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メモ「車造りに新風 流れ作業・大量生産を転換/テスラ」

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テスラ、車造りに新風 流れ作業・大量生産を転換  :日本経済新聞

 自動車産業に夜明けをもたらした「T型フォード」。ヘンリー・フォードが1913年に導入したベルトコンベヤー式の大量生産が、圧倒的な低コスト化を可能にし産業史を変えた。それからおよそ100年。1本の生産ラインの上を車が流れる風景は今も続くが、そんなクルマ造りの常識を覆そうとする自動車工場が、IT(情報技術)の本場シリコンバレーに近いフリーモントにある。

独自の生産ラインを築いた(カリフォルニア州フリーモント)

独自の生産ラインを築いた(カリフォルニア州フリーモント)

 

 鋼鉄製の赤い台に載せられた車。数メートルの間隔で無造作に置かれているようだが、よく見るとゆっくりと動いている。その動きに合わせて移動しながら、従業員が部品を取り付けていく。

■閉鎖工場を再生

 動く台の秘密は真っ白な床の上に引かれた黒い線。磁石で作られており、荷台搬送システムと同じ仕組みだ。これを応用して、1人の従業員が多くの工程を受け持つ「一人屋台」に似た生産ラインを作り上げている。家電の工場でよく見る光景だ。

 「この新しい発想の強みは柔軟性」。こう話すのはジルベール・パサン氏。米電気自動車(EV)ベンチャー、テスラ・モーターズが生産を始めた量産型EVの現場を副社長として取り仕切る。

 床に磁石を貼り付けるだけだからライン変更はあっという間。車の売れ行きに応じて姿を変える。今は敷地を効率的に使うため何度も曲がりながら台が進むが、「販売が伸びればすぐに見直す。完全形はない」という。

 テスラは米電子決済大手ペイパルの前身企業を設立した起業家イーロン・マスク氏が創業。トヨタ自動車やパナソニックも出資し2013年の営業黒字化を目指す。

 実はこの工場、最近まで米ゼネラル・モーターズ(GM)とトヨタが合弁で運営。84年に貿易摩擦を回避するため自動車業界の巨人同士が手を組んだ日米協調の象徴だったが、高額の人件費や法人税などが重荷となり10年4月に生産を終えた。

 流れ作業で同じ車を大量に造りコストを下げる。そんな常識では手に負えなくなった工場を買い取ったのがテスラ。かつて「カローラ」を生産したベルトコンベヤーは早々に取り外された。

■設備投資を抑制

 GMはその後、賃金を最大4分の1に引き下げて息を吹き返したが、この点でもテスラは逆。「動く台方式」は手がかかるため、コストをかけ世界中から車造りのベテランや電気エンジニアをかき集めたという。

 設備投資は極力抑え、プレス機やロボットなどは金融危機後に経営難になった会社から中古品を買いあさった。設備ではなく人にカネをかけるという考えだ。EVでよみがえった工場。開発費が先行するテスラは03年の創業時から赤字が続くが、ITベンチャーらしい常識にとらわれない発想でモノ作りに挑む。

 08年に発売したスポーツ車タイプのEVは約10万ドルと富裕層向けで累計販売約2350台にとどまるが、6月に半値の量産型EVの発売を開始。すでに1万2千台の受注を抱え、まずは年5千台を生産する。3時間半かかった充電も急速充電に対応し45分に短縮。電池まるごとを1分間で交換するサービスも始めた。

 米国が高い競争力を誇るITと20世紀の産業の主役だった自動車。新旧の知恵が融合し、モノ作りが進化している。


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