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スタンフォード大ら、自然エネルギー蓄電向けのカリウムイオン電池を開発 « SJN Blog 再生可能エネルギー最新情報 2012.10.28
カリフォルニア州パームスプリングズ近くの風力発電施設 (Credit: SLAC)
米スタンフォード大学とSLAC国立加速器研究所が、太陽光・風力など自然エネルギーの電力貯蔵に適した新型二次電池を開発したとのこと。正極にはヘキサシアノ鉄酸銅のナノ粒子、負極には活性炭素とポリピロールのハイブリッド材料を使用し、カリウムイオンの電極間移動によって充放電を行う。銅や炭素など地球上に豊富に存在する材料で電池を構成しているため低コストであり、繰り返し充放電による性能劣化が少なく長寿命という特徴もある。2012年10月23日付の Nature Communications に論文が掲載されている。
ヘキサシアノ鉄酸銅ナノ粒子を用いた正極材は、以前このブログでも取り上げたとおり、結晶の開骨格構造によって電極へのイオンの出入りがしやすくなるという特性がある。このため、電極にダメージを与えずに済み、サイクル寿命の向上に寄与する(既報)。今回、研究チームは、この正極材に新開発の活性炭素/ポリピロール・ハイブリッド負極を組み合わせることで、実際に充放電動作が可能なカリウムイオン電池を作製したとする。
(a)今回開発された電池セルの構造図、(b)活性酸素/ポリピロール負極、(c)正極材のプルシアンブルー結晶構造、(d)ポリピロールとヘキサシアノ鉄酸銅のX線回折パターン、(e)粒径20〜50nmのヘキサシアノ鉄酸銅ナノ粒子のTEM像、(f)粒径200〜400nmのポリピロール粒子のSEM像、スケールバーは2μm (Mauro Pasta et al., Nature Communications(2012) doi:10.1038/ncomms2139)
ハイブリッド負極では、還元されたポリピロール粒子の作用によって、電解質の安定限界に近い低いレベルに開回路電位が固定されるという。電荷は、表面積の大きな活性酸素の電気二重層に溜まる。負極の電位調整のため、電気化学的活性のあるリン酸二水素イオン(H2PO4−)を添加剤として用いる。
今回の電池では、5Cレートでサイクル動作させたとき、充放電効率95%を実現。50Cレートのときも同79%と報告されている。また、1000回の深放電サイクル後も容量の損失が見られないとしている。研究チームの材料科学者 Yi Cui 氏は、指先に載るほどの小さな試作品を建物大の大型電池にスケールアップすることが次の研究課題であると話す。
出力や周波数などが不安定な自然エネルギーを系統電力に接続するには、蓄電システムに一度電気を貯めて電力品質を安定化する必要がある。今回開発された電池は、リチウムイオン電池よりも低コストな大容量蓄電システムとして利用できると見られる。
(発表資料)http://bit.ly/WSoVpg
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