NEC、ICカードに内蔵可能な超薄型有機ラジカル電池を開発。回路基板と一体化して厚さ0.3mm実現 (発表資料)nec.to/vZFbFZpic.twitter.com/lTRq7C4o
NECは、薄くて曲げられるなどの特長を有する二次電池「有機ラジカル電池」(注1)において、ICカード(規格厚0.76mm)に内蔵可能な厚さ0.3mmの超薄型電池を開発しました。
有機ラジカル電池は、薄型・柔軟性・高出力性・高速充電が可能など、リチウムイオン電池をはじめとする他の二次電池にはない特長を活かし、ICカードの高機能化や電子ペーパーなどへの適用が期待されています。しかしながら、従来の薄型化は0.7mmが限界であり、0.76mmの規格厚を有するICカードへの適用は困難でした。
今回、印刷技術を用いて回路基板と電池を一体化することで、従来比1/2以下となる厚さ0.3mmを実現しました。これにより、大きな電力を必要とする画面表示機能や、通信機能、高度な暗号化処理機能をICカードに搭載することが可能となるなど、幅広い用途への適用を実現しました。
開発した電池の特長は以下のとおりです。
電池を包み込む外装材として、回路基板にも利用可能な厚さ0.05mmのポリマーフィルムを使用。印刷技術により負極を回路基板上に直接形成すると共に、負極の上にセパレータ(絶縁体)、ラジカルポリマー正極などを積層して作製することで、厚さ0.3mmを実現。なお、従来の電池では、外装材として利用していたアルミラミネートの厚みだけで0.2mmを要していた。
また、回路基板上には小型電子部品も実装可能であり、電池に加えてアンテナ、ICを実装した回路基板を用いることで、電池を内蔵した規格サイズのICカードが実現可能。
高出力性と充放電の繰り返し耐性を両立し、高い実用性を実証
3cm角、厚さ0.3mm、電池容量3mAhの試作品において、体積あたりの出力密度5kW/L(注2)の高出力性を確認。試作品を利用することで、1回の充電により表示画面の更新2000回、連続フラッシュ発光360回、位置情報送信35回などが可能。
また、充放電サイクル試験では、携帯電話用リチウムイオン電池と同等の性能である、500回の充放電で初期容量比75%の容量の維持を確認し、高い実用性を実証。
NECは、有機ラジカル電池の実用化・適用領域の拡大に向けて、引き続き研究開発を強化してまいります。
以上
(注1)2001年にNECが提案した、プラスチックの一種である有機ラジカル化合物を電極活物質に用いた電池。有機ラジカル化合物と炭素繊維からなる複合正極に電解液を浸透させることで、ゲル状のフレキシブルな電極を実現している。ラジカル部位の酸化還元反応により充放電を行う。高出力性(一度に大きな電流を放電可能)という特長を持つ。なお、有機ラジカル電池の研究開発の成果の一部は、2006年6月〜2011年3月に行った経済産業省・NEDOのプロジェクト「先端機能発現型新構造繊維部材基盤技術の開発」(高性能、高機能電池用部材の開発)」によるもの。
(注2)kW/Lは、電池の体積あたり出力可能な電力。
薄さわずか0.3mmで紙のように曲がり、高速充電が可能な「有機ラジカル電池」 - GIGAZINE
今回のこの有機ラジカル電池は印刷技術を用いて回路基板と電池を一体化することで、従来比1/2以下となる0.3mmの薄さを実現しています。従来の電池では外装材として利用していたアルミラミネートの厚みだけで0.2mmを要していたのですが、今回は回路基板にも利用可能な厚さ0.05mmのポリマーフィルムを使用し、印刷技術により負極を回路基板上に直接形成、負極の上にセパレータ(絶縁体)、ラジカルポリマー正極などを積層して作製することで、0.3mmの薄さを実現しています。
また、回路基板上には小型電子部品も実装可能であり、電池に加えてアンテナ、ICを実装した回路基板を用いることで、電池を内蔵した規格サイズのICカードの作成も実現可能となっています。
どれぐらいの実用レベルに現在達しているかというと、充放電サイクル試験では、携帯電話用リチウムイオン電池と同等の性能である、500回の充放電で初期容量比75%の容量の維持を確認し、高い実用性を実証済み。さらに3cm角・厚さ0.3mm・電池容量3mAhの試作品において、体積あたりの出力密度5kW/Lの高出力性を確認済みで、試作品を利用することで、1回の充電により表示画面の更新2000回、連続フラッシュ発光360回、位置情報送信35回などが可能となっています。
そもそも有機ラジカル電池とは、2001年にNECが提案した、プラスチックの一種である有機ラジカル化合物を電極活物質に用いた電池のこと。有機ラジカル化合物と炭素繊維からなる複合正極に電解液を浸透させることで、ゲル状のフレキシブルな電極を実現しており、ラジカル部位の酸化還元反応により充放電を行うというもの。高出力性(一度に大きな電流を放電可能)だけでなく、1分以下での短時間充電も可能であるため、ICカードへの内蔵や軽くて薄い電子ペーパーだけでなく、人や動物に装着できる小型のアクティブ型RFIDタグとしても利用可能であり、流通におけるリアルタイムな製品トレースや、人や動物のリアルタイムな位置情報の検知なども可能になる、というわけです。