【ビジネスの裏側】教育ビズの成功モデル 甲子園Vに京大50人進学…大阪桐蔭(1/3ページ) - MSN産経west
春の選抜高校野球大会で大阪勢として19年ぶりに優勝し、関西をわかせた「大阪桐蔭」。スポーツ強豪校の実力を全国に見せつける一方、今春は京大合格者が50人の大台を達成。全国区の有名校となった「文武両道」の進学校は、早くも来年の春に向かって動き始めている。
大阪府大東市にある大阪桐蔭の校舎本館。ロビーには選抜優勝を祝福する花が飾られているが、校内に浮かれたムードはない。
それもそのはず。中学1年〜高校3年の全学年を対象とした恒例の「春季学習合宿」が4月17日から21日まで、4泊5日で行われるからだ。
大阪桐蔭の特徴は、塾に通わず、学校のカリキュラムだけで受験勉強ができることだ。土曜の授業は、中1〜高2が5時限、高3は6時限まであり、年間の授業日数は特別授業を合わせると約270日に上る。
この「春季学習合宿」で生徒たちは滋賀と福井のホテルに分かれて宿泊し、朝から晩まで勉強する。1時限目は午前8時15分スタートで、最終の9時限目は午後10時半まで及ぶ。「年度始めで気持ちを切り替えるのが目的です」と寺川国仁教頭は説明する。
学習合宿は春季だけにとどまらない。夏休みには東大や京大といった最難関校を目指す高3生を奈良・吉野の旅館に集めて特訓する9泊10日の「吉野合宿」もある。
「勉強する習慣が身につき、毎日5時間の自習を続けられました」。高校の受験案内パンフレットの「卒業生メッセージ」で、学習合宿について、こうコメントした卒業生のM君は京大医学部人間健康科学科に合格した。
今年の京大合格者は昨年の46人から50人(現役38人)に増え、全国10位にランクイン。学部・学科別では、医学部人間健康科学科の合格者が22人と、全体の半数近くを占める。京大の医療技術短期大学部が4年制となり、平成15年に新設された学科で、難易度は京大の中で相対的に低いといわれるが、大阪桐蔭では女子生徒を中心に志望者が多いという。
平成13年の京大合格者はたったの1人で、合格実績は飛躍的に伸びており、関西の進学塾幹部は「進学実績をアピールする上で、50人の大台に乗った意義は大きい」と話す。
大阪桐蔭は、大阪産業大付高の分校として昭和58年に誕生。「高校生の数が急増した時期で、公立高校では収容しきれない生徒の受け入れ先として、大阪府の要請で生まれた」と寺川教頭。その上で「使命を終えたら廃校予定だった」と明かす。
だが、卒業生や保護者から存続を望む声が多く寄せられ、63年に分離独立。平成7年から中高一貫教育をスタートし、10年からは東大や京大、国公立大医学部など最難関を目指す「I類」、難関国公立大が第1目標の「II類」、体育・芸術コースの「III類」を高校に設け、進学校として実力をつけていった。
約10年前からは、大手予備校で教える人気実力講師を招いた授業も開始。寺川教頭は「少子化や大学全入時代の影響で、浪人生が減少。予備校が減少しているため、実力講師も高校へ指導にやってきてくれる余地が出ている」と話す。
ただ、強力なライバル校の存在も無視できない。今年の京大受験では、昨年より22人増の62人が合格した堀川をはじめ、西京や洛北といった地元公立校や、首都圏の海城、西、国立といった名門校も合格者数を増やしている。
「真のエリート校へ!」。このキャッチフレーズの通り、発展途上を自認する大阪桐蔭。来年の春、受験界で新たな旋風を巻き起こせるか。(宇野貴文)