ノーベル賞候補 外村彰氏が死去 NHKニュース ご冥福をお祈り致します 合掌
目に見えない磁気の力、磁力を電子を利用して観測できる新しいタイプの電子顕微鏡を開発し、ノーベル物理学賞の候補とされていた日立製作所フェローの外村彰さんが、2日、埼玉県内の病院で亡くなりました。70歳でした。
外村さんは東京都の出身で、昭和40年に東京大学理学部を卒業したあと日立製作所に入社し、一貫して電子顕微鏡の開発に取り組みました。
昭和53年、極めて短い波長を持つ電子の性質を利用した「ホログラフィー電子顕微鏡」と呼ばれる新しいタイプの電子顕微鏡を世界で初めて開発しました。この顕微鏡は電子が磁力によって影響を受ける様子を捉えることで、その場所に働いている磁力を目に見える形で観測できるもので、電子顕微鏡の可能性を大きく飛躍させました。
これによって、超電導の研究や磁気による記録媒体の開発などを目に見える形で行うことができ、この分野で欠かせない技術となっています。さらにこの技術を応用して、真偽を巡って30年近くも論争が続いていた「アハラノフ=ボーム効果」と呼ばれる量子力学の理論を証明し、物理学の発展にも貢献しました。
こうした業績で平成11年にアメリカのノーベル賞といわれる「ベンジャミン・フランクリンメダル」を受賞したほか、国内でも平成14年に文化功労者に選ばれ、ノーベル物理学賞の候補の一人とされていました。
外村彰さんと研究を通じて親交が深かった理論物理学が専門で学習院大学の江沢洋名誉教授は「1年ほど前から体調が悪いと聞いていましたが、まさかという思いです。新たな電子顕微鏡を開発し、見えなかったものを見えるようにしてくれ、物理学の発展に貢献した人でした。まだやりたいこともあったと思うので、とても残念です」と話していました。
電子線ホログラフィー顕微鏡の開発など、外村彰さん死去 | エンタープライズ | マイナビニュース
高精度な新技術の電子顕微鏡を開発し、量子力学の長年の理論を実証するなど、ノーベル物理学賞候補ともいわれた日立製作所フェローで、理化学研究所グループディレクターの外村彰(とのむら・あきら)さんが2日、膵臓がんのため、埼玉県内の病院で死去した。70歳。
外村さんは1942年、兵庫県西宮市生まれ。東京都立新宿高校卒。1965年東京大学理学部物理学科を卒業して、日立製作所に入社した。電子が粒子ではなく、波としての性質をもつことに着目し、78年に世界最高性能の「電子線ホログラフィー顕微鏡」を開発した。さらに、電磁場のない環境での電子の振る舞いについての「AB(アハラノフ・ボーム)効果」を、世界で初めて実験によって実証した。これにより、量子力学の分野で30年近くも続いた論争が決着した。
99年から日立製作所フェロー。同年に米国のノーベル賞ともいわれる「ベンジャミン・フランクリン・メダル」を受賞。2002年に文化功労者の表彰を受けた。
1989-94年に科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業ERATO型研究プロジェクトの総括責任者。95-2000年にJSTの戦略的創造研究推進事業発展研究SORST「電子波の位相と振幅の空間微細解像」の主研究者。09年からは国内トップ30人の1人に選ばれ、内閣府の最先端研究開発支援プログラムFIRST「原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡の開発とその応用」の中心研究者。
外村 彰 氏「研究はつまるところ『人』 どこでも扉は」 科学者になる方法 科学技術 全て伝えます サイエンスポータル / SciencePortal
子ども時代は、川の流れを眺めたり、虫を観察したり、自然を「見る」ことが好きでした。現在の研究の背景になっているかもしれません。
大学に入った時は、とくに物理学を勉強しようとは思っていなかったのですが、大学の授業で「電子は波だ」ということを知り、量子力学が示す不思議な電子波の性質を、目の当りに見てみたいと思いました。
ところが、当時の東京大学には透過型の電子顕微鏡がなかったため、大学院へは進学せずに、電子顕微鏡のある日立製作所中央研究所に入りました。入社1年目、電子線物理学の世界的権威である渡辺宏博土が「電子線ホログラフィ」というテーマを持ち込んできました。まさに私のやりたいことだったので、飛びつきました。電子の波動性を利用して、飽和状態に近づきつつあった電子顕微鏡技術のブレークスルーにしたいという狙いでした。
猛烈に実験をしましたが、なかなかよい結果を得ることができません。ところが、ある日、電子顕微鏡写真を蛍光灯にかざしてみると、壁に虹が映っているのに気がつきました。もしや、と思って顕微鏡で写真を拡大してみると、目に見えないくらい細かい縞がびっしり写っていました。写真に写った細かい縞がプリズムになり、虹をつくっていたのです。
これをきっかけに、研究が一気に進展しました。ナノ(10億分の1)の世界には、常識を超えた量子法則が通用し、まだまだ未知の現象が、掘り起こされないままたくさん眠っています。これからも、そうした観察対象を新しい装置によって観察できるようにしたいと思っています。
研究は、つまるところ「人」です。若い人が自分でおもしろいネタを見つけて一生を貫いてやるくらいの気持ちでがんばってくれたら、企業でも大学でも、どこでも扉は開かれ、周囲もそれを認め、やがては支援してくれるようになると思います。
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