LNG価格、欧米の3倍 原油連動、年2〜3兆円割高 シェールガスで削減も :日本経済新聞
日本の天然ガス輸入価格は、最大で欧米の3倍に上るという経済産業省の試算が明らかになった。日本は中東などの産ガス国との間で、原油に連動して価格を決めており、割高になる傾向がある。年間2兆〜3兆円を余計に支払っている計算だ。新型ガス「シェールガス」の生産で価格の下がった米国産などに調達先を広げ、交渉力をつければ、コスト削減の余地も大きい。
日本の液化天然ガス(LNG)輸入価格は100万BTU(英国熱量単位)あたり16〜18ドルが相場。米国は南米や西アフリカ諸国から約3ドルで輸入しており、この契約条件なら日本への輸送料を加味しても6〜8ドルですむという。欧州は中東や北アフリカから9〜13ドルで購入している。
日本の分が割高な原因は、価格を従来通り原油に連動して決めていることだ。シェールガスの登場で産出量が増え、世界的にガス価格が低下した恩恵を受けづらい。「世界中からかき集めている日本は他の調達先がないと見られて売り手有利になりがち」(日本エネルギー経済研究所の柳沢明研究主幹)で、契約方式の見直しが遅れた。
日本の輸入価格は原子力発電所事故の前の2010年に比べて12年に一時約1.5倍に上昇。年間の輸入額も3.5兆円から6兆円まで拡大して過去最大の貿易赤字の主因になっている。すでに電力5社が燃料費の上昇を理由に電気値上げを申請した。経産省は契約方式の見直しなどで電力会社のLNG調達費を抑えられるとして厳しく査定する方針で、今回の試算はその根拠とする。
産ガス国に対して価格交渉力を高める策の一つが米国からの輸入だ。日米首脳会談ではシェールガスの日本向け輸出を要請した安倍晋三首相に対して、オバマ米大統領が前向きな姿勢を示した。早ければ今春にも輸出許可が下りる見込みで、同試算では米国からは10〜13ドルで輸入できる。日本企業が手がける米国でのシェールガス開発は3カ所あり、合計の産出量は年1500万トンで、日本の輸入量の約2割ほどに達すると見込んでいる。
関西電力は英BP子会社からの調達で、米のガス価格に連動する方式を採用することで将来の調達費を3割ほど抑える。日本政策投資銀行は米産ガスと同じ値段で世界中から調達できれば、20年に最大15%調達費を削減できると見積もる。
第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは、日本のLNG輸入額を15%安くできれば実質国内総生産(GDP)は3年で1.7兆円拡大すると指摘する。「電力のコストをおさえることで、企業の立地選択にも影響し、国内で5万人の雇用増につながる可能性もある」という。