RITEと東大VC、稲わらから化学品原料 来年、組み換え菌で製造 樹脂・飼料など作り分け :日本経済新聞
財団法人・地球環境産業技術研究機構(RITE)は東京大学の基金で運営するベンチャーキャピタル(VC)と共同で、稲わらなど非食用植物から電子部品用樹脂などの製造に乗り出す。事業会社を設立、帝人などと組んで来夏にも実験的な生産を始める。トウモロコシなどを原料にした樹脂製造の例はあるが、非食用植物での事業化は珍しい。原油依存を減らせ温暖化対策にも役立つ。
RITEとVCの東京大学エッジキャピタルが1000万円を折半出資し、「グリーン・アース・インスティチュート」(東京・文京、前田浩社長)を設立。千葉県木更津市のかずさアカデミアパークに用地を取得した。事業化に30億円を投じる計画。今夏に年産2千〜3千トンの設備建設に着手する。
RITEの新技術を使う。土壌中に生息する「コリネ菌」を遺伝子組み換えし、植物繊維から様々な化学品原料を作り分けられるようにした。菌は植物繊維を分解し、できた糖をもとに目的の物質を合成していく。
ある組み換え菌は電子部品や自動車部品用のフェノール樹脂の合成に使える。別の組み換え菌は生分解性樹脂の原料となる乳酸、さらに別の組み換え菌は飼料用アミノ酸のバリンなどを作れる。
菌の成長に必要なエネルギー消費は抑え、目的の物質だけを効率良く合成できる培養法を確立。植物繊維とともに培養する単純な工程で、化学品原料を連続生産できる。新設備でまず食品廃棄物を原料に、13年夏にも試験生産を始める。
新設備を使って帝人と生分解性樹脂を、住友ベークライトと電子部品素材を、出光興産とは様々な石化原料をそれぞれ量産する研究も始める。15年にも、3社と製品別に共同出資の製造子会社を設立。わらなどを調達しやすいアジアや米国で量産工場の建設を目指す。
新技術を使えばフェノール樹脂やアミノ酸など1キログラムを1ドル(約77円)以下のコストで製造できる見通し。原油価格が現在のように1バレル80ドル以上なら、原油を原料とした場合に比べコスト競争力を持てるという。
石油代替で市場拡大 非食用植物の活用、重要に :日本経済新聞
石油や天然ガスの代わりに植物から化学品原料を作る研究開発は原油価格の高騰などを受けて2000年代後半から活発化、事業化も相次いだ。市場規模は20年に1000億ドル以上と、バイオエタノールなどバイオ燃料に匹敵する規模に育つとの予測もある。
化石燃料の使用は枯渇への懸念があるほか、温暖化ガスの排出を招く。植物なら資源量は豊富だ。また、成長途中に二酸化炭素(CO2)を吸収するので温暖化ガスの排出をゼロとみなせる。
米カーギルや米ダウ・ケミカルはトウモロコシやサトウキビを使う化学品原料の生産事業を進めているが、穀物の利用は食料価格の上昇を招くとの批判は多い。
先行するバイオ燃料でも同じ問題が起きた。藻類やわらなど食用にならない植物の活用が重要になる。