日本化学会:人工光合成、万能ワクチン…30年後の夢 - 毎日jp(毎日新聞)
2040年には人工光合成で二酸化炭素から燃料を作り、レアメタル(希少金属)も海水から自由に取り出せる−−。日本化学会(会長・岩沢康裕電気通信大特任教授)が、約30年後に実現を目指す研究目標を掲げた「化学の夢ロードマップ」を策定した。「夢」の数は分野別に104に上り、実現すれば「10〜15のノーベル化学賞受賞も可能」と意気込んでいる。
医療分野では、ウイルスの種類によらず予防効果のあるインフルエンザの万能ワクチンや、精神疾患の原因を解明して発症をあらかじめ防ぐ方法の確立などを盛り込んだ。また、東京電力福島第1原発事故を受け、注目を集めるエネルギー関連では、太陽光で水を効率的に分解して燃料電池などに使える水素を作る技術などを目指す。
また、人類の存続に不可欠な食料と水を確保するため、安定的に農作物を生産する「植物工場」や水だけを通すサイズの膜で海水を淡水化する技術の実現などを挙げた。
ロードマップは同学会のウェブサイト(http://www.chemistry.or.jp/)で概要版を公開中。また、同学会春季年会のある慶応大日吉キャンパス(横浜市)で27日午後1時半から関連シンポジウム(無料、申し込み不要)を開き、2000円で販売する。【野田武】
日本化学会が30年間「夢の行程表」−太陽電池向上、人工光合成、がん・アルツハイマー克服 http://www.worldtimes.co.jp/today/kokunai/120322-5.html日本化学会は21日、2040年まで約30年間の予測・目標を10分野計104テーマごとにまとめた「化学の夢ロードマップ(行程表)」を発表した。エネルギー分野では太陽電池の技術向上で総発電量の25%を賄い、太陽光を利用して水と二酸化炭素からエネルギーを生産する「人工光合成」を実用化。医療分野ではがんとアルツハイマー病の完全治療を掲げた。
この行程表は、若手中心に研究者約110人が議論して執筆。政府の科学技術政策や官民の研究開発費の配分、分野を超えた共同研究に生かしてもらうのが狙い。
東京電力福島第1原発事故後、重要な課題となっている新エネルギー開発について、岩沢康裕会長(東京大名誉教授)は「既存技術の向上だけでは駄目で、ブレークスルー(突破)となる新技術が必要。(歴史的に)両方に投資していない国は没落し、負けている。次世代、次々世代を含めて投資する必要がある」と述べた。
作業部会主査を務めた中村栄一東大教授は、取り上げたテーマには革命的進展をもたらす研究課題が含まれており、「30年後、この中からノーベル賞が10個ぐらい出ているのではないか」との見方を示した。
行程表には、電子機器に不可欠なレアメタル(希少金属)を海水から取り出す技術を実現し、日本の需要の大半を満たしたり、野菜だけでなく穀類や豆類、薬草も「植物工場」で効率的に生産したりすることも盛り込まれた。
日本化学会は日本最大の学会で、個人会員が約3万人、法人会員が約470社。
2040年までの「化学の夢ロードマップ」を発表する日本化学会の岩沢康裕会長=21日、東京都千代田区
「化学の夢」2040年目標例 【エネルギー】 ▽ 太陽電池の技術向上、総発電量の25%を賄う ▽ 高効率燃料電池の発電実用化 ▽ 光触媒で太陽光を利用。水と二酸化炭素からエネルギーを生産する 「人工光合成」実用化。 大規模な水素製造も【医 療】 ▽ がんの完全オーダーメード医療実現。超早期診断、予防投薬も ▽ アルツハイマー病の治療法確立 ▽ 心臓や肝臓、肺などの「ソフト人工臓器」臨床試験開始 ▽ インフルエンザの万能ワクチン開発
【環境、無機化学など】 ▽ 野菜のほか穀類、豆類、薬草の「植物工場」が世界に普及開始 ▽ 多孔質材料で海水からレアメタル(希少金属)回収。 日本の需要をほとんど賄う ▽ 国会図書館の全情報を角砂糖サイズの装置に記録