最近の商社の動きは、嘗てのオイルショック時当時の動きと同じように、国際社会を見極めた動きになっている。原発を諦めている訳ではないはずだが、ちゃんと時代を読んでの行動をいち早く起こしている。政治も官僚も頼りにならず、経済界のお偉方も頭の切り替えが表面上できない。(自分の企業内では誰よりも早く、商社より早く、世の動きを読んで動いている)今後ともに大いに期待したい。海外でのA&Mは円高対策ともなり、国家的にも有効!
米ファンドなどと5400億円 対日輸出めざす
伊藤忠商事は米投資ファンドなどと組み、米石油・ガス会社サムソン・インベストメント(オクラホマ州)を買収する。買収総額は70億ドル(約5400億円)規模。米国内で「シェールガス」と呼ばれる新型天然ガスの豊富な権益を持つサムソンを買収し、2015年以降に液化天然ガス(LNG)として日本などへの輸出を目指す。原子力発電所の再稼働にメドが立たず、代替の火力発電所向けにLNG需要が急拡大する日本にとって安定調達につながりそうだ。
日本の商社やプラント会社は北米でシェールガスの権益獲得に力を入れてきたが、今回の買収は当初からLNGの対日輸出を視野に入れるのが特徴。日本政府は米政府に対し、民間企業の対日輸出を許可するよう要請している。安定確保と価格の上昇抑制に向けて官民の足並みがそろう。
サムソンにはコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)グループが60%前後、伊藤忠が25%、残りを他の投資ファンドや一般株主が出資する。LBO(借り入れで資金量を増やした買収)の手法でサムソンのオーナー企業から保有全株式を取得する。年内にも払い込みを終える計画だ。
サムソンは米国内にシェールガスを中心に4000本以上の天然ガスの井戸を持ち、生産販売量で米19位。売上高は16億ドル(約1200億円)だが、未開発の油田やガス田を数多く保有。石油を含む生産を現在の日量10万バレルから10年後に同27万バレルに拡張する計画を進めており、米有数の規模に達する見通しだ。
伊藤忠は買収で原油とガスの持ち分権益を現状の日量3万4000バレルから15年までに同7万バレル以上に引き上げる計画。当面は採掘したシェールガスを北米向けに販売するが、将来は日本を含むアジア向け輸出を目指す。米国では15年にもシェールガスを液化するLNG基地を稼働させる計画が進んでおり、伊藤忠は活用を検討する。
日本は世界最大のLNG輸入国。震災後の需要増で、11年度のLNG輸入量は8000万トンと前年度比14%増える見通し。日本向けのスポット(随時契約)価格は震災前に比べ大きく値上がりしている。インドネシアやカタール、ロシアなどに加え米国に調達先を広げることで価格上昇を抑える効果を期待できる。
世界的な株安が長期化し、投資ファンドは潤沢なリスクマネーを資源分野に振り向け始めている。共同投資が広がれば日本企業にとって大型買収に道が開ける一方、権益獲得競争が一段と過熱する恐れもありそうだ。
天然ガスをパイプラインで結べない遠隔地に運ぶには、セ氏マイナス162度に冷却した液化天然ガス(LNG)の状態にする必要がある。日本は2011年度に8000万トンを消費する世界最大の輸入国。日本エネルギー経済研究所によると、世界のLNG需要は09年で1億8200万トンだったが、35年には4億5400万トンと2.5倍に急増する見通しだ。
世界的に原発依存見直し機運が高まる中、ほかの化石燃料より相対的に環境負荷が低く、埋蔵量が豊富な天然ガスの需要が伸びている。今後は経済成長の旺盛な中国やインドの需要が増える見込み。一方でシェールガス生産が増える米国はLNG輸出が大幅に増えるとみられている。