TBS「夢の扉+」2月10日 #91「花粉症のない未来をつくりたい」
花粉症を防ぐ切り札に! 花粉を飛散させない『無花粉スギ』開発
〜スギ研究20年!“国民病”の花粉症で苦しむ人々を救いたい!〜
ドリームメーカー/富山県森林研究所 主任研究員/農学博士 斎藤真己 さん
『50年後、花粉症が過去の話になっていればいい。“昔はひどかった”と―』
くしゃみ、目のかゆみ、鼻水・・・重い症状になると、夜も眠れない。
国民の5人に1人が発症していると言われ、誰もが発症する可能性を持つ『花粉症』。
今年もスギ花粉が飛散する季節がやってくるが、地域によっては、今年の飛散量は例年の3〜7倍との予測も・・。
そんな花粉との闘いに終止符を打つ“切り札”として期待される、
花粉が飛ばない『無花粉スギ』を開発したのが、富山県森林研究所の斎藤真己、41歳。
斎藤は、林業にも適した、優良で且つ無花粉のスギを、種子から大量生産する技術を全国で初めて確立。約5,000本の苗木を育て、昨秋、植林にこぎ着けた。
始まりは、20年前。富山市内で偶然発見された、花粉が全く飛ばない1本のスギの木。
その後、斎藤が所属していた大学院の農学研究室に共同研究が持ちかけられた。
斎藤は、直感した。 『花粉症患者の未来を変えるかもしれない』
しかし、学会で発表しても全く相手にされない。「1本だけ見つかってもしょうがない」と・・。
その時、斎藤は決意する―『絶対に世の中に役に立つ。何としても実現してみせる!』
就職後も、スギ研究に没頭した斎藤は、全国各地からスギの優良品種の花粉を330品種も取り寄せ、無花粉スギと1種ずつ交配させていった。
そして、ついに、「無花粉になる遺伝子」を持つ品種を発見!
9年の年月をかけて、運命の1本にたどり着いたのだった。
『やらなければ、何も変わらない』 スギが年輪を重ねるように、一歩ずつ、一歩ずつ、
決して諦めることなく、“花粉症の救世主”を生み出した斎藤。花粉症に苦しむ人々のために、そして林業の未来のために、スギ研究に人生をかけるその生き様を描く。
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「立山 森の輝き」開発! …富山県は今後8万本植林…拡大して行く!
無花粉杉の発見者の平英彰さんにも感謝!
平成4年に自身が見つけた無花粉スギの枝を手にする平さん=富山市内の神社
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日曜ひろば:富山県森林研究所主任研究員・斎藤真己さん /富山− 毎日jp(毎日新聞)
◇花粉症の悩み、一助に “無花粉杉”にやりがい−−斎藤真己さん(41)約2000万人が悩んでいるとも言われる花粉症。その原因の代表格とも言えるスギの花粉を全く作らない新種のスギの開発が富山県で進んでいる。日本で初めて花粉を作らない無花粉スギが富山で発見されて約20年。樹形が良いだけでなく、環境にも強い優良無花粉スギ「立山 森の輝き」を生み出した同県森林研究所の
主任研究員(41)に話を聞いた。【衛藤達生】◆無花粉スギとの出会い
大学院に入ったばかりで、まだ研究テーマが固まっていなかった頃、指導教官に渡されたのが、富山で発見された無花粉スギでした。北海道にはスギはなく、スギをまともに見たのは、それが最初。戸惑いもありましたが、教官の「片手間でもいいから」との言葉に後押しされて、やってみることに。でも研究を開始すると、すぐにスギなどの針葉樹で無花粉の文献は一つもありませんでした。やりがいを感じました。
◆偶然の連鎖
富山で無花粉スギが発見されたのは92年。県が花粉の飛散状況の調査をしていた時に偶然、調査ポイントの一つだった富山市内の神社に無花粉スギはありました。私の指導教官は遺伝の専門家ですが、スギの研究はしていなかったんです。でも、当時の富山県林業試験場造林課長と偶然、登山仲間だったという縁で研究が委託されました。そのときに研究室に配属されたのが偶然、私だったんです。
◆無花粉のメカニズムを解明
通常、花粉は硬い細胞壁で覆われて、球形を維持しています。なかにある遺伝子を守るため、かなり頑丈なはずなんですが、無花粉スギの場合、その硬い細胞壁が形成されないのです。硬い細胞壁がないから、無花粉スギの花粉は成長する過程で、少しの圧力でつぶれ、最終的には形成されないのです。
これが遺伝によるものなのかどうなのか、そこから研究が始まりました。遺伝が原因と分かれば、次にこの遺伝の仕組みの解明に取り組みました。まず、1対の遺伝子が細胞壁の形成に関わると仮定しました。当然、通常のスギは花粉を作るので、細胞壁を作る遺伝情報を持つ遺伝子が優性で、作らないものが劣性。無花粉スギは劣性遺伝子を対に持っていると考えられ、それを交配実験を繰り返して立証しました。その後、成長の良い個体を選抜して、「はるよこい」として品種登録できたのは、無花粉スギ発見から15年たった07年のことでした。