科学技術の進歩で、数年前には信じられすらしなかった「シェール革命」がここ2〜3年で現実のものとなり、昨年より米国国家戦略の中心に据えられている。3年先を誰も予測出来なかったこの分野では、今課題である「バイオマス」「無尽蔵な低品位石炭の火力発電使用」「メタンハイドレート」「小型地熱発電/水力発電」が花開く可能性がある。そうなれば、日本でも”資源大国”の道を国家戦略の中心に据えることが出来る様になる。
石炭火力、欧州で増加 割安の米国産流入、シェール革命で余剰に :日本経済新聞
RWEが昨年夏に稼働させた石炭火力発電所(独ケルン近郊)
【ロンドン=松崎雄典】天然ガスの価格が高止まりする欧州で、安価な石炭の消費が増えている。発電燃料に占める石炭の比率が英国で14年ぶりの高さとなり、ドイツでも電力大手RWEが7割まで高めた。「シェール革命」で余剰になった米国産の石炭が流入しているためだ。石炭火力は二酸化炭素(CO2)の排出量が多いため、EU(欧州連合)が掲げる削減目標に影響しかねない。
英国では2012年7〜9月の発電に占める石炭火力の比率が、前年同期に比べ12.5ポイント高い35.4%となった。14年ぶりの高水準だ。これまで最も利用が多かった天然ガス(28.2%)を上回った。
ドイツでは、RWEの12年1〜9月の発電は72%が石炭火力となり、前年同期に比べ6ポイント高まった。
RWEは12年夏、「褐炭」と呼ぶ低品質の石炭を燃料とする発電所を西部ケルン近郊で稼働させるなど、石炭火力の建設案件が多い。
欧州諸国は再生可能エネルギーの普及を急いでいるが、全体の発電量はまだ小さい。英国では洋上風力の発電量が年率5割で伸びているものの、発電全体に占める比率は1割強。依然として化石燃料に頼らざるを得ない。
化石燃料のなかでも石炭の比率が高まる最大の原因は、天然ガスの価格が高止まりしていることにある。
欧州諸国がロシアやノルウェーからパイプラインや液化天然ガス(LNG)の形で輸入する天然ガスは、価格が原油に連動する契約。ガス火力発電は「ほとんど利益がでない」(独電力大手イーオンのヨハネス・ティッセン最高経営責任者=CEO)のが実情だ。
一方で、欧州の石炭価格は指標となる北西部の価格で、1トン80ドルと安い。ドイツ銀行のエコノミストは「160ドル以上になるまでガスに比べ割安だ」と分析する。
石炭の供給源は米国。頁岩(けつがん)から採掘するシェールガスやシェールオイルの生産が急増し、発電に使う一般炭が余剰になった。欧州の米国からの一般炭の輸入量は12年7〜9月に925万米トンと、2年前の4倍超となった。英国やドイツ、イタリア、オランダが輸入を増やしている。
国際エネルギー機関(IEA)は、欧州の石炭消費量は13年にピークになると予想。その後は、再生可能エネルギーの普及や、老朽化した石炭火力発電所の閉鎖で、減少に向かうとしている。