金子勝 @masaru_kaneko
企業の方が省エネで着実に動く。キヤノン本社がエネルギー使用量25%削減。 goo.gl/yt1FX 東レエンジニアイリングが消費電力量予測した工場空調制御で3割削減。 goo.gl/FRdqT 家庭向は燃料費を調整費で吸収できる電力会社は努力なし。
東電17%値上げを乗り切る省エネ対策:日経ビジネスオンラインコストかけずに使用量を最大5割削減
今年4月に予定している東京電力の値上げに企業はどう対応すべきか。日経BPクリーンテック研究所が2月24日に開いたセミナー「電力料金17%値上げはこう乗り切る」に電力や省エネの専門家8人が集まり、値上げの影響や対応策について話した。
SMBC日興証券金融市場調査部エコノミストの宮前耕也氏は、原発がすべて停止して火力発電にシフトすると、化石燃料の輸入が2兆円増えるという試算結果を紹介。このうち、東電の輸入増は約6900億円になる。東電が平均17%の値上げを実施した場合、産業界の負担は約4000億円に上り、上場企業(電力を除く)の経常利益を1.8%程度押し下げるという。東電以外の電力会社が値上げに追随すれば、影響はさらに拡大する。
アビームコンサルティング社会基盤・サービス統括事業部エネルギー担当シニアマネージャーの山本英夫氏は、東電の値上げに加え、燃料費調整単価(燃料価格の変動に応じて毎月調整する)が震災以降、1キロワット時当たり約2円も上昇している影響も見逃せないと指摘した。
ピークカットもさることながら、エネルギー消費そのものを減らすことが、企業にとってますます重要になっている。
運用改善だけで25%のエネルギー使用量削減「できることから省エネに取り組んでみたら“宝の山”があった」と熱く語るのは、キヤノンマーケティングジャパン総務部品川総務課の斉藤金弥課長だ。同社の本社オフィスで消費する電気や冷水などのエネルギーは、1平方メートル当たり年間1099メガジュール(1メガジュールは約0.2778キロワット時に相当)と、同規模のオフィスビルの半分に収まっている。
JR品川駅前に建つ本社ビル、キヤノンSタワーは2003年に竣工したが、標準的なビルに比べて1割以上の省エネ設計になっていた。にもかかわらず、2008年から着手した運用改善だけでエネルギーの年間使用量を約25%削減。さらに、昨年導入したエネルギーの「見える化」システムの効果を加えると、竣工直後の2004年度の年間11万5748ギガジュールから2011年度の6万5318ギガジュールに約44%削減した。何も対策を打たなかった場合に比べ、累計で約2億3000万円のコストを削減したことになる(メガジュール当たり約1.62円で換算)。
大きな設備投資をせず、設備の運用改善を中心にこれだけの効果を上げた例はめずらしい。
具体的な対策は、照明の間引きや空調の温度調節、機器類のスイッチオフ、エネルギー使用量の見える化による社員の意識改革といった、省エネの基本を実行しているだけだが、その徹底ぶりがすごい。
気づいたら、どんな小さなことでも実行する例えば照明の間引き。廊下やエレベータホールは、保安灯や警備灯を残しすべて消灯している。トイレの照明まで間引きしているのは、女性社員からの提案だそうだ。昼休みに加え、定時以降もオフィスの照明を1時間おきに有無を言わさず一斉消灯する。外部の照明も、日の出日の入りの時間に合わせて点灯時間を短縮した。
キヤノンマーケティングジャパン総務部品川総務課の斉藤金弥課長
廊下やエレベーターホールの空調停止は、斉藤課長がとくに勧める方法だ。当初は「廊下が寒い」といった苦情があったそうだが、だんだん社員は慣れてくる。むしろ執務空間が相対的に夏は涼しく、冬は暖かく感じられるので、空調の運転を控えめにしても受け入れられやすいのだそうだ。空調ではほかに、オフィスフロアの両端に固まっている会議室をすべて手動でオンオフする設定に切り替えた。このスペースには役員室もあったが、役員も協力的だったという。
「どんどん現場に行って温度を測り、記録して、一覧表にする。気づいたことは、どんな小さなことでも愚直に実行することが大切。エネルギーをどれだけ消費しているのかをわかりやすく伝えれば、社員は協力してくれる」と、斉藤課長は省エネ担当者の心構えを語った。
【節電・省エネニュース】東レエンジ、消費電力量予測し空調制御 :日刊工業新聞
東レエンジニアリング(東京都中央区、03・3241・1541)は工場向けエネルギー管理システム「エコプラントEMS」を29日に発売する。消費電力量の監視のほか、過去の消費電力量を基にして天候や温度といった気象情報、工場の生産計画などを加味し、消費電力量を予測する。予測を反映して空調の温度・運転時間を自動制御する。予測や実績の可視化により、省エネ化を図れる。東レの開発拠点の瀬田工場(大津市)に導入後、蓄熱空調の消費電力量を3割削減に成功しており、工場全体で年間1―2割の削減を見込む。価格は約4000万円から。初年度5セット以上の販売を目指す。