先日のTVで紹介されていました。最終加工をすることで傷のつき難い木材が出来上がり、使い難かった杉の活用が促進できます。産地での加工は雇用も生み出し、商品の付加価値も生み出し、結果として「山の保全」に繋がります。「里山」確保にも貢献する技術になると思います。
スギに表面加工し傷つきにくく 県と木材メーカー、床材開発 奈良 - MSN産経ニュース
■美しい年輪、断熱性維持
柔らかく傷つきやすいため、床材には適していないとされていたスギの表面に特殊な加工を施すことで硬度を高め、土足で歩いても傷つきにくいスギ材を、県森林技術センターと大淀町の木材メーカー「ホーテック」が共同開発した。スギの年輪の美しさや断熱性を失わないのが特徴で、「吉野杉 ハードフローリング」との商品名で4月から販売を始めた。
◇
国は国産材自給率50%を目指しているが、現在、床材に使用される多くは海外産のナラ材という。スギ材は各組織の隙間が大きく、断熱性がある一方で柔らかい。傘の先端や爪でこするだけで傷がついてしまい、床材としてはほとんど利用されなかった。
スギ材の硬度を高める方法としては従来、隙間を樹脂で埋めたり、全体を圧縮して隙間をなくしたりする方法があったが、多大なエネルギーや薬剤が必要となり、コストがかかるほか、スギ材の特徴である断熱性が損なわれるデメリットもあった。
このため同センターと同社は平成22、23の両年度、林野庁の「緑の産業再生プロジェクト」を活用して共同開発に取り組んだ。
同センターによると、スギ材の両面の表面部分だけ計1ミリ程度圧縮し、その表面に特殊な樹脂コーティングを施すことで、固く傷つきにくいスギ材を開発することに成功した。無処理のスギ材と開発したスギ材に、直径25ミリの硬球を落として傷を比較したところ、開発したスギ材にできた傷は、無処理のスギ材の15%以内にとどまった。
同センターなどによると、スギの床材は住宅に使えば暖かく、住み心地のよさが期待できる。表面は硬くても内部は柔らかさを保っているため、歩いても疲れにくい。コーティングが施されて滑りにくく、高齢者施設などの需要も期待できるという。すでに奈良市の奈良佐保短期大学内の「レストラン鹿野園 佐保・プロトンダイニング」でフローリングに利用されており、好評という。
同社の堀内嘉久社長は「新商品を開発しなければ、木材の需要は拡大しない。ニーズがあるものを作り、山に返していきたい」。同センターの伊藤貴文・木材利用課長は「国産のシェア拡大や、スギ材の用途が広がることにもなる。これを機に、さらに県産のスギ材を広めたい」と話している。
吉野杉 ハードフローリング/県森林技術センターと大淀町の木材メーカー「ホーテック」が共同開発
HOME > こだわりの加工技術
こだわりの加工技術ブランド杉にさらなる価値を創出
吉野杉の住宅部材『ホーテック』では、良質の吉野杉より、一枚一枚丁寧な製材や乾燥(天然、人工)、加工を施し、高品質の住宅部材を製造しています。なかでも、熱圧(圧密)ロールプレスによる加工は、住宅部材としての利用価値をさらに高める技術として高い注目を集めています。立ち木から製品までの流れと併せてご覧ください。
当社では、杉や桧の軟質材の表面を硬く改質する熱圧(圧密)ロールプレスを採用しています。
杉や桧は表面が柔らかいため、従来は柱材や天井板などにしか使われていませんでしたが、熱圧(圧密)ロールプレスにより、床材はもちろん腰板、壁材などへの利用も可能になりました。
※熱圧(圧密)ロールプレスは、特許を取得しています。
この技術は、基本技術の開発を行った県森林技術センター、樹脂部分を担当した三精塗料、生活環境に及ぼす影響を調べた奈良女子大学との産官学共同研究により生まれ、既存の木材にさらなる付加価値をもたらしています。
熱圧(圧密)ロールプレス材の特徴熱圧(圧密)ロールプレスによる加工を行った杉材は、「軽いのに硬い」という特徴があります。
たとえば、13mm厚の杉材では、処理前の気乾比重0.38に対して、処理後でも0.41〜0.43程度であるにもかかわらず、鋼球によるめりこみ試験や鉛筆の引っ掻き試験(下記の画像)では、硬さが格段に改善していることが確かめられました。また、平滑度や光沢も著しく向上しています。
熱圧(圧密)ロールプレス材は表面が硬く、傷つきにくいうえに、内部の比重が軽いため、断熱効果にも優れてます。
加工方法まず、熱可塑性の水性樹脂に木材をつけ込みます(事前に熱圧(圧密)ロールプレスを使って常温で10〜20%の圧縮処理をすると、樹脂の含浸量が増加します)。気乾状態まで乾燥させた後、再び熱圧(圧密)ロールプレスを使って、今度は150〜180℃で10〜20%圧密。必要に応じてクリア塗装を行って、完成となります。
※樹脂を使わず、直接杉の板材を加熱したローラーで圧縮し、細胞を押しつぶすことで硬化させる圧密手法もあり、用途や注文に応じて使い分けています。
立ち木から製品までの流れ
吉野杉が立ち木から住宅部材として市場に出るまでには、以下のような工程があります。
15年生以降のものを伐採密植により緻密な年輪を持つ吉野地方の立ち木群。
最低でも、15年生以上のものを伐採します。
柾目の良さを生かした製材
反りや寸法のズレ、割れが少なく、端正な模様の柾目材へと製材します。
人工乾燥機による乾燥
施工後の木の寸法のズレをなくすため、含水率が15%前後になるまで乾燥させます。
加工機械による仕上げ
用途を広げたり、製品の利用が容易になるよう加工機を用いて丁寧に加工を行い、完成となります。
なお、各種加工の請負も行っております、詳細は賃加工(各種加工)のページをご覧ください。