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メモ「石井 彰/天然ガスが恒久的に原発を代替できる」

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今知りたいことが上手く表現されていますのでコピペします!

昨日でいよいよ稼働の原発は一基になりました。政府はなんとか稼働しようと動いていますが、誰がどう判断しても「時期尚早」としか言い様が無く、無理をすれば、これまでの政治の賛否に関わらず、完全に世論を敵に回してしまうでしょう。むしろ、そこから来る混乱を案じます。

下記の文章は、今知りたい状況が判り易く解説されていますが、ベース電源確保の必要性から来る「天然ガス火力発電優位」は理解できるものの、再生エネルギー関連の超スピードの技術開発への考慮が決定的に不足している様に感じます。

「特集「エネルギー、日本の選択」」

天然ガスが恒久的に原発を代替できるこれだけの理由:日経ビジネスオンライン

ホルムズ海峡への依存はゼロに近づく

 2カ月以内に日本のすべての原子力発電所が稼働停止する可能性が非常に高くなってきた。

 この事態に、「原発が3基しか動いていない状況で何とか厳冬期を乗り切ったので、このままでも脱原発は十分可能だ」という楽観論が、一部で声高に言われるようにもなっている。

 しかし、夏の電力ピーク需要は冬場よりずっと高く、このままでは夏場に電力不足で工場などの操業に大きな障害が生じる可能性は高い。しかも原発代替の突発的な火力発電所フル稼働で、日本の発電コストは大きく上昇し、これが今後電力料金の大幅値上げとなってツケが近いうちに国民全体に回ってくることになる。

 3.11前は全電源の約3割であった天然ガス・LNG(液化天然ガス)発電は、現時点で日本の全電源の約4割、東京電力や中部電力管内では5割前後にまで急上昇している。自家発電の急遽のフル活用も同様だ。

原発停止による発電コスト上昇は一時的 

 ここで誤解していけないのは、この大幅コストアップは元来、原発のコストが安く、火力や自家発電が高いということでは全くないことだ。

 原発の発電コストの大半は設備コストという固定費用(=埋没費用)であり、発電量に応じて新たにコストがかかる燃料費(=可変費用)ではない。逆に、火力発電、特に石油火力発電や天然ガス発電、自家発電は、設備コスト=固定費用は安く、燃料コストが高い。

 既に設備投資が終わっていて、発電の有無にかかわらず発電コストはさほど変わらない、いまだに使用可能な原発をわざわざ止めて、発電量に応じて燃料費が比例的にかかる火力や自家発電を急きょフル稼働させれば、当然発電コストは一時的に大幅に上昇する。

 しかし、原発停止によって発電コストが上昇するというのは短期の一時的現象であって、中長期の構造的な問題では全くない。中長期的に、老朽原発や危険度の高い原発を次々と廃炉にして、すべて火力や自家発電に切り替えても、コスト上昇は原理的に生じない。まず、このことをしっかり認識する必要がある。

 意識的かどうか知らないが、この短期の一時的問題と中長期の問題を一緒くたにした議論をよく見かける。

北米や極東ロシア、東アフリカから調達 

 もう一つの短期的な問題は、イランの核開発問題が夏場にかけてこじれ、万が一ホルムズ海峡が一定期間以上、通行不能な事態に陥った場合に、日本中で大電力危機になる可能性である。

 3.11以降、特に昨年夏の菅首相(当時)による定期点検後の原発再稼働のストレステスト評価の条件づけによって、秋以降に日本中の電力会社が、スポット物LNGの世界最大の輸出力を持っていた中東湾岸のカタールに殺到して購入し、原発の大規模な突発停止の穴を何とか埋めようとした。このために、現時点で日本の電力業界のLNG輸入の3割以上がホルムズ海峡内からという事態になった。同海峡が10日間以上も封鎖される可能性は、世界の中東専門家や軍事専門家によって非常に低いと評価されているが、絶対ないとは言い切れない。

 しかし今後、数年以内にはカタールに代わって豪州が世界最大のLNG輸出国に躍り出ることが確実であり、しかもカナダ、米国本土、アラスカなどの北米、および極東ロシアからも大量にLNGが輸出開始される。さらにその先には東アフリカからも大量のLNG輸出が計画されており、日本のLNG輸入のホルムズ海峡依存度は数年以内に劇的に低下し、比率としては限りなくゼロに近づく。

 しかも、現時点でホルムズ海峡依存が高いのは日本の電力業界だけであり、日本の都市ガス業界の依存度は非常に低い。万が一の同海峡危機の場合でも、電力業界へ一定の融通も可能だ。したがって、これも特殊状況下における一時的な問題にすぎず、中長期的な構造的問題では全くない。

 このへんの事情も、短期的な一時的問題と中長期の問題を混同した、エネルギー安全保障論議が無きにしも非らずであるが、大きな誤解をしないように注意したい。

 無理に導入すれば、大規模な自然環境破壊にならざるを得ず、何のために無理して再生可能エネルギーを導入するのかという究極の自己矛盾に陥る。この原理を理解していない脱原発論は、ほとんど無意味である。同時に再生可能エネルギーはコストや使い勝手(不安定性)の問題も非常に大きい。

 太陽光発電や風力発電に関しては、日が照り、風が吹かなければ発電できないので、見かけの発電容量と実際の発電可能量に非常に大きな格差があることに要注意だ。前者は設備能力の約1割、後者は2割しか発電できない。例えば、「日本の太陽光発電設備の合計が原発6基分に相当する見込み」という記事は、実際の発電能力は0.6基分と読み替える必要があるが、果たしてどこまで一般の人が理解しているだろうか?

 二酸化炭素排出の増加なしに、リーズナブルなコストで、かつ確実に、大量に、速やかに原発を代替する方法は、天然ガス・コンバインドサイクル発電(天然ガスを燃焼させてタービンを回し、排気ガスを利用して蒸気でタービンを回転させる複合発電)による、旧型石炭火力発電所を主とした発電効率の悪い旧式火力発電所の代替(同じ二酸化炭素排出量で2〜3倍の出力を得られる)と、天然ガスによる分散型コジェネレーションしかない。

 したがって、天然ガスによる原発代替を主軸に、再生可能エネルギーを補助的な代替策とせざるを得ない。天然ガスによる原発代替は、現在の緊急避難的な状況だけでなく、中長期的にも全く同じである。「いずれ再生可能エネルギーが主力になるまでの、つなぎとしての天然ガス/LNG」という発想は、根本的に誤っていることを認識することが大事だ。 

腰を据えた調達コスト低減戦略が必要

 しかし、その場合に日本が世界一高いLNGを購入し続けていることが大問題となる。

 現在の日本のLNG・天然ガス購入価格は、平均で百万Btu(英国熱量単位)当たり16ドル以上である。シェールガス革命が進行中の米国の天然ガス価格はわずか2.5ドル、欧州の天然ガス価格平均は8〜9ドル、ドイツがロシアから長期契約で輸入している欧州では割高な価格が10〜11ドルで、いかに日本が飛びぬけて高い価格で調達しているか一目瞭然だ。

 さらに、ドイツやイタリアなどは購入価格が既に日本よりはるかに低いにもかかわらず、ロシアなどに対し、欧州平均価格より高い天然ガスはこれ以上購入できないとして、現在、長期購入契約の改定を求めて仲裁裁判に訴えている。

 この世界一高いLNGの購入を3.11後、特に菅総理のストレステスト発言後、日本の電力業界がさらに一挙に拡大せざるを得なかった。このため、日本のLNG購入額は2011年全体で、前年比1兆3000億円増となった。日本が石油危機以来、30年ぶりに経験した貿易赤字額の半分以上にも相当する莫大な金額に上った。

 今年は、輸入額はさらに大幅に増加する。昨年は、中国や韓国など、日本と同様にアジア太平洋地域のLNGに依存する諸国にも、日本の電力業界による高価格購入の急拡大の悪影響が波及し、これらの国から傍迷惑であるとの非難を受けた。

 今後の中長期の原発依存については、「全面廃止=脱原発」かどうかは別として、少なくとも省原発、縮原発にならざるを得ないことは、ほぼ日本のコンセンサスと言ってよいだろう。では何で代替するのか?

再生可能エネルギーの導入は究極の自己矛盾に陥る 

 マスメディアやネット・ブログなどでは、太陽光発電や風力発電などの導入が本格し、いずれ大半の原発、あるいは化石燃料も含めて既存のエネルギー源の大半を代替できるというような議論もよく見かける。だが、それは既に筆者が様々なところで述べたように原理的に不可能であり、エネルギーの専門家で可能だと思っている人はまずいない。

 その具体的な理由をここでは繰り返さないが、要すれば、日本は国土が非常に狭くて人口密度が非常に高く、またその国土の67%が森林傾斜地であり、国土面積当たりの経済規模、経済活動密度が北欧などとは比較にならないほど高いので、原理的に出力密度(地表面積当たりの出力)が非常に低い再生可能エネルギーを主軸にすることが不可能であるということだ。

 一方で、中・韓は、日本より一歩早く、LNG・天然ガス購入価格の大幅引き下げを狙って、様々な戦略を既に打ち始めている。例えば、今年1月に韓国勢は米国シェールガス・ベースの新規LNGの大量購入に踏み切った。この調達コストは、韓国着で現行の日本の半値以下だ。中国も、北米から最新技術を導入して国内シェールガス資源の開発に本腰を入れ出し、かつ安価な中央アジアからのパイプライン・ガス輸入を戦略的急拡大中だ。

LNG調達コストが高くてもよい理由はなくなった

 なぜ、日本のLNG・天然ガス調達戦略が、欧州はもちろんのこと、中韓にも大きく後れを取っているのか?

 それには、これまで様々な理由があった。エネルギー市場の自由化がなされていないために、欧米勢のようにコスト低減圧力が弱かったこともあるし、日本の電力業界にとっては、原子力推進が最優先であり、その次の優先順位が石炭、天然ガスは3番目に過ぎず、戦略的な対応のインセンティブを大きく持っていなかったこともある。LNG・天然ガスが高ければ、原子力、石炭を増やせばよいという発想が濃厚だった。原発推進が可能であり、二酸化炭素排出量が多い石炭でも拡大使用が可能な、二酸化炭素排出規制がない条件下では、この考え方にも合理性があった。

 しかし、3.11後は状況が一変している。原発はこれから大幅減にならざるを得ないし、先進国である日本が石炭依存を増やして二酸化炭素排出を大幅に増加させることは、事実上不可能である。今や、日本のエネルギーの最重要課題は、LNG・天然ガスの調達コストをいかにして諸外国並みに低減するのかということになったのである。

 この調達戦略の構築にとって最大の障害は、日本の電力業界の原発推進・維持への未練ではないだろうか。例えば、韓国勢がいち早く確保した極めて安価な米国産LNG第1号案件を、日本勢がむざむざ見逃したのは、原発が今まで通り維持できれば、長期購入契約で輸入する米国産LNGは結果的に不要になるのではないかという懸念というか、未練が二の足を踏ませた様相が強い。

未練がある限り、調達で負け続ける

 このような未練が続く限り、腰の入った調達コスト低減戦略は構築できず、日本のLNG・天然ガス調達は負け続ける。これまでの延長線上の場当たり的な受け身の対応では、抜本的低減は無理だ。

 抜本的改善には、北米でのLNGのガス田権益取得とパッケージにした北米LNG調達、極東ロシアからのプイプラインやCNG(圧縮天然ガス)による輸入、新規参入のLNG中小開発業者や浮体型LNGやCBM(炭層メタン)などの新規ビジネスモデルからの優先購入といった、これまで若干のリスクがあるとして敬遠してきた新機軸の戦略的採用が不可欠だ。

 中韓など利害が共通な諸国との連携も必要だろうし、日本国内でも、企業同士、電力・ガス業界同士の連携プレーも必要になってくる。電力・ガス業界による、今まで以上に積極的なガス田・LNG権益参加も必要不可欠だ。

 これまでと次元が異なる新機軸の腰の据わった戦略を採用するには、原発に対する一定の見切り、ミニマム・ディフェンスラインまでの撤退戦の思い切った覚悟が絶対に必要だろう。

 筆者は必ずしも原発全廃論者ではないが、日本の電力業界の原発維持に対する未練が大きいほど、天然ガス戦略は脆弱で、中途半端になり、結果的に日本経済は大打撃を受けることになる点を強調したい。

著者プロフィール 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

首席エコノミスト 石井彰氏

石井 彰(いしい・あきら)

エネルギー・環境問題研究所代表、石油天然ガス・金属鉱物資源機構特別顧問、早稲田大学非常勤講師。1974年上智大学法学部卒業。日本経済新聞社を経て、石油公団にて1970年代後半から石油・天然ガス(LNG)開発関連業 務、1980年代末から国際石油・天然ガス動向調査・分析に従事。その間、ハーバード大学国際問題研究所客員、パリ事務所長などを歴任。著書に『世界を動かす石油戦略』、『21世紀のエネルギー・ベストミックス』、『エネルギー:今そこにある危機』、『石油 もう一つの危機』、『天然ガスが日本を救う 知られざる資源の政治経済学』ほか。

 

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