磁気浮上グラファイトの光運動制御 Optical Motion Control of Maglev Graphite
公開日: 2012/12/13
磁気浮上グラファイトの光運動制御
小林 真之研究員 [1]、阿部 二朗教授 [1,2]
http://www.chem.aoyama.ac.jp/Chem/ChemHP/phys3/top/abe.html
[1]: 青山学院大学理工学部化学・生命科学科
[2]: (独)科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業CREST
われわれは、磁気浮上したグラファイトを光で動かす新技術の開発に成功しました。
本研究成果は、2012年12月12日(米国時間)に米国化学会発行の「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー」オンライン版に掲載されました。
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ja310365k
負の磁化率を有する反磁性体は、磁石に対して反発力を生じるため、反磁性体を非常に強い磁石の上に置くことにより磁気浮上することが知られています。磁気浮上させた反磁性体は磁石との接触面を持たないため、摩擦が少なく、僅かな力で効率よく運動させることが可能であり、このような特性を利用して、超電導リニアに代表される交通機関やアクチュエータ等への応用が検討されています。
強い反磁性を示すグラファイトの磁化率は温度に依存することが知られていましたが、われわれは、磁気浮上したグラファイトに光を照射すると、グラファイトの持つ優れた光熱変換特性により光照射部位の温度が速やかに上昇して磁化率が増大することで浮上距離が減少するのに対して、光照射されなくなるとグラファイトの温度は高熱伝導特性のために速やかに室温に戻り、磁化率が元の大きさに戻り光照射前の浮上距離に戻ることを発見しました。
このようなグラファイトの性質を利用して、磁気浮上グラファイトの2次元面内方向の運動を光で自在に操作する技術の開発に成功しました。
本技術では、超電導磁石のような高価な超強力磁石ではなく、一般に市販されている安価なネオジム磁石を使用していることが特徴です。
さらに、磁気浮上したグラファイト円板に太陽光を照射することで1分間に200回転以上の高速回転を実現することにも成功しており、今後は光による物質輸送や、光アクチュエータのみならず、従来の技術には無い、環境に優しく、安全な全く新しい低コスト太陽光発電の開発が期待されます。
Optical Motion Control of Maglev Graphite
Masayuki Kobayashi [1] and Jiro Abe [1,2]
http://www.chem.aoyama.ac.jp/Chem/ChemHP/phys3/top/abe.html
[1]: Department of Chemistry, School of Science and Engineering, Aoyama Gakuin University, 5-10-1 Fuchinobe, Chuo-ku, Sagamihara, Kanagawa 252-5258, Japan
[2]: CREST, Japan Science and Technology Agency, K's Gobancho, 7 Gobancho, Chiyoda-ku, Tokyo 102-0076, Japan
Journal of American Chemical Society,
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ja310365k
[Abstract]
Graphite has been known as a typical diamagnetic material and can be levitated in the strong magnetic field. Here we show that the magnetically levitating pyrolytic graphite can be moved in the arbitrary place by simple photoirradiation. It is notable that the optical motion control system described in this paper requires only NdFeB permanent magnets and light source. The optical movement is driven by photothermally induced changes in the magnetic susceptibility of the graphite. Moreover, we demonstrate that light energy can be converted into rotational kinetic energy by means of the photothermal property. We find that the levitating graphite disk rotates at over 200 rpm under the sunlight, making it possible to develop a new class of light energy conversion system.
Optical Motion Control of Maglev Graphite - Journal of the American Chemical Society (ACS Publications)
青山学院大学阿部研究室
Real-Time Holographic Material (リアルタイム・ホログラム材料)
公開日: 2012/11/05
ホログラフィーは空間に自然な3D画像を作り出せる技術で、クレジットカードや紙幣の隅にある光る部分などで使用されています。そこでは、画像や数字が立体的に写っていますが、実際は画像や数字そのものではなく、その3次元情報が暗号化(干渉縞)されてホログラムという材料に記録されています。ホログラムに光を当てると、暗号化された物体の3D画像が浮かび上がります。これまでは、展示やアート作品に、また複写機では複製できないことを利用して、偽造防止などに使われていました。リアルタイムで暗号を記録・再生できるホログラム材料ができれば、3D画像の動画を再生できる3Dテレビの開発が実現するため、新しいホログラム材料の開発が求められていました。
本研究グループは、光を照射すると瞬時に着色し、光を遮ると速やかに無色に戻る独自に開発した高速フォトクロミック化合物を応用して、暗号をリアルタイムで記録・再生することができるホログラム材料の開発に成功しました。このホログラム材料では、物体の動きに応じて、古い暗号が消失し新しい暗号が新たにリアルタイムで記録されるため、3D映像を再生することができます。
今回開発したホログラム材料は、大面積スクリーンにすることも可能であり、今後は新しいタイプの3D映像表示システムをはじめとして、光コンピューター素子、エンターテインメントへの利用が期待されます。
教員 - 化学・生命科学科 / 青山学院大学 理工学部 青山学院大学 理工学部 化学・生命科学科教授 / 工学博士阿部 二朗Jiro Abe「新しい物性を示す機能性物質の創製を目指して」研究室:J-506 (内線 46225)
e-mail: jiro_abe@chem.aoyama.ac.jp■研究テーマ機能性分子材料の合成および物性化学■研究者情報(詳細)http://raweb1.jm.aoyama.ac.jp/aguhp/KgApp?kojinId=abcbja■研究室ホームページhttp://www.chem.aoyama.ac.jp/Chem/ChemHP/phys3/top/abe.html