パナソニックとimec、微量の血液から遺伝子情報を全自動検査できるチップ開発 http://sustainablejapan.net/?p=3649 pic.twitter.com/HMH9yRfl
プレスリリース
全自動の小型体質診断用遺伝子検査チップを開発 | プレスリリース | ニュース | パナソニック企業情報 | Panasonic 遺伝子の個人差をわずか1時間で検出
【要旨】パナソニック株式会社は、imec[1]と共同で、数マイクロリットルの血液から、SNP[2]などの遺伝子情報の検査を、前処理工程も含め、全自動で行なえる小型の遺伝子検査チップを開発しました。このチップは微量の血液からDNA[3]を抽出・増幅し、目的のSNP判定を行う機能を一体化したものです。これにより、わずか1時間で、遺伝子検査を行うことが可能となりました。
【効果】本開発の遺伝子検査チップは、一般病院などの臨床現場で個人(患者)の体質にあわせた医薬品処方や治療法等を選ぶ「テーラメイド医療」の普及につながるものです。小型の全自動測定システムにより、短時間でSNPを判定できることから、臨床現場において、患者への薬の選択や病気の発症リスクを、医師がその場で判断できるようになると期待できます。
【特長】本開発は以下の特長を有しています。
専門機関での受託検査(結果が出るまで数日〜1週間)に比べ、前処理工程も含め、わずか1時間で検査が可能。 血液や薬液を送り出す超小型ポンプや、DNA抽出・増幅部、高精度フィルター、高感度センサなどを新規に開発し、小型ワンチップ化に成功(面積 約9平方センチ)。 微量の血液(数マイクロリットル)をチップにセットするだけで検査完了する全自動検査システム。 【内容】本開発は以下の要素技術により実現しました。
(1)導電性ポリマーアクチュエータ[4]を用いた、低電圧(1.5V)駆動で、高い圧力で血液や液体を送り出すことができる超小型(6mm角)ポンプ(通常駆動圧30気圧)
(2)高度熱分離を実現した新設計マイクロPCR[5]によるDNAの高速増幅技術(15分以下で完了)
(3)微量の血液と薬液で、短時間(約30秒)に高精度・高感度な検査ができる電気化学式のSNPセンサ
【従来例】これまで全自動の遺伝子検査装置は、大型で高価なため臨床現場への本格普及には至らず、専門の検査機関等での解析が主流でした。そのため、判定結果のフィードバックに時間がかかるという課題がありました。臨床現場からは簡単な装置で短時間に検査ができることが望まれていました。
【特許】国内 42件、海外 25件(出願中含む)
【お問い合わせ先】R&D本部 広報担当 E-mail : crdpress@ml.jp.panasonic.com
【内容の詳細説明】(1)導電性ポリマーアクチュエータを用いた超小型高圧ポンプ
シリコン基板上にポリマー薄膜を積層し、積層方向に大きく伸縮するポリマーアクチュエータを開発し、ダイヤフラム(隔壁)を移動させて送液を行うダイアフラムポンプを実現しました。このポリマーアクチュエータは強力で、最大300気圧を超える圧力を発生させることが可能で、DNAを選別する高精度フィルターへの液注入を含むマイクロ流路中での溶液移動が容易となります。しかも、電池駆動が可能な低電圧(1.5V)動作を実現しました。
(2)高速PCR技術
遺伝子診断を行うには、DNA上でSNPを含む領域を切り出し、一定の量まで増やす必要があり、一般にはPCRという手法を用いてDNAの増幅が行われます。従来のPCRではDNAの増幅に2時間程度の時間がかかるという課題がありました。本開発では熱伝導性の良いシリコン基板を用い、周囲からの熱分離を最適化し、昇降温の温度追従性を高めつつ、少ない液量でPCR反応が起こる構成とすることで、DNAの増幅にかかる時間を約15分以下と大幅に短縮しました。
(3)高精度、高感度な電気化学式センサ
従来、電気的にSNPを識別するには、あらかじめ識別用の人工DNAを電極上に固定させた、高価で特殊な電極が必要でした。本技術は、識別用の人工DNAを電極に固定させることなく、微量(約0.5マイクロリットル)の薬液中に溶解させた状態で、電気的にSNPの識別を可能としました。
図1 開発した遺伝子検査チップの構成図
上段:遺伝子チップを構成するキーコンポーネント
下段:遺伝子チップ構成図および処理フロー
図2 開発した遺伝子検査チップの外観写真
図3 開発した遺伝子検査システム試作機の外観写真
(矢印方向に遺伝子チップを装着)