電力は発電できてもそれに見合うだけ使用しなければ捨てねばならず、それがもったいないので蓄電することとなります。また、電力の安定性:良質の電力が必要であり、風力発電では強弱が出て使いずらい(=廃棄に繋がる)ものであるとされています。東北電力が風力発電の申し込みを1/20程の確率で抽選で事業者を決めている事情はこの辺りにあります。買い上げ制度が確立できて、事業者が投資意欲を持ち発電を希望しても、安定的な電力供給の為の技術的課題がボトルネックとなっていきそうです。言い訳としても使っているようでもあります。この当りを解決していく為には、欧州の様な広域での電力の売り買いと平準化が不可欠であるのか、それとも日本国内でも、ある程度融通可能であり、平準化が見込めるのかもしれません。先だっても、確か中国電力が九州電力より電力を借りたとき、限度数十万キロワットのところ、数百万キロワット実行できたとの報道があったと記憶、電力会社の機器の性能は不明でありますが、相当の必要以上の安全係数となっていて、今までのコスト削減効率アップの努力をしなくても良い体質が出来ているのではないかと思われます。先ずは電力会社間の電力やり取りでの平準化、そして「蓄電装置」による平準化、、、この蓄電の最大のものが、文字通りの「水の池」なのです。コスト的には相当に高くつく蓄電ですが、捨ててしまわねばならない過剰電力を使用しての蓄電が出来ます。また、大容量のものとして、マグネシウムや水素、リチウムイオンの集積、今後もいろいろ出てくると思われます。揚水発電のコストは、32〜33円とされていますが、6〜8円の発電で捨てるものを差し引けば多少軽減します。稼働率も高めれれば、更に効率アップします。現在の太陽光発電クラスのコストではないでしょうか?関西電力の今夏の電力10%不足とのデータでは、この揚水発電部分は勘定外の模様です。昨年9月頃政府は来夏の電力は昨年と同じ使用量であれば4%は余裕あるとしていました。突発事故を含めて7〜8%余裕が必要とのことであり、節電/省電あるのみです。また、ここへ来て、急激に地産地消の水力風力地熱太陽光発電の具体的な動きが活発になって来ています。少々高くついても、海外へ燃料代を支払うことが少なくなれば、国内経済にも貢献できます。
国内の原子力発電所が次々と停止し、電力消費のピークを乗り切る工夫が焦点になってきた。火力のほかに水力発電にも期待がかかり、なかでも巨大な蓄電池として働く揚水型水力発電がにわかに脚光を浴びている。どんな仕組みで動くのか。国内最大規模の関西電力・奥多々良木(おくたたらぎ)発電所(兵庫県朝来市)を訪ね、揚水発電の長所と弱点を探った。
姫路から鉄道で約100分の新井(にい)駅まで北上し、さらに車で20分ほど山あいに入る。兵庫県の中央部、但馬地方に奥多々良木発電所はあった。
揚水発電所は標高差がある上の湖(上池)と下の湖(下池)を結ぶ水路に水車を設ける。電力需要が少ない夜の時間帯に、近くの発電所の電気を使って下池から水をくみ上げて上池に蓄えておく。昼に急な需要があれば、上池にためた水を下池に流して発電する。自然を生かした巨大な蓄電池といえる。
奥多々良木発電所は地下で6つの水車が発電機として働き、発電の合計最大出力は193万2000キロワット。世界でも3番目に相当する規模で、原発1.5基分、ふつうの水力発電所で国内最大の奥只見(福島県、56万キロワット)の約3.5倍の出力になる。
大都市を抱える電力会社は、昼間に工場やオフィスでの電力需要が膨らんでピークを迎える。ピーク時に備えるために発電所を増やすと、夜間に電力が余ってしまう。そこで電力会社は夜間の余剰電力で昼間のピーク時向けの電力を蓄える「負荷の平準化」に取り組んでいる。揚水発電は平準化に向けた重要な手法だ。
揚水発電の長所の一つは、電力需要が急に増えたときに素早く電気を送れる高速応答性だ。奥多々良木発電所では、本部から運転指令があるとわずか6分で6台すべての発電機に水が流れ込む。毎秒100トンの水が水車を回し、発電機の近くはごう音に包まれる。約4キロ離れた上下の池を行き来する水量は最大1700万トン。同発電所の田口善康所長は「フル出力で最長8時間まで発電できる。これほど発電時間が長いのはここだけ」と胸を張る。
奥多々良木の上池は瀬戸内海に注ぐ市川の水源地で標高600メートル。下池は日本海に注ぐ円山川支流多々良木川の水源地で同200メートルだ。分水嶺(ぶんすいれい)をまたいだ揚水発電所は日本で初めてだった。空撮写真から高低差がある候補地を探し当てたという。
水力発電所は、大河川をふさぐ難工事の印象がある。揚水発電所は中小河川であっても、まとまった水量と高低差があればいい。出力の割にはダムもダム湖も規模が小さくてすむ。
さらに、奥多々良木の地盤は花こう岩質で安定しており、ダムへの土砂の流入が少ない。満々とたたえられたきれいな水がリサイクルされている。田口所長は「機器のトラブルが起きたことはなく、悪天候の影響もない。きわめて順調に稼働している」とこなれた技術であることを強調する。
ただし、水のくみ上げ時のエネルギー効率は約70%。発電する電力の約1.4倍の電力がくみ上げに必要な計算で、多くの電力を「水の運搬に捨てている」状態だ。しかも、くみ上げ速度は発電時の7〜9割。蓄えたすべての水を放水してしまうと、一晩ではくみ上げられない恐れもあり、水量を自在に制御することは難しい。水量を柔軟に制御するため、奥多々良木では「可変速揚水発電」という最新技術の導入が進められている。2014年度以降の完成を目指している。
奥多々良木で作った電気は、各地の変電所を通じ京阪神方面に送られている。逆にくみ上げの際には若狭湾に面する原発から電気の供給を受けてきた。20日には関電管内の原発で最後まで運転していた高浜3号機が発電を停止。今後は夜にも火力発電を動かし、くみ上げの電力を賄う。発電とくみ上げのバランスをとるため、今まで以上に微妙な需給調整が求められる。
揚水発電に詳しい早稲田大学の松方正彦教授は「発電設備をいますぐに増やすことはできない。真夏のピーク需要に対応するため、節電とともに揚水発電は不可欠だ。原発の運転再開がなければ、その重要度はさらに高まるだろう」と話している。
(池辺豊)
揚水発電所と太陽光 抜粋
揚水発電所の発電原価について
電力中央研究所の丸山真弘氏が1997年3月の公益事業研究に出された「最近の電力卸供給入札について」と言う論文にはモデル電源ごとの発電原価の 上限価格が載っている。この中にピーク対応の電源としてあげられているのが揚水発電で、東京電力が試算したと見られる数字が掲載されている。
<2000年運転開始・利用率10 パーセント、今後10年に運転開始する揚水式水力の平均的モデルとされているものの発電原価は33.4円>
となっている。また、関西電力は
<1999年運転開始・利用率70パーセントの火力発電所の加重平均をベース電源として挙げていてこれから換算したピーク対応の電源コストを 31.96円>としている。
と言う事は、今回の小丸川揚水の設備利用率をこれまで運転されている天山・大平のふたつと同等と考えると一番高い年でも3%」以下であり、利用率 10%の3分の1以下である。つまり、単純計算で3倍以上で発電原価は1kWhは 100円を超えるものとなるのだ。
上記の電力企業のHPのファイル http://www1.kyuden.co.jp/effort_water_kansen_kansen0 には電源のベストミックスを挙げているが、これに関しては次のファイル http://trust.watsystems.net/mirai-s.html をご覧いただければ別の方策もあるということがお分かりになると思う。ここにもあげてあるが、分散型電源それも太陽光発電の系統にこえる価値を高評価して いる人もいる。
元・大阪ガスの研究所の理事だった山藤泰氏、が飯田哲也氏主催の環境政策研究所・ISEPのメルマガに投稿されたものです。
太陽電池の高い経済性
関西学院大学大学院総合政策研究科 客員教授/ISEP理事 山藤 泰
ロッキーマウンテン研 究所を率いるエモリー・ロビンスが、彼の編著である 「Small is Profitable」という質量ともに大きな著作で、省エネルギーやデマンドサイド・マネジメントも含めた分散型エネルギー源には、207の経済的、社 会的メリットがあると主張している。その中で、一般に高い高いと言われている太陽電池が、これを系統の一部に組み込んで経済計算すると、非常な経済性を発 揮するという論を、具体例を示しながら説明しているので、若干紹介してみたい。
太陽電池は、日中の ピーク時に発電するので、電力会社の高いピーク対応発電設備の容量を引き下げることができるというメリットは当然入っている。しかし、この外に、これが系 統に繋がっている場合、発電所からこの太陽電池設備までの送配電システムの負荷がその容量分だけ下がるために、その間の送電ロスを抑制できる。もしこの系 統の負荷が容量一杯に近くなっているとすれば、容量を増やすための設備投資を削減する、あるいは、繰り延べすることができ、電力会社はその資本コストを引 き下げることができる。また、系統の電流が下がるために、変圧器の温度が下がり、それだけ変圧器の効率が上がることになり、回避できる電力損失の量はさら に大きくなるとする。発電所からこの太陽電池までの距離が離れていればいるほど、この損失削減効果は大きくなる。
また、面白い指摘もしている。太陽 電池はインバーターを経由して系統に接続されている。このインバーターに、系統に流れている無効電力を打ち消すような作動をさせることができるそうだ。無 効電力を供給しても、電気メーターは回らないために、発電費用はかかるのに料金として請求できない電力会社は、無効電力の比率を下げるよう努力し、投資し ているが、インバーターによる無効電力削減が普及すれば、この投資を抑制することができるし、収入増加要因にもなる。
このようなメリットには、電力会社 の収益性を高める効果につながるものが多く、太陽光発電の普及に電力会社が補助金を出してもいいのではないかと思うようになっている。