バークレー研究所ら、どんな半導体でも使える新構造の太陽電池を開発 « SJN Blog 再生可能エネルギー最新情報
米ローレンス・バークレー国立研究所とカリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー) の研究チームが、どんな種類の半導体材料からでも太陽電池を作れる技術を開発したとのこと。金属酸化物や硫黄化物、リン化物など、これまで太陽電池には適していないと考えられてきた安価な半導体を利用できるようになるという。2012年7月16日付の Nano Letters に論文が掲載されている。
銅酸化物を材料とするSFPVセル(Courtesy Zettl Research Group, LBNL & UC Berkeley)
今回開発された技術は、トランジスタで普通に使われている電界効果を太陽電池に応用したもの。表面電極の一部を遮蔽(スクリーニング)し、電界効果によってキャリア濃度を変化させることから、SFPV(screening-engineered field-effect photovoltaics)と名づけられている。表面電極を部分的に遮蔽することによって、電界が電極内へ十分に浸透し、キャリアの濃度とタイプがバラつきなく調整されてpn接合が形成される。従来は高温の化学ドーピングやイオン注入などの手法を使わなければ作れなかった高品質なpn接合が、電極とゲートの成膜だけでできるようになるという。
研究チームがこの方法で作製した太陽電池は2種類ある。1つは銅酸化物を材料とするデバイスで、セル表面の誘電体膜の内部にナノサイズのフィンガー状のコンタクトを形成したもの。フィンガーを十分小さくして電界をかけると、フィンガーとその下の電位障壁との間に電気抵抗の低い反転層が形成されるという。もう1つは、シリコン材料を使ったデバイスで、ゲート誘電体と半導体の界面に極薄の単層グラフェンによるトップコンタクトを形成したもの。均一な膜厚のトップコンタクトによって電界が半導体下部に浸透し、反転層の形成が可能になる。どちらのデバイスでも、高品質なpn接合を実現している。これ以外のどんな種類の半導体および電極材料を用いた場合でも、電極の形状が適切に構造化されていれば、同様に高品質なpn接合が得られるという。
上の図のタイプAがナノフィンガーを形成したデバイス、タイプBがグラフェンによる極薄トップコンタクトを形成したデバイスである。タイプAの中段の図(b)ではフィンガーの幅が狭くなるにつれて開放電圧(表面電極と下部電極の電位差)が大きくなることが示されている。同様に、タイプBの中段の図(e)からは、トップコンタクトの膜厚が薄くなるにつれて開放電圧が大きくなっている。変換効率は、どちらのタイプでも8〜20%近い値が得られているという。
SFPVには、もう1つ「自己ゲート構造」という特徴もある。これはセル自体の電気的活性によってゲート電圧が生じる性質であるという。自己ゲート効果を応用すると、ゲートに電界をかけるための外部電源が不要になるので、デバイスを簡素化できると考えられる。
(発表資料)http://bit.ly/OYA8PV