旭化成、石化副産物からゴム原料 低燃費タイヤ向け 安定確保へ50〜100億円投資 :日本経済新聞
旭化成は石油化学コンビナートの生産過程で発生する副産物を活用し、低燃費タイヤ用の合成ゴムや家電用樹脂向けの原料を生産する技術を開発した。2014年度に量産設備を建設する。投資額は50億〜100億円前後になるもよう。同原料は「ブタジエン」と呼ぶ化学品で世界的に品薄感が高まっている。新技術をいち早く実用化して原料を安定確保、増加する低燃費タイヤ向けの需要に対応する。
量産設備は主力拠点の水島製造所(岡山県倉敷市)に建設する。年産能力は数万トンになる計画。生産したブタジエンは自社で使うが、将来は外販も視野に入れ、海外で年産10万〜20万トン規模の設備建設を検討する。
水島製造所では石化製品の基礎原料のナフサ(粗製ガソリン)を熱分解し、ブタジエンやアクリル系の樹脂原料などを生産している。最終的に出てくる化学品の一種「ブテン」は主に燃料に使われるが、これを酸素と反応させて再びブタジエンを低コストで抽出する技術を確立した。
ブタジエンは低燃費タイヤ用の高機能合成ゴム(S―SBR)や、液晶テレビのボディーなどに使うABS樹脂の原料となる。タイヤ用を中心に中長期的に需要が拡大する見通しだが、現在はナフサからしか生産できない。11年の国内生産量は約93万3800トン。
世界の化学業界ではナフサより割安な天然ガスから各種の石化製品を作る動きが広がっているため、ブタジエンの品薄感が高まる見通しだ。2月末のアジア価格も1トン当たり4000ドル弱と昨年夏の最高値に迫っている。合成ゴムや合成樹脂メーカーはブタジエンをどう確保するかが大きな経営課題となっている。
同業他社もブテンや他の化学品からブタジエンを抽出する技術を研究しているが、コスト面などで実用化が難しかった。 旭化成は低燃費タイヤ用の高機能合成ゴムでJSRに次ぐ世界シェア2位。13年にはシンガポールで初の海外工場を建設する。こうした製品の原料となるブタジエンを自社技術で安定的に確保し、一段の事業拡大を目指す考えだ。
ブタジエンの低コスト生産技術を世界に先駆けて実用化する(水島製造所)