風力発電能力、17年に倍増 ユーラスなど、国内で9000億円投資 送電網整備に課題も :日本経済新聞
国内の風力発電の発電能力が2017年をめどに現在の2倍以上の600万キロワット規模になることが分かった。最大手のユーラスエナジーホールディングス(東京・港)やソフトバンクグループなどが北海道、東北を中心に発電所を新設する。総投資額は9千億円を超えるもよう。部品など関連産業へ波及効果が期待される。
12年12月時点で発電所建設に必要な環境影響評価(アセスメント)の手続きに入った案件や、建設中の発電所など約70カ所を集計した。新増設分の総発電能力は300万キロワット超。11年度までの風力発電の累積導入量は約250万キロワット。
12年7月に再生可能エネルギーでつくった電力を割高な価格で電力会社が買い取る制度がスタート。一般にアセス着手から発電所完成までに5年程度かかるため、足元では太陽光発電に比べ拡大ペースは鈍い。買い取り対象になるには、環境アセス手続きで一定の段階を踏まえる必要がある。現時点でアセス手続きに入っていれば、現在の買い取り価格(1キロワット時当たり約23円)が20年間適用される公算が大きい。
夜間や雨天でも発電する風力発電は太陽光より設備稼働率が高い。発電コストも太陽光発電に比べて安いため、経済産業省は風力発電の導入を促したい考え。
600万キロワットの風力発電の年間発電量は100億〜150億キロワット時程度に相当。100万キロワット級の原子力発電所2〜3基分(稼働率60%で計算)の発電量に匹敵する。
豊田通商子会社のユーラスエナジーは秋田県や岩手県で風力発電所を建設する。Jパワーも北海道や東北で風力発電所を新増設する計画だ。
陸上より強い風が安定して吹く海上の計画もある。ソフトバンクが筆頭株主のグリーンパワーインベストメント(東京・港)は、北海道の石狩湾新港内に10万キロワットの発電所を設置する方針だ。
風力発電機を製造する日立製作所や日本製鋼所など関連メーカーの受注獲得につながりそうだ。
建設費(設備、土地なども含む)は陸上の場合で発電能力1キロワット当たり30万円とされる。300万キロワット超の開発には9千億円以上が必要。一方、新増設の発電所が売電で得られる収入は現在の買い取り価格で計算すると、合計で年間1千億円以上とみられ、10年以内に投資を回収できる。
ただ、風力発電の立地先は大規模な送電網が整備されていない場所も多い。できた電力を有効に使うには送電網などインフラ整備が必要になる。再生エネの買い取り費用も増加するため、企業や家庭向けの電力料金が上がる可能性がある。