中国実験炉で事故 昨秋、タービン建物内 政府は公表せず+(1/2ページ) - MSN産経ニュース 2012.1.25
中国・北京郊外にある高速増殖炉開発の実験炉(CEFR、出力2万キロワット)が昨年10月、発電機があるタービン建物内で事故を起こし、停止していることが24日、日本原子力研究開発機構の調べで分かった。中国政府が公表していないため、事故の内容などは不明。実験炉は同7月に発電を開始したばかりだった。
原子力機構などによると、韓国の原子力関係者から「中国の実験炉が止まったようだ」との情報提供があった。その後の調査で、タービン建物内で事故があり、点検作業で停止したままになっていることが判明したという。
中国の実験炉は、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)と同様、熱を取り出す冷却材に液体ナトリウムを使用している。燃料は濃縮ウランだが、2015年にはウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使い、増殖実験を始める予定だった。
停止中の実験炉は、ロシア製で北京の西約60キロの軍事施設内に立地。原子炉を覆う格納容器がなく、中央制御室に運転員の休息用ベッドがあるなど、安全管理レベルが低いという。
実験炉は高速増殖炉開発の5ステップの2段階に当たる。中国は、原型炉(3段階)の研究開発を省略するため、ロシアと実証炉(4段階)建設の事前協定を結び、28年に実証炉、30年には最終段階の実用(商業)炉を運転。その後、沿岸部を中心に多数の実用炉を建設する計画があるという。
【用語解説】中国の原発事情
中国は東京電力福島第1原発事故を受けて、国内の原発施設の検査に着手し、昨年5月に稼働中の13基の検査が完了、同8月には建設中28基の安全が確認されたとして広東省深セン市で1基を新規稼働させた。
当局は安全性や透明性を強調するが、2010年に同市の大亜湾原発で起きた放射能漏れ事故を隠蔽(いんぺい)。昨年8月に四川省成都市の原子力研究施設で起きた火災もうやむやにされた。
しかし、原発関係者は「中国の原発技術は世界をリードする地位にある」と主張。20年までに原発による発電量を現在の約6・5倍の7千万キロワットとする計画だ。(北京 川越一)