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必見!智慧得(500)「金子勝/原発の動向解説」

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先日、TV朝日で今夏の不足電力について、関電の発表数字を元に説明していた…結果としては、8月9日が4時間、8月10日が3時間の電力不足が報告されていた。電力が不足するから原発再稼働は不可欠、としているが、裏返せば、7時間をどう過ごすかの問題である。供給先の限定、電車や工場稼働時間のピーク時使用削減、揚水発電の集中稼働、蓄電の工夫、等、これらで不十分ならば、供給先の限定した計画停電も検討となるのか…東京都でもいろいろ工夫しているが、大阪でも英知を結集して行く予定であり、関電が”知らしむべからず”政策を進めようとすること事態が”時代錯誤”と云わざるを得ません。

 金子勝先生が、日頃の解説を上手くまとめてブログにされていますので、コピペさせてもらいます。

ありえない選択肢――私の原子力日記その7 - 金子勝ブログ

この一覧表は、A案からF案までの「選択肢」において、2030年時点でそれぞれのエネルギーがどのくらいの比率を占めることになるかを示したものです。これが、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会を中心にして議論されているエネルギー・ミックスの「選択肢」です。

そもそもエネルギー・ミックスの選択については、どのようなエネルギーを基盤とした社会や経済のシステムを選択すべきなのか、それをどのようなアプローチで達成するかを議論すべきです。しかし、現実はこうした数字だけが一人歩きを始めています。

第16回の原子力委員会新大綱策定会議において事務局(原子力政策担当室)が作成した「第3ステップ 評価の条件について」と題する文書でも、この「選択肢」をベースにして、原子力依存度を0%、20%、30%という3つのシナリオに基づいてシミュレーションを行うことが前提とされています(以下のURLを参照)

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sakutei16/index.htm

 総合資源エネルギー調査会基本問題委員会における主な「選択肢」の中で、原発の比率が0%、20%、25%、35%となっていることにまず注目して下さい。これは一見すると、「中立的」に議論を整理しているように見えますが、実は重大なトリックが隠されています。この「選択肢」に基づいて今後の議論がなされると、とんでもない事態が起きます。



2030年時点における原発の経過年数を示した表2を見てみましょう。もし、“脱原発依存”の政策に関して今のところ政府が表明している点は、「新規建設は実質的に無理である」と「原発は原則40年を経過したら廃炉にする」ということです。しかし、この二つの原則を適用すると、2030年時点で稼働できる原発は54基から19基(年頭で20基、年末で18基)に減ります。つまり、54基中、福島原発10基を廃炉にし、40年廃炉の原則を守れば2030年には25基が廃炉になり、残るのは19基だけになります。このように原発の新規建設をなくし、既存の原発を40年で廃炉にしていくと、2030時点で、実は原発依存度は10%台前半に落ちていきます。 

こう考えると、原発依存度が20%以上の「選択肢」は、本来、“脱原発依存”の選択肢にはなりえないはずです。エネルギー消費量を10%程度削減しただけでは、この20%以上の「選択肢」を実現するには、二つの手段しかありえません。一つは、原発が廃炉になったら、その分だけ原発を新規建設することです。いま一つは、40年廃炉の原則を放棄して、みな60年まで延長することです(あるいは、二つを組み合わせていくことしかありません)。

いまや国民のおよそ6〜8割が脱原発を支持し、再生可能エネルギーに期待しています。そんなに多くの新規建設をすることなど現実的ではなく、多くの人々がそれを受け入れるとは思えません。かといって原発を60年稼働させる政策を選択することは、安全性軽視で招いた福島第一原発事故の悲惨さをあまりに無視した想定であり、深刻な被害を放置している現状において、こうした選択肢を掲げること自体が倫理的に許されない行為です。

 

老朽原発では、金属が単に劣化するだけでなく、中性子が金属を攻撃する“脆化”という現象が起きます。世界では、平均で廃炉になる期限は30年に満たないのが現状です。実際、重大事故を引き起こした福島第一原発の1〜4号機はいずれも1970年代に建設され、30〜40年を経過した老朽原発であり、古くから米国原子力規制委員会(NRC)が地震に弱いと指摘してきたマーク?型の格納容器を持つ原発でした。類似の老朽原発までをも動かそうとする原子力ムラの人々は、どう見ても福島原発事故の教訓を何も踏まえていません。こういう姿勢が重大事故を引き起こしたにもかかわらず、懲りていないのです。

 

とくに35%という「選択肢」は現状の26%よりはるかに高く問題外です。35%を主張した山地憲治氏によれば、これでも民主党政権が当初掲げた14基新設方針よりは減るのだというのです。重大な福島原発事故を引き起こし、福島県をはじめとした広大な地域に深刻な被害と不安をもたらしたことを全く反省していません。これは、数字的根拠の全くない「選択肢」でまともな「科学者」や「技術者」がなすべき議論とは思えません。

しかし、あえてこうした選択肢を持ち込んだ理由を推測すれば、“バナナのたたき売り”戦略です。つまり、ありえない高い「選択肢」を設定することによって、あたかも20%や25%という「選択肢」が「中間的」であるかのように印象づけようとしているのです。そして結果として、現在と全く変わらない原発依存率を確保しようとしているのです。

巨大な利権集団が、人命や子どもの未来を奪ってまでもどん欲に自己利害を貫こうとしています。

彼らは、福島とその周辺地域にもたらした甚大な被害と東電救済のために行ってきた許し難い数々の犯罪的行為だけでも断罪されるべきなのに、それを未来永劫続けるつもりのようです。それは、同時に、エネルギー転換を妨げ、新しい産業構造の創出の機会を奪うことをも意味します。そして、この国は「失われた30年」「失われた40年」を迎えて、滅びていくことになるでしょう。

これらの点については、電力改革のあり方も含めて、改めて5月9日に緊急出版する『原発は不良債権である』(岩波ブックレット)において論じます。

 

*ちなみに、エネルギー・ミックスの「選択肢」に関しては、数多くの委員が厳しい批判を投げかけています。

3月29日に行われた第16回新大綱策定会議では、上記のURLのうち、資料第5号の委員からの提出資料に、浅岡美恵委員と私が提出した意見書があります。

4月11日に行われた第18回総合資源エネルギー調査会基本問題委員会では、阿南久委員、飯田哲也氏、植田和弘委員、枝廣淳子委員、大島堅一氏、伴英幸氏らからも批判的な意見書が出されています。

http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/18th.htm 


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