トクヤマと農工大、紫外線LED開発 殺菌に利用 :日本経済新聞
トクヤマと東京農工大学は10日、高効率の紫外線の発光ダイオード(LED)を開発したと発表した。ウイルスや細菌を死滅させる作用があり、殺菌などに利用できる。医療や食品分野の殺菌に使われている水銀ランプに比べ消費電力は10分の1。1年後には消費電力を20分の1以下にし、2015年度までの実用化を目指す。
有害な水銀を使わない上、現在年間約250万個出荷される水銀ランプ全てをLEDに置き換えると、原油換算で年間約3億リットルの節約になるという。水銀ランプの代替のほか、がん治療など幅広く事業展開する。
開発したのは波長260ナノ(ナノは10億分の1)メートル程度の深紫外線を出すLED。従来に比べて欠陥と不純物が少ない基板を作ることで、ほとんど基板を通らなかった深紫外線が約70%通って外に出るようになった。
農工大とトクヤマ、世界トップレベルの出力特性を有する深紫外線LEDを作製。殺菌用途などで事業化めざす (発表資料)bit.ly/Sm21Gd pic.twitter.com/xwQxo7md
東京農工大とトクヤマ、深紫外線LEDで世界最高レベルの出力特性 - 電子部品 - Tech-On!
東京農工大学応用化学部門の纐纈明伯教授、熊谷義直准教授の研究グループは、トクヤマと共同で、世界最高レベルの出力特性を持つ深紫外線LEDの作製に成功した(
)。順電流150mAのとき、出力20mW、外部量子効率は3.0%という。トクヤマは2013年中にユーザー評価を開始し、2015年度までの事業化を目指す。医療、浄水、食品分野での殺菌用水銀ランプの代替を狙う。水銀ランプを深紫外線LEDで置き換えるメリット(図:東京農工大とトクヤマの発表資料より)
AlN結晶を用いた短波長化(図:東京農工大とトクヤマの発表資料より)
AlN単結晶基板の作製(図:東京農工大とトクヤマの発表資料より)
深紫外線LEDの開発には、主要材料である窒化アルミニウム(AlN)の高品質な単結晶基板の開発と深紫外線LED構造の作製という2つの課題があった。これらの課題解決のため、東京農工大学、トクヤマ、米North Carolina State UniversityのSitar教授らの研究グループ、米HexaTech社の4者で日米産学連携開発チームを作って開発に当たった。
東京農工大の研究グループは、独自のハイドライド気相成長(HVPE)法で高純度のAlN結晶を高速成長させる手法を確立し、農工大TLOを通じて日米で基本特許を成立させた。North Carolina State大とHexaTech社は、深紫外光が透過しないものの、低欠陥密度のAlNを成長可能な昇華法で種結晶を作製する技術を確立した。
HVPE法AlN単結晶基板の作製(図:東京農工大とトクヤマの発表資料より)
260nm帯の深紫外線LEDの作製(図:東京農工大とトクヤマの発表資料より)
今回、昇華法で作製したAlN種結晶上にHVPE法で高速成長したAlNから、高い深紫外線透過率と低欠陥密度を両立させたAlN基板を世界で初めて実現した。トクヤマはHVPE法のライセンスを受け、この手法を量産技術として確立するとともに同基板上に殺菌用途に最適な260nm帯(UV-C)の紫外線LEDを作製し、世界最高レベルの出力特性を確認した。
開発した深紫外線LEDは、クリーン、長寿命、小型、低消費エネルギーなどの特長を持つという。東京農工大では今後、生命機能科学部門の田中剛准教授、生物制御科学部門の有江力教授らを加え、深紫外線LEDの新市場の創出を検討していく。なお、この技術の詳細は、「Applied Physics Express Vol.5(2012)055504」「同Vol.5(2012)122101」に掲載されている。
作製した深紫外線LEDの特性(図:東京農工大とトクヤマの発表資料より)
他社開発の深紫外線LEDとの特性比較(図:東京農工大とトクヤマの発表資料より)