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memo ∞ 「超微細インクジェットを使った高性能有機半導体薄膜の塗布技術を開発/阪大&産総研」 

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有機半導体の高性能化をもたらす塗布技術の開発に成功―スーパーインクジェットを用いて、高配向単結晶有機薄膜の形成が可能。フレキシブルデバイスの高性能化に向けて、大きく前進― — 大阪大学

2013年1月29日(火)

独立行政法人産業技術総合研究所(以下、産総研)の技術移転ベンチャーの株式会社SIJテクノロジ(本社:東京都千代田区、代表取締役:村田和広)と、国立大学法人大阪大学産業科学研究所の竹谷純一教授および岡本敏宏准教授は、有機トランジスタ※2の性能を大きく左右し、有機半導体※1薄膜の結晶性を向上させる、超微細インクジェット※3 ※4(スーパーインクジェット:SIJ)を使った高性能有機半導体薄膜の塗布技術の開発に成功しました。今後、更なる材料の探索と塗布条件の最適化を図り、大面積の有機半導体アレイなどへ応用していく予定です。

なお、1月30日〜2月1日東京ビッグサイトで行われる「nano tech2013」および「Printable Electronics 2013」に出展します。

成果のポイント

・阪大が開発した結晶性有機半導体材料と、SIJテクノロジのスーパーインクジェットを利用
・超微細インクジェットで塗布する事で、結晶の方位がそろった高品質な有機半導体結晶薄膜を高速形成
・形成された有機半導体結晶薄膜上に有機トランジスタ構造を作成
・結晶性を高めるための熱処理を行う事なく、3.8Vcm2/Vsの高移動度を実現
・開発技術は局所的に結晶方位を制御した微細塗布が可能
・特許出願済み

研究開発の背景

近年、プリンテッドエレクトロニクス※5あるいはフレキシブルエレクトロニクス※6の実現に向けて、有機半導体材料や、それを使った有機トランジスタの開発が盛んに行われています。しかしながら、有機半導体は、一般にはシリコン等の無機半導体に比べキャリア移動度が劣ると言われています。これは、有機分子の配向方向がバラバラな多結晶状態や結晶性の無いアモルファス状態である事が原因とされています。実際に、有機単結晶を用いた移動度の測定結果においては、無機半導体に匹敵するような高い移動度の報告もある事から、結晶性が高く方位のそろった有機半導体薄膜を形成する方法が求められていました。

従来、配向した有機薄膜を得る方法として、インクジェットで貧溶媒を滴下する方法が報告されていますが、溶媒の乾燥までに時間がかかること、また事前のパターニングが必要で局所的な塗布に限界があるなどの問題がありました。

開発技術

今回開発した技術は、従来の1/1000以下の超微細液滴を吐出可能な超微細インクジェット技術(スーパーインクジェット:SIJ)を用いて、有機半導体の溶液を吐出し、基板上の液滴の量を精密に制御する事で、方向のそろった単結晶の薄膜を効率よく作成することに成功しました。

結晶の大きさ・方位は、インクの出し方、塗布方向の制御等によって調節が可能であり、高速で高品位の超薄膜を形成することが可能です。

しかも、非常に限られた領域に局所的に高品位結晶を形成できる事から、高価な有機半導体材料の使用量を格段に減らす事もでき、省資源、低コスト化にも寄与します。また、得られる薄膜が非常に薄く微細な領域のため、フレキシブル基板上に形成した場合でも、割れ等の問題も生じにくく高い適合性を持つと考えられます。

本技術によって、作られた高品位の有機半導体結晶を用いてトランジスタを形成したところ、従来の真空プロセスで作られた多結晶状態の結晶を使って作成したデバイスに比べ、およそ5倍のパフォーマンスが確認されました。(図は、電荷量に対する伝導率と規格化したゲート電圧の平方に対する規格化した電流で表示しています。)

本技術の有効性と今後の予定

・本成果は、微小な領域に結晶の方位を制御して、高品位の有機半導体の薄膜を選択的に形成可能な技術です
・本成果を用いれば、高性能な有機トランジスタが効率よく作成できる事になり、液晶や、有機ELディスプレイ、電子ペーパーや、大面積センサ等への応用が期待されます
・今後、更なる材料の探索、塗布条件の最適化を図り、大面積の有機トランジスタ作成プロセスの確立を目指します

参考図

図1 有機溶剤に溶かした有機半導体溶液を、基板上に滴下し、乾燥後の状態を観察した光学顕微鏡写真。
液滴のサイズが大きく、様々な場所に結晶核が有り、多数の結晶が見られる。

図2 SIJで描画した有機半導体結晶薄膜(幅約10μm)
描画に伴い、一方向に乾燥固化するために、方位のそろった単結晶的な高品位な結晶が成長する。

図3 市販型研究開発用スーパーインクジェット装置(サブフェムトインクジェット加工装置)




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