだれ髪」を発表し、話題を呼んだ。1904年には、日露戦争に従軍した弟を思った詩「君死にたまふこと勿(なか)れ」を明星に発表。代表作は他に「源氏物語」の現代語訳「新新訳源氏物語」など。夫は歌人の与謝野鉄幹。

 『懐かしの一編』

  君死にたまふことなかれ   
            旅順口包圍軍の中に在る弟を歎きて
            
                               與 謝 野 晶 子

 

あゝをとうとよ、君を泣く、
君死にたまふことなかれ、
末に生れし君なれば
親のなさけはまさりしも、
親は刃(やいば)をにぎらせて
人を殺せとをしへしや、
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや。

堺(さかひ)の街のあきびとの
舊家(きうか)をほこるあるじにて
親の名を繼ぐ君なれば、
君死にたまふことなかれ、
旅順の城はほろぶとも、
ほろびずとても、何事ぞ、
君は知らじな、あきびとの
家のおきてに無かりけり。

君死にたまふことなかれ、
すめらみことは、戰ひに
おほみづからは出でまさね、
かたみに人の血を流し、
獸(けもの)の道に死ねよとは、
死ぬるを人のほまれとは、
大みこゝろの深ければ
もとよりいかで思(おぼ)されむ。

あゝをとうとよ、戰ひに
君死にたまふことなかれ、
すぎにし秋を父ぎみに
おくれたまへる母ぎみは、
なげきの中に、いたましく
わが子を召され、家を守(も)り、
安(やす)しと聞ける大御代も
母のしら髮はまさりぬる。

暖簾(のれん)のかげに伏して泣く
あえかにわかき新妻(にひづま)を、
君わするるや、思へるや、
十月(とつき)も添はでわかれたる
少女ごころを思ひみよ、
この世ひとりの君ならで
あゝまた誰をたのむべき、
君死にたまふことなかれ。


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