レアアース使わぬモーター 代替技術の開発急ぐ :日本経済新聞
中国によるレアアース(希土類)の輸出制限を受け、日本は官民を挙げてレアアース使用の代替・削減技術やリサイクルなどの研究開発を進めている。中国の輸出制限をめぐる世界貿易機関(WTO)への提訴は結論が下るまでに1〜2年かかる可能性がある。また輸出制限が撤廃されても資源枯渇の懸念は残るため、技術開発は喫緊の課題だ。
「レアアースをできるだけ使わない技術開発に対し、国としてバックアップをさらに進めないといけない」――。枝野幸男経済産業相は2月18日、次世代自動車など向けのレアアースを使ったモーター用磁石を生産するTDK成田工場(千葉県成田市)を視察。終了後、記者団に対して国の支援拡大を明言した。
経産省は来年度予算案で20億円を投じ、10年間の予定でレアアースを使わない自動車向けモーターを開発するための官民共同のプロジェクトを立ち上げる。昨年10月には米国や欧州連合(EU)と共同でレアアース使用削減などの研究開発動向を議論する初のワークショップを開催。今月28日に都内で2回目の会合を開く予定だ。
民間の動きも加速している。三菱電機は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で、レアアースを使わない電磁石の原理を応用した車載用モーターを開発。TDKはジスプロシウムの使用をゼロにできる永久磁石を開発した。日本電産もレアアースを使わない次世代モーターを量産し、2013年にも国内外の自動車メーカーに供給する計画を明らかにしている。
エコ車、脱レアアース 三菱電機がモーター開発 TDKは磁石 :日本経済新聞
三菱電機など大手電機・電子部品各社が電気自動車などに使う次世代モーターの開発で脱レアアース(希土類)を加速する。三菱電機はレアアースの使用を全廃したモーターを開発したほか、TDKは入手困難なレアアースのジスプロシウムを使わない駆動モーター用磁石の実用化にメドをつけた。レアアースは世界生産の9割を占める中国が輸出を制限。安定調達が難しくなっており、代替技術の確立を急ぐ。
電気自動車やハイブリッド車の駆動源となるモーターには強力な磁石が必要。現時点で最も強力な永久磁石は、鉄にネオジムやジスプロシウムなどのレアアースを混ぜてつくっている。
三菱電機は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で、レアアースを使わない電磁石の原理を応用した車載用モーターを開発した。酸化鉄などの外周にコイルを巻き、電気を流して強い磁力を発生させ駆動力に変換する。加速時のエネルギー効率は従来製品に劣るが、速度が安定しているときは同等の性能が出る。
TDKはジスプロシウムの使用をゼロにできる永久磁石を開発した。材料の分子をより細かく均一に加工することで同等の磁力を保つ。2014年以降に車載用モーターに組み込む磁石として実用化を目指す。東芝もジスプロシウムを使わない磁石の開発を進めている。豪州や米国に豊富な埋蔵量があるサマリウムを主体にする。
民間の動きを官も後押しする。経済産業省は窒化鉄など入手が容易な素材で磁力や耐熱性を備えた磁石を開発し、次世代電気自動車などのモーターに組み込めるようにする。技術研究組合を設立し、10年間の予定で研究開発に取り組む。自動車や磁石メーカーのほか、大学や公的研究機関に参加を呼びかける。
(参照)
http://www.meti.go.jp/press/2011/02/20120208003/20120208003-3.pdf
平成23年度「レアアース・レアメタル使用量削減・利用部品代替支援事業(一次公募)」の採択案件 一覧表 49例