手作業でしか行えなかった実験を自動化するための汎用ヒト型ロボット - DigInfo TV
手作業でしか行えなかった実験を自動化する汎用ヒト型ロボット #DigInfo
産業技術総合研究所と安川電機が共同で開発した「まほろ」は、従来、手作業でしか行えなかった実験を自動化するための汎用ヒト型ロボットです。
分注や培養など様々な作業を人間よりも高速・高精度に行えるため、臨床検査やバイオハザード実験を効率的に行えます。
"例えば我々はインフルエンザの薬を開発するために強毒株のインフルエンザの感染実験を毎日やっています。これは非常に危険な作業ですので、そういうことはロボットがやるべきです。それから、放射性物質を扱う実験もたくさんしなければいけませんが、そういうものもロボットがやるべきです。"
"いろいろなロボットシステムを試しましたが、専用のロボットを作ってしまうと、実験のステップを変更したり改良したり、違うプロジェクトに変えたりすると、開発したロボットが全て無駄になるんです。また、ロボットの開発にものすごく時間がかかります。なので、人間が使う道具をそのまま使って、人間がやるようなロボットを開発したいということで、このようなロボットを開発してきました。"
遺伝子増幅実験における、まほろと人間の作業精度を比較した所、熟練者が丁寧に行った作業よりもまほろの作業の方が精度が高く、作業時間も半分という結果が出ています。
"まほろのアームには、関節が7つあります。ファクトリーオートメーションのロボットはMAX6つまでです。生産の現場であれば、6つあればだいたい自由にハンドをポジションさせることができます。ただし7軸目があれば、肘の動きが再現できるので、懐を使って開けるという動作ができるようになります。"
従来、このような関節数のロボットに動きを教え込むには、膨大で複雑なプログラミングが必要でしたが、まほろは、コンピュータの仮想空間上で簡単にティーチングができます。
"まず、使いたい道具を全て3Dスキャナで、3DCADに撮ります。それをコンピュータの中に送ると、仮想ベンチ、仮想ロボットが出現します。それを使って例えば、チューブをこのハンドの位置に持っていきたいとしたら、その場所に向かってクリックするだけでロボットの手がそこに行きます。その際、衝突のシミュレーションもします。その中では、もちろん、いろんなツール類を自由に配置を変えることができるので、どの位置に置いたら一番いいかということをコンピュータ上でシミュレーションして、動きを作り上げることができます。その時に高度なプログラミング技術も数値を入れたりする必要もありません。"
まほろは、日京テクノスより販売されており、すでに製薬会社や大学などに導入され始めています。今後は、ロボットの安全性をさらに高めて、人間と協調して作業ができるように改良していきたいということです。