三菱重工、船舶エンジンCO2を3割減 「環境」で中韓に対抗 15年メド、天然ガスを燃料に :日本経済新聞
国内造船業の環境は悪化している(三菱重工業長崎造船所)
三菱重工業は2015年をメドに天然ガスを燃料にした次世代船舶用エンジンを投入する。現在主流の重油を燃料に使うエンジンに比べて燃焼効率が高く、二酸化炭素(CO2)排出量を約3割削減できる。国連機関の国際海事機関(IMO)は15年以降、船舶の排ガス規制を強化する計画で、造船業界でも自動車のように環境技術が重要になる。三菱重工は次世代エンジンで先行し、中国や韓国に押される新造船の受注拡大を狙う。
IMOはCO2や硫黄酸化物(SOx)などを対象に排出規制を強化する予定。規制達成には液化天然ガス(LNG)を燃料とするエンジンが有望とされる。国内大手が開発を急ぐ中、三菱重工が先行する形となる。
三菱重工は主力エンジンを改良しガスを高圧噴射して高効率で燃焼させるようにした。CO2排出量を3割減らせるほか、SOx排出量もほぼゼロにできる。13年後半から神戸造船所(神戸市)で実証試験を始め、排ガスの抑制や燃費などの性能を確認する。既存エンジンより割高になる見込みだが環境負荷と燃料費を低減可能。LNG輸送船や大型タンカー、コンテナ船などに搭載する。
現在主流の重油を使うエンジンでは独マングループなど欧州2社が圧倒的に強く、世界の造船大手に技術をライセンス供与している。三菱重工などはガスエンジンを搭載した大型船で先行し、円高で苦戦が目立つ韓国や中国との受注競争における強みとしたい考え。
造船業界では歴史的にC重油を燃料としてきたが、最近4年で価格がほぼ2倍に高騰した。天然ガスは環境負荷が低いほか、北米の新型ガス「シェールガス」の生産拡大で中長期的に割安な価格水準が続くとされる。
世界の造船市場は07年の新規受注が約1億7000万総トンとピークだった。11年には約5700万総トンまで減少し、12年も低迷が続いている。中国の経済成長の鈍化などを受け、13年も受注の本格回復は見込めない見通し。各社は次世代技術の開発で生き残りを図る。