朝日新聞デジタル:不安抑えるには? 東大、脳の働き解明 うつ治療に期待 - テック&サイエンス
脳内で不安を抑える分子モーターKIF13Aレントゲンや内視鏡などによって診断を下せるガンなどの身体的疾患に比べて、不安障害やうつなどといった精神的疾患の原因はまだ十分にわかっていません。 精神疾患の原因解明のためには「安心」「不安」などといった我々の感情に結びつく高次の脳機能がどのような分子の働きでコントロールされているかを知る必要があります。
今回、東京大学大学院医学系研究科細胞生物学・解剖学講座/分子構造・動態学講座の廣川信隆特任教授らの研究グループは、分子モータータンパク質KIF13Aが脳内でセロトニン受容体を輸送することで不安を抑制することを明らかにしました。
KIF13Aが働かないマウスの脳内ではセロトニン受容体が神経細胞表面まで輸送されません。このマウスでは不安が高まり、エサを探さずに暗いところに隠れようとする「心配性」の異常行動が観察されました。 不安の感じ方には個体差がありますが、KIF13Aの働きが弱いと不安を感じやすい性格になるのかもしれません。 また、セロトニン受容体は精神安定剤や抗うつ剤の重要な標的として知られていますが、KIF13Aもまた創薬標的分子となるかもしれません。
この研究成果は「Cell Reports」2013年2月7日オンライン版に掲載されました。
※詳細はリリース文書をご覧下さい。
リリース文書[PDF: 170KB]
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20130208.pdf
(2013/02/12掲載)
(東京大学大学院特任教授) name Hirokawa Nobutaka (写真=大西成明) 1946年 神奈川生まれ 1971年 東京大学医学部卒業 1972年 東京大学医学部助手 1979年 カリフォルニア大学医学部研究員 1980年 ワシントン大学医学部研究員 1982年 同助教授 1983年 同准教授、東京大学医学部教授 [ 受賞 ] 1985年 日本電子顕微鏡学会瀬藤賞 1987年 塚原仲晃賞 1991年 日本医師会医学賞 1995年 上原賞 1996年 朝日賞 1998年 武田医学賞 1999年 日本学士院賞、藤原賞 2003年 ヨーロッパ分子生物学機構
外国人会員 2004年 日本学士院会員