有機EL、九大が低コスト発光新材料 オール日本で巻き返し :日本経済新聞 2013.1.14
九州大学の最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA)は2012年12月、低消費電力で超薄型のパネルができる有機EL用の第3世代の発光新材料を開発したと発表した。発光を効率化する分子を独自に設計し、電子を光にほぼ100%変換することに成功した。レアメタルのイリジウムなどを使わないので、材料コストを10分の1にできるとみている。日本は有機ELパネルでかつて世界の先頭集団にいたが、韓国のサムスン電子などに置いていかれた。新材料で日本は巻き返せるか。
OPERAはクリーンルームの設備を持つ
OPERAは京都大、千葉大、北陸先端科学技術大学院大学などのサテライト機関と新日鉄住金化学、パナソニック、東京エレクトロン、ジャパンディスプレイなど14社が参加、メーカーの技術者が九大伊都キャンパス(福岡市)に常駐するオールジャパンの産学連携研究組織だ。
有機ELは電圧をかけると画素自らが発光するため、液晶のように後ろから照らす光源(バックライト)がいらない。このため消費電力が少なくより薄いパネルができる。省エネの優等生であり、動画などの表示に優れているとされる。
「ハイパーフルオレッセンス」と名付けた新材料は蛍光材料を使う第1世代、リン光材料を使う第2世代の両方の長所を併せ持つ。具体的には蛍光とリン光のエネルギーの差をなくす分子を作り、熱活性化遅延蛍光(TADF)と呼ぶ、新しい発光原理を実現した。発光効率は高いが材料価格が高いリン光のエネルギーを、安価だが発光効率の低い蛍光のルートで取り出す。
今回九大は緑色の光で内部の発光効率が100%に当たる外部発光効率20%を達成した。リン光では難しいとされる青色でも内部発光効率が50%程度になったという。数千時間の寿命を持ち、新材料を使った小型の有機ELパネルも試作した。
開発を主導する九大教授の安達千波矢OPERAセンター長は「こんな分子でいいのかというくらいシンプルな構造だが、自由に設計できる有機化合物は無限の可能性を持つ」と指摘する。
安達教授によるとTADFの考え方は「光化学の教科書に載っている」という。ただ、それを実現する分子を設計するのに苦労した。約10年前に着想したが、当初は効率がなかなか上がらず「論文を出しても世界で見向きもされなかった」という。
転機は09年。ある日、学生が「5.3%の外部発光効率が出ました」と駆け込んできた。これは蛍光材料の発光効率の限界である5.0%を超えており、TADFが一部実現したことを示していた。安達教授は「この分子構造の周辺の分子を一斉に当たれ」とメンバーに指示。それまで半信半疑の部分もあったが「5.3%が出たことでみんなを引っ張ることができた」と振り返る。
それまでの蓄積も大きい。10年4月にスタートしたOPERAは、約1400個の材料の候補分子を保有しており、参加企業も情報を提供した。すでに有効な材料について数十件の特許を申請済みだ。
OPERAは各社からの研究者が自由に意見を述べ合う「オープン・イノベーション」の世界。安達教授は自民党の麻生太郎政権時代に日本の若手研究者30人に選ばれ、民主党政権で減額されたものの、30億円強の研究資金が認められた。発光材料のほかデバイスの微細加工、薄膜のプロセス開発、液体の有機ELなど様々なテーマが動いている。今回の新材料はその中の最大の成果だ。
実用化が見えてくるとオープンだけではすまなくなる。そこで九大伊都キャンパスの近くに有機光エレクトロニクス実用化開発センターの施設が年度内にも完成する。ここでは個別に企業と秘密保持契約を結び、試作などを進めていく。
安達教授は新材料の実用化について「3年後では遅い。1年後には使えるメドをつけたい」と語る。実用化開発センターとは別に新材料の実用化に向けた大学発ベンチャーを年度内にも立ち上げるべく準備に入った。
さらに先をにらむ。有機ELなど分子システム科学の国際リーダーを育成するため大学院に新しいリーディングプログラムを来年度開設するのだ。研究者としての能力に加え、企画力やマネジメント・リーダーシップ能力を養成する。現在、インターンシップや国際性、コミュニケーション能力などを養うカリキュラムを練っている。
第3世代の有機EL発光材料はまずはスマートフォン(スマホ)などでの利用を想定、「有機ELは最終的には紙のようなディスプレーになる」と予想している。韓国などすでに海外から多数の問い合わせが来ているが「基本的に日本メーカーを第一に優先したい」という。
有機EL材料の候補分子を手にする安達教授
OPERAにはパナソニックなどのほか東芝、日本化薬、保土谷化学、三菱レイヨン、リコー、富士フイルムなどが入っている。材料メーカーは「サムスンは大事なお客さん」だが、電機メーカーにとっては最大のライバル。
先週、米ラスベガスで開かれた家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」では、各社が発表したフルハイビジョンの約4倍の解像度を持つ「4K」テレビとともに、大型の有機ELパネルが注目された。発光新材料はパナソニックやソニー、東芝などの日本勢がサムスンやLG電子を追撃する武器になりうる。
有機ELでかつて先行していた日本が韓国に抜かれたことについて、OPERAの産学関係者は「必要な時に巨額の投資に踏み切れなかった」。「実際に金をかけて作らないと改善できない問題がある」。「円高で日本でものづくりをできる状況になかった」と要因を挙げる。
九大の新材料は基礎研究の域を超え、試作、初期量産と今後飛躍的に金のかかる時期に入る。リーマン・ショック以降、窮地に陥った日本の電機産業に対し、化学・材料分野の国際競争力は高いとされる。有機EL発光新材料をデバイス、プロセス、パネル開発につなげて、家電産業が引き継ぐことがニッポン復活のカギとなるだろう。
(産業部 三浦義和)
九大の安達千波矢教授らレアメタル無用の有機EL開発 ハイパーフルオレッセンス | JC-NET(ジェイシーネット)
スマートフォンのディスプレーなどに使われている有機ELの新しい発光材料を、九州大などの研究チームが開発した。
従来の発光材料に必要だったレアメタルを使わず、材料コストを10分の1程度に減らせるという。13日発行の英科学誌ネイチャー電子版に発表する。(朗報:レアメタルの中国離れが更に進むことになる)
有機ELの発光材料には蛍光現象やリン光現象で発光する材料が使われてきた。蛍光材料は安価だが電子を光に変換する効率が低く、リン光材料は電子をほぼ100%の効率で光へと変換できるが、イリジウムなどのレアメタルが必要で材料コストが高かった。
九州大学「最先端有機光エレクトロニクス研究センター」の安達千波矢センター長らは、レアメタルを使わずに高効率で発光する有機化合物、ジシアノベンゼン誘導体を開発。蛍光材料と同等の価格で、リン光材料と同様の発光効率を持つ「ハイパーフルオレッセンス」と名付けた素材だという。
有機ELは薄型なうえ、高精細で消費電力も少なく、次世代の薄型テレビや照明などへの利用が期待されている。安達センター長は「国内メーカーと連携し、日本発の技術として早急に実用化を目指す」と話している。
有機ELは過去ソニーが事業化で先行していたが、いつのまにかサムスンが?1企業となっていた。これはソニーが液晶分野でガードもせずサムスンと事業提携したことから、ソニーの事業化レベルの有機EL技術が流出したものと思われる。アホなソニー。
安達教授らの画期的な発明で有機ELが安価になれば、今の液晶は高精細度の有機ELに取って代わることは必然となるが、特許料は別にしても、学会で肝心要な部分まで発表してしまったら技術流出に匹敵する。そのまま日本の大手企業に特許を売却した方が賢明だろう。
韓国・中国は日本の技術をパクリ過ぎて既に肥満体になっている。