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memo ∞ 「消費電力10分の1の調光ガラス開発/奈良先端科学技術大学院大」 

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奈良先端科学技術大学院大、消費電力10分の1の調光ガラス開発  :日本経済新聞

 ■奈良先端科学技術大学院大学 河合壯教授らは消費電力が従来の10分の1以下で済む調光ガラスを開発した。電気で刺激を与えると、次々と反応を繰り返して青色から無色にだんだんと色が変わる材料を合成して実現した。ビルの窓に応用すれば、太陽光が入ってくるのを制御して空調費用を抑える用途に使える。研究成果は米化学会誌(電子版)に掲載された。

 「ターアリーレン」という化合物を合成した。紫外線が当たると青色に、電気を流すと無色になる。横1センチメートル、縦4センチで厚さが2ミリのガラスを作製して実験したところ、電気を流すと50秒ほどで青色から無色になった。化合物の構造の一部を変えれば、無色から青への変化も電気で制御できる。

 今回の新材料は、電気を流すと次々と反応が連鎖するので、効率よく制御ができ電力消費が少なくて済む。

NAIST 国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学

NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 - プレスリリース - 人工的な光センサ...

人工的な光センサー分子の反応効率がほぼ100%に!
−動物の視覚細胞の1.5倍の感度を達成した極限の光センサー
 100倍以上の省エネも期待−

【概要】
奈良先端科学技術大学院大学(学長:磯貝 彰)物質創成科学研究科 光情報分子科学講座 河合 壯(かわいつよし)教授、中嶋琢也(なかしまたくや)准教授らは、光を吸収するとほぼ100%の効率で反応する光センサー分子の開発に成功しました。これは人間や動物などの視覚細胞の感度の約1.5倍に相当します。従来の人工センサー分子はおおむね50%程度の反応効率しか持っていませんでしたが、最近、河合教授らの研究グループは80%程度まで感度を高めることに成功し、国内外でも反応効率100%を目指して研究者間の激しい国際競争となっていました。
河合教授らは、分子構造に余計なねじれやひずみが発生しないように、反応に関わる分子を固定化する工夫を行うことで、ほぼ100%の反応効率を有する分子の開発に成功しました。今後、高感度光センサーや光記録ディスクの高効率化によるパソコンの低消費電力化などへの応用が期待できます。また、記録材料として用いる場合には従来の100倍以上の省エネルギー化が可能となります。
この成果は、総合化学速報誌としては最も権威あるAngewandte Chemie International Editionに掲載予定で、さらにホットペーパーとして論文全文のWeb公開に先立ち平成22年12月31日に概要が同誌Webにて先行公開されました。

【研究背景】
光で色が変化するフォトクロミック分子は動物の視覚細胞の光センサー分子として働いており、合成されたフォトクロミック分子は光着色型サングラス用の着色色素として視覚の保護のために用いられています。加熱によらずに光エネルギーを直接分子の構造変化に利用できることから、高速高感度の光センサーや光記録材料として注目されてきました。多くのフォトクロミック分子の中でもジアリールエテンやターアリーレンと呼ばれる分子は暗所で退色することがなく、光が当たったことを長期間記憶する記録保持性能に優れていることからDVDやブルーレイディスクなどに変わる将来のディスク型記憶媒体用の光記録材料として注目されてきました。しかし、従来のフォトクロミック分子は光を吸収した際の着色効率が50%程度にとどまっており、その感度の向上に向けて開発が進められてきました。

【今回の着想】
河合教授らは、視覚細胞における光センサー分子のレチナールがタンパク質との相互作用によって平面性の高い構造に固定化されることで安定に高効率で光を吸収し反応していることに着目。ジアリールエテン等これまでの人工のフォトクロミック分子がねじれやひずみのある多様な構造の間で揺らぎ、一定の形を取らないことが低い反応効率の原因であると考え、様々な分子構造のフォトクロミック分子について探索を行ってきました。

【主要な成果】
今回の成果では、分子の構造を平面性の高い構造に固定化するために分子内にマグネットのようにくっつきやすい役割をもつ原子(硫黄原子と窒素原子、窒素原子と水素原子)を複数導入したフォトクロミック分子を開発しました。これにより分子の構造はあたかもマグネットで連結されたように平面状態に固定化されることが明らかになりました。この結果、新たに開発されたフォトクロミック分子では反応効率(光反応量子収率)が約100%となり、極限高効率の光反応が達成されました。これは動物などの視覚細胞の1.5倍の感度に相当します。

【今後の展望】
100%の効率で反応するフォトクロミック分子が達成されたことで、記録材料として用いる場合には従来技術に対して100倍以上の省エネルギー化が可能となると期待されます。また、超高感度の光センサーの可能性も考えられます。さらに今後、LSIなど電子回路作製に利用されるレジスト(光感光性)材料やサングラス用の着色材料など光反応を利用するさまざまな応用分野でエネルギー効率や感度を大幅にアップできる可能性があり、将来の省エネ技術としても発展が期待されます。  

【研究支援】
今回の研究は、文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「フォトクロミズムの攻究とメカニカル機能の創出」(領域代表者:立教大学・入江正浩教授)の研究プロジェクトおよび奈良先端科学技術大学院大学のNAIST先端的研究連携事業の成果とされています。
 
【キーワード解説】
フォトクロミック分子:フォトクロミック分子とは異なる波長(色)の光に応答して分子構造や色が可逆に変化する分子であり、光による可逆な変色現象はフォトクロミズムと呼ばれる。フォト(光)とクローム(着色)という二つの言葉が呼び名の元になっている。サングラスなどでは紫外線を含む太陽光線が当たると色が付き、室内では自然に色が消えるフォトクロミック色素がつかわれている。顔料や染料として古くから使われているアゾ色素も、フォトクロミズムを示すものがある。

光反応量子収率:分子が光により反応する際に、消費された光子の数に対する反応した分子数の割合を光反応量子収率という。

視覚細胞の感度:人間や動物の視覚細胞にはレチナールと呼ばれる分子が含まれており、光に反応して分子構造が変わることにより光刺激を神経に伝達している。レチナールの光反応量子収率はオプシンと呼ばれるタンパク質と複合化すると約65%とされているが、レチナールだけでは30%以下であることが知られており、高い反応効率はオプシンの中でレチナールの構造が反応に有利な構造に固定化されているためであるとされている。逆に、水中にレチナールだけを溶かした場合には、その構造はねじれた構造やひずんだ構造の間で揺らいでおり、光反応量子収率が低くなる原因と考えられている。

【下図の解説】
フォトクロミック分子1分子(左)が紫外光の1光子に100%の反応効率で反応して青色の分子(右)の構造に変化する。可視光を当てると元の無色状態に戻る。

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