Quantcast
Channel: 鶴は千年、亀は萬年。
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1727

閑話休題  「映画『ソハの地下水道』/アグニェシュカ・ホランド監督」

$
0
0

 先日のNHK-BSエルムンドでアグニェシュカ・ホランド監督が出演していて、近日公開の映画「ソハの地下水道」紹介をしていた。下記は、彼女へのインタビュー記事であるが、エルムンドでは「突然の発想」で下記の図をしたためている…

 ☜ 複雑性と 地球をも貫く…と解釈!

yorimo : ポーランド映画『ソハの地下水道』のアグニェシュカ・ホランド監督

 ナチス占領下のポーランドで、ユダヤ人たちを地下にかくまい、ナチスによる迫害から救った下水修理工、レオポルド・ソハの実話を基にした映画『ソハの地下水道』が9月22日(土)に公開される。かくまう見返りとしてユダヤ人たちから金をせしめていた狡猾なソハが、やがて自らを危険にさらしてまで彼らを守り抜こうとする姿を、現代ポーランドを代表する実力派、アグニェシュカ・ホランド監督が重厚かつ緊張感あふれる映像で描き出している。このほど来日したホランド監督が本作について語った。  

主人公のキャラクターの「複雑さ」に魅力  

――第2次世界大戦中の実話を基にした作品ですが、脚本を読んで、どんなところに惹かれたのですか?

ホランド監督:私はこれまで、ホロコーストを生き延びたユダヤ人のエピソードや、ユダヤ人をかくまってあげた人たちのエピソードをいろいろ耳にしてきましたが、ソハのことはまったく知りませんでした。だから、はじめは実話ではなく、フィクションだと思ったのです。知らなかったのは、この話が現在のポーランドではなく、ウクライナ領リヴィウでの出来事だったせいかも知れません。私がこの物語で最も惹かれた点は、ソハというキャラクターの複雑さです。彼には、コソ泥や詐欺を働いて家計の足しにするような不道徳な面がある一方、家庭では良き父親であり、正義感も持ち合わせています。そんな彼の二面性によって、いかにもヒーロー的なヒーローではなく、むしろアンチヒーローと呼ぶべき、ユニークなヒーロー像を描き出せると考えたのです。例えるなら、彼は綱渡りをしていて、「善」の側に落ちても「悪」の側に落ちてもおかしくない。そんな彼の心情の変化を描くことで、大きな感動が生まれるのではないかと考えました。
 もう一つ、脚本を読んで気に入った点は、ユダヤ人たちがすごく人間的に描かれていたことです。ホロコーストを題材にした映画にありがちな、「気高い被害者」といった描かれ方ではなく、時に彼らはあくどいことをしてみたり、浮気っぽかったり、ヒステリックだったりと、人間的な多面性を持っていました。そこに私は、この作品のリアリズムを感じたのです。

――ユダヤ人たちが隠れていた地下水道内のシーンがとても多い。

ホランド監督:地下水道のシーンのうち、75%はセットで、25%は本物の地下水道で撮影しました。この映画で地下水道は非常に重要な存在ですから、何度も足を運んで中に入り、シナハン、ロケハンをしました。地下水道の内部が描かれている映画もいろいろ観ました。そして思ったのは、地下水道のシーンでは「映画的な照明」を使っているケースが多いということ。遠くの方に光源を作って、そこから地下水道に光が差し込んで、まるでゴシック教会のような、ロマンティックな場所に見えたりするんです。でも、私が作る映画では「ロマンティックな地下水道」には絶対したくありませんでした。実際に地下に降りてみると、中は暗くて、ヌルヌル、ベタベタしていて、ロマンチシズムのかけらもありません。そこで、地下水道のリアリズムをいかにして映像化するかをカメラマンと話し合い、外から自然に漏れ入ってくる光や、懐中電灯の明かりなど「リアルな光」だけを使って、地下水道内の「本物の闇」を映像にとらえようとしたのです。

ホロコーストの全容、次第に明らかに  

――当初は英語作品として構想されていたのを、ホランド監督がポーランド語、ドイツ語、イディッシュ語、ウクライナ語の混成セリフによる作品に変更させたそうですね。

ホランド監督:それはもちろん、この物語をリアルに描くためです。もし、英語のセリフでこの映画を撮っていたら、史実としての重みがなくなると考えたのです。

――ポーランド出身の映画監督として、ホロコーストを題材にした作品を手掛ける意義を、どう考えますか?

ホランド監督:私の父はユダヤ系で、父の家族は皆、ワルシャワのゲットー(ユダヤ人隔離地域)で亡くなりました。母はカトリック系のポーランド人ですが、ナチスに対する地下抗議運動に参加し、ユダヤ人のカップルを助け出したこともあります。ソハは後に、イスラエル政府から「諸国民の中の正義の人賞」を受賞しますが、私の母も受賞者の一人なのです。そんな両親を持つだけに、ホロコーストにまつわる映画を作る意義というものを重く感じざるを得ません。大戦当時、ポーランドには多くのユダヤ人収容所があり、事件もたくさん起きました。ホロコーストを目撃した人は数多く、殺りくに手を貸した人もいれば、逆にユダヤ人を救った人もいます。それぞれが映画の題材として、とてもドラマチックなのです。それに、この15年ほどの状況をみていると、ホロコーストを巡る真実の全容がようやく明らかにされつつあると感じます。ですから、近年、私のほかにもポーランドの若手監督たちが次々にこのテーマにチャレンジしていて、たくさんの映画が作られているのです。
 『ソハの地下水道』は、人類史の中で最も痛ましい時代の物語ではあるけれど、そうした歴史にあまり関心のない人にもぜひ観てほしいと思います。そして、映画を通じて、人間の感情は複雑であること、どんな人間にも選択肢があるのだということを感じ取ってもらえたらうれしいです。

(取材・文/ヨリモ編集デスク 田中昌義、インタビュー写真も)


【プロフィル】アグニェシュカ・ホランド 1948年ワルシャワ生まれ。1971年にプラハ芸術アカデミーを卒業後、ポーランドに戻り映画業界に入る。クシシュトフ・ザヌーシの助監督になり、アンジェイ・ワイダから指導を受けた。初監督作品「Provincial Actors」(78年)で80年のカンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞を受賞した。1981年にフランスへと移住。『僕を愛したふたつの国/ヨーロッパ ヨーロッパ』(90年)でゴールデン・グローブ外国映画賞、NY批評家協会賞を受賞。その他の主な監督作品に『オリヴィエオリヴィエ』(92年)、『秘密の花園』(93年)、『太陽と月に背いて』(95年)、『敬愛なるベートーヴェン』(06年)など。数々の映画監督に脚本を提供しているほか、テレビ作品の監督としてもエミー賞最優秀ドラマシリーズ部門にノミネートされるなど活躍している。
 

『ソハの地下水道』 過酷な状況でも生きようとする人間の姿が愛おしい - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース …流石に琉球新報記者だけにコメントにも凄さと愛を感じる! 2012年9月18日

 またナチ時代の話か?と思うかもしれない。だが筆者は、ヒトラー政権下や文化大革命時代の話に燃える。毎回、まだ隠されていた真実があるのかと驚き、犠牲者の数だけドラマがあり知らねばならぬと痛感するのだ。何より、どんな過酷な状況に置かれても生きようとする人間の姿は愛おしく、そして美しい。
 本作は、戦時中にポーランドで、ナチスの迫害から逃れてきたユダヤ人たちが地下水道に身を潜めて生き抜いた実話だ。
 主人公は下水処理工のソハ。偶然、隠れていたユダヤ人を発見し、かくまうかわりに金品を要求していた不届き者だ。だが、ナチスの横暴ぶりに怒りを覚え、ユダヤ人グループに情を感じ、やがて家族を危険にさらしながらも彼らを救うことに使命を感じるようになる。美談だけでなく人間の強欲さや小狡さも容赦なく描く。特にソハが、いきがかりでドイツ兵1人を殺害してしまった時、報復として10人のポーランド市民が処刑されるエピソードは強烈だ。
 ちなみにソハは戦後、交通事故で亡くなったという。『シンドラーのリスト』だけではない。ソハのような名も無き英雄たちに思いをはせる。★★★★★(中山治美)

 【データ】
監督:アグニェシュカ・ホランド
原作:ロバート・マーシャル
出演:ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ、ベンノ・フユルマン
9月22日(土)から全国順次公開
(共同通信)

映画『ソハの地下水道』公式サイト

映画『ソハの地下水道』予告編


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1727

Trending Articles