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メモ「13歳未満のフェイスブック利用に「ノー」/ジェンキンス沙智」

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ウォールストリートジャーナル 日本版-The Wall Street Journal

        【日本版コラム】13歳未満のフェイスブック利用に大多数の米国人が「ノー」 - WSJ日本版 - jp.WSJ.com

 ありとあらゆるソーシャルメディアがあふれる現在、これらを生活の一部として利用している人は多いだろう。

 友人との情報交換、写真や動画の共有、気晴らしのゲームなど、ソーシャルメディアの用途は人それぞれだが、子供が利用することについて読者のみなさんはどうお考えだろうか。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今月初め、関係者の話として共有サイト(SNS)最大手の米フェイスブックが13歳未満の子供向けのシステムを開発していると報じた。子供のアカウントを親のアカウントと結び付けたり、子供が「友達」になる人や使用するアプリケーションを親が承認できるようにしたりして、親の監視下で子供が利用できるシステムを試験中らしい。

 この計画に、米国の親は猛反対している。ニュースを受けて様々なメディアが賛成か反対かを問うインターネット投票を実施したところ、WSJの調査では88%、FOXニュースの調査では86%が反対票を投じたほか、その他メディアによる調査でも圧倒的多数の回答者が13歳未満のフェイスブック利用に難色を示していることが明らかになった。

 懸念される理由は、個人情報の流出、危険な人物や組織との接触、不適切な広告の表示、課金問題、サイバーブリング(Cyber Bullying:ネット上のいじめ)など多岐にわたる。反対意見には、「利用者数を拡大して収益を伸ばすために、判断力がまだ養われていない子供を利用するのか」という批判が多い。

 特に、先月の新規株式公開(IPO)が大きな話題となりながら、その後株価が急落しているため、利用者数および宣伝効果ともに期待できる子供の取り込みを通じて挽回を図ろうとしていると非難されるのも不思議ではない。

 13歳未満の子供3人を持つある母親は、フェイスブックがいじめの温床となり得るだけでなく、「些細(ささい)なことでごたごたが生じる要因になる」と心配する。彼女の12歳になる娘の友人にはフェイスブックを利用している子もいるが、「書き込みがきっかけでよくけんかをしている」と話す。

 子供に安全なインターネット使用を教育する非営利団体「アイ・セーフ」が小学4年生から中学2年生を対象に行った調査によると、サイバーブリングの被害にあったことのある子供は42%に上る。一方、58%がメールやオンライン上で意地悪を言われても親やまわりの大人に言わなかったと回答している。

 子供のインターネット利用に関する問題は何年も前から議論されているが、フェイスブックのこととなると米国の親は特に敏感だ。

 それには、フェイスブックがネット社会のパスポートとも言えるほど利用が広がっているという背景がある。SNSの統計調査を行っているソーシャルベーカーズによると、米国のフェイスブック利用者数は1億5700万人近く、 人口普及率は50%を超えている。日本でも急速に利用者が増えてはいるが、普及率は10%にも満たない。

 同社は現在、2000年施行の「児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)」に準拠し、13歳未満の子供による利用を禁じている。しかし、誕生日を登録すれば誰でも簡単に始められるため、年齢を偽って利用する子供も多いのが実情だ。米消費者団体発行のコンシューマー・リポーツ誌によると、13歳未満のフェイスブック利用者数は750万人に上り、大半は親が監視していない状態で利用しているという。

 フェイスブックの年齢制限緩和に向けた動きが見られたのは今回が初めてではない。最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグ氏は昨年、起業家や政策担当者を集めた教育に関する会議で、「教育手段」としての同サイトの可能性を指摘し、13歳未満の子供もフェイスブックを利用可能にすべきと述べている。

 今回のニュースを受けて、児童権利擁護団体「コモン・センス・メディア」の代表であり、4人の子供を持つ親でもあるジェームス・ステイヤー氏は声明で、「プライバシーのみならず、子供の社会的、感情的、認識的成長への影響に対して極めて妥当な懸念がある」と警鐘を鳴らした。

 ただ、年齢制限が取り除かれた場合、利用したいと思う子供を親は止められるだろうか。様々な危険から子供を守ることはできるかもしれないが、反対にフェイスブックに名を連ねていないというだけでクラスメートに仲間外れにされ、心に傷を負うことも考えられる。

 また、親が子供の情報や写真をネット上で共有する機会が増え、Over(過剰な)、Share(共有)、Parenting(育児)という単語を組み合わせた「Oversharenting」という造語も生まれている今、親が利用していることでフェイスブックに慣れ親しんだ子供達に「使うな」というのはダブル・スタンダードのようにも思われる。

 子供のフェイスブック利用に賛成の意見としては、「早いうちから使わせて、ネット社会の危険性を教えるべき」、「年齢を偽って使う子供がいるくらいなら、子供向けに開発された安全なシステムを開放すべき」といった声が聞かれる。

 子供向けSNSは他にも多数あるため、フェイスブックの年齢制限にかかわらず安全が確保されているとは言い難い。親が子供のオンライン活動を監視するサイトやアプリケーションも提供されているが、これまでの経験上インターネットの世界に「絶対的な」安全が存在しないことは明白だ。

 ソーシャルメディアは今まで以上に生活に結び付いており、その傾向はこの先さらに進むだろう。一方で、犯罪やいじめが容易にできてしまうだけでなく、ターゲット広告やそのほかの個人情報の利用も手段がますます巧妙になっている。筆者はインターネットのない時代に育っただけに、その影響を推量するしかないが、子供を守る親も臨機応変に対応する力が求められるのは確かだ。

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ジェンキンス沙智(さち) フリージャーナリスト・翻訳家

ジェンキンス沙智氏

 愛知県豊田市出身。テキサス大学オースティン校でジャーナリズム学士号を取得。在学中に英紙インディペンデント、米CBSニュース/マーケットウォッチ、米紙オースティン・アメリカン・ステーツマンでインターンシップを経験。卒業後はロイター通信(現トムソン・ロイター)に入社。東京支局でテクノロジー、通信、航空、食品、小売業界などを中心に企業ニュースを担当した。2010年に退職し、アメリカ人の夫と2人の子供とともに渡米。現在はテキサス州オースティンでフリージャーナリスト兼翻訳家として活動している。

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