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memo ∞ 「天然ガスで存在感/トルクメニスタン」 

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トルクメニスタン、天然ガスで存在感 中国、国内消費の2割輸入へ 欧印もパイプライン計画 :日本経済新聞

中国は輸出量のうち5割強を占める(アシガバートでの国際会議の展示ブース)

中国は輸出量のうち5割強を占める(アシガバートでの国際会議の展示ブース)

 トルクメニスタンが世界4位の埋蔵量を誇る天然ガスの供給国として存在感を高めている。中でも中国向けは2012年の輸出量のうち5割を超過。中国はなお購入量を増やし20年に国内消費量の2割に相当する650億立方メートルを輸入する方針で、トルクメンが重要な調達先に浮上する。旧ソ連から独立して約20年。トルクメンのエネルギー政策は中央アジアのみならず、世界の資源地図にも影響を与えそうだ。

 首都アシガバートの新たな名所は派手なネオンに彩られた世界最大の屋内観覧車。カタツムリのような外郭の中から乗客は景色を楽しめる。ほかにも国威発揚のための斬新な形の建物を次々建設。資源マネーで潤うトルクメンの象徴だ。

 背景には11年末時点で24兆立方メートルと世界4位の天然ガス埋蔵量がある。10年末の13兆立方メートルから急増した。12年の生産量は400億立方メートル程度の見通しで、「30年に年産2500億立方メートルを目指す」(同国政府)

 最大のお得意様は中国だ。中国とトルクメンをつなぐ7000キロのパイプラインは09年末に完成。中国政府は石炭などに比べて環境負荷の小さい天然ガス利用の拡大を国策に掲げる。

 中国の政府系金融機関がパイプライン設置資金を融資してカスピ海の資源を獲得。トルクメンもロシアに偏重していた輸出先を多様化しようとしていただけに双方の思惑が一致した形だ。

 10年に36億立方メートル程度だった対中輸出量は中国石油天然気集団(CNPC)グループ・中国石油国際の呂功訓・副総経理によると累計で400億立方メートル超に達した。「20年に年650億立方メートルに引き上げる」という。

 ◆対ロ輸出は縮小 08年まで主な輸出先だったロシアは落ち込みが続く。09年にはロシア向けのパイプラインで爆発事故が起きた。トルクメン政府はロシアの責任だと非難し、関係が悪化。厳しい価格交渉もあり、対ロ輸出は落ち込んだ。

 欧米やインドも熱い視線を送る。アフガニスタンを経由し、インド・パキスタンに向かうパイプライン計画「TAPI」は国営企業トルクメンガスが今年5月、インド・パキスタン企業とガス売買契約に合意。18年までの稼働を目指す。

 欧州連合(EU)はカスピ海を横断するパイプライン計画「TCP」に期待。TCPはアゼルバイジャンやトルコなどを経由する別のパイプラインに接続してEUに輸出する壮大な構想だ。

 ロシア産ガスに依存するEUは政治的摩擦が強まれば、ガス供給を武器に圧力をかけられかねない。EUはロシアへのガス依存度を減らしたい考えで、「TCPはトルクメンにとって最も安全で経済的なルート」(EUのフロール中央アジア特別代表)と秋波を送る。

 ◆中国依存にはリスクも TCPの課題はカスピ海の境界を巡る沿岸5カ国の利害関係。ロシアがパイプラインの設置に後ろ向きだ。奇策としてカスピ海を液化天然ガス(LNG)船で運ぶ案も浮上している。

 トルクメン産ガスの対中輸出増加について米エネルギー情報会社プラッツのアナリスト、ジョン・ロバーツ氏は「トルクメンの中国依存が進んでいる」と警鐘を鳴らす。

 中国は国際相場に比べてかなり割安な価格でトルクメン産ガスを買っているとされる。シェールガスの埋蔵量も豊富な中国への輸出の一極集中が進めば、将来はガスを買いたたかれる可能性もある。

 トルクメンは陸上ガス田の開発について本格的な外資参入を認めていない。リスクの高いアフガン経由のパイプラインへの外資参入を促すために「パイプライン投資と引き換えにガス田開発への参入を認めるべきだ」(欧米メジャー首脳)との案も浮上している。

(アシガバートで、花房良祐)

<MEMO>閉鎖的な体制、一部緩和の動き

 

 世界有数の豊富な天然ガスを有しながら外海に面さないトルクメニスタンの資源をどう購入するか――。欧米勢は対ロシア政策をにらみつつアタマを悩ませてきた。エネルギー政策で脱ロシアを掲げるトルクメンに注目が集まるのはこのためだ。

 トルクメンは1991年にソ連から独立。ニヤゾフ前大統領を個人崇拝する「中央アジアの北朝鮮」とも称される独裁体制が生まれた。06年に前大統領が急死すると、翌年にベルドイムハメドフ現大統領が就任し、積極外交を展開。ロシア以外への天然ガス輸出に関心を高めているほか、近年は外国企業に川下分野への投資を呼びかけるなど、閉鎖的な体制を一部緩和する姿勢も見られ始める。

 日本企業も動き出している。住友商事は来春にもアシガバートに事務所を設置する方向で調整。国営企業などに資源開発用の鋼管を納入したい考え。このほか双日と川崎重工業が肥料プラントを受注・建設している。日揮も石化プラントの受注を目指している。


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