奈良先端科技大、高分子の鏡像対称性の破れと反転現象を発見。オレンジやミントの精油を溶媒にして無触媒・常温常圧で10秒かきまぜると光学活性高分子が自然発生(発表資料)bit.ly/GXDIJ1 pic.twitter.com/ipfAu5wa
朝日新聞デジタル:右型、左型プラスチック、簡単に作り分け 奈良先端大 - 関西文化・エンタメニュース
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プラスチックなどの化学物質は、同じ元素でできていても分子の構造が左右対称なものがある。それをレモンなどからとれる物質「リモネン」を使って簡単に作り分けることに、奈良先端科学技術大学院大の藤木道也教授(高分子科学)らの研究グループが成功した。この手法が応用できれば、高純度の医薬品や高性能の液晶フィルムなどを安く作れるようになる可能性がある。
ほとんどの化合物は合成すると、右型と左型の分子が半分ずつできる。形は鏡映しだが、効能などは違っている。一方だけにするのは技術的に難しくコストもかかる。
藤木教授らは、ケイ素をつなげたプラスチックの溶液に、レモンの皮から取り出したリモネンオイルを入れ、アルコールを加えて常温で10秒ほどかき混ぜた。すると、高分子のらせん構造がほぼ左型のプラスチックになり、さらにリモネンの濃度を高めると、逆に右型に入れ替わった。
NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 - プレスリリース - 鏡の国へ行ったり...
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〜無触媒、常温常圧、10秒でオレンジやミントの精油を溶媒にして左右の高分子が自然に発生〜
植物資源を有効に使って低コスト、リサイクル可能で国際競争力あるプラスチック製品づくりに期待
【概要】
「鏡の国のアリス」のように、鏡像関係にある左右反対の立体構造をもつ光学活性分子を簡便合成する新手法や新概念が待ち望まれている。左右どちらか有用な物質だけを効率良くつくる方法は大変難しく、原料と触媒を精密設計し、その上反応条件を最適化するなど、豊富な経験と高度な知識、そして巧みの技を必要としていた。
奈良先端科学技術大学院大学(学長:磯貝彰)物質創成科学研究科 高分子創成科学研究室の藤木道也教授らは、化学の常識では鏡像体が絶対できるはずのない鎖のように長く繋がった光学不活性な分子(ポリシランというケイ素系プラスチック)を、オレンジの皮やミントの葉から採れる香料分子であるリモネンのオイルに混ぜ、さらにアルコールを常温で加えて10秒かき混ぜるだけで、光学活性高分子が触媒なしで収率100%で自然発生することを発見した。リモネンの体積比を2%から60%にすると、光学活性が1回から3回反転した。この現象は1953年に提唱されたF.C.フランクの鏡像対称性の破れと増幅理論では説明がつかないため、新理論の登場が待たれる。
プラスチックは世界で年間2200万トン(東京ドーム18個分)も生産され、その多くは左右性がない安価な汎用プラスチック。しかし今回、ケイ素系プラスチックの分子量を3万から10万程度[長さ30-100ナノメーター]に揃え、オレンジやレモンなど柑橘類の皮の成分から採れるリモネン(年間生産量10万トン)を溶媒として混ぜるだけという驚くほど簡単な操作で、誰にでも光学活性高分子ができる可能性がでてきた。
汎用プラスチックに本手法を適用すれば、液晶フィルム、高純度医薬品の製造、反射防止光学フィルター、医療用器具など、高付加価値で高機能・高性能の光学活性高分子が低コストで得られ、また使用したリモネンは再回収して何度でも利用できるため、国際競争力ある製品作りに向けた設計指針となることが期待できる。
さらにポリシランは紫外部で強くらせん状の偏光を強く吸収し50%以上の効率で発光するため、紫外光源の新素材としても有望である。
さらに本発見は、鎖のように長く繋がった生命体の高分子(DNA、タンパク)がなぜ左右非対称なのかというパスツールの時代から150年以上も続く科学上の謎を解き明かす鍵となるかもしれない。
【研究の位置づけ】[原著論文] [展望] [用語解説 リモネン] …詳しくは次のURL!
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藤木道也(ふじき・みちや)
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Clik here to view.奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科教授。博士( 工学)。1978 年九州大学大学院工学研究科合成化学専攻修士課程修了。同年日本電信電話公社電気通信研究所,1986 年NTT基礎研究所を経て,2002 年より現職。1993 年九州大学より学位取得。おもな研究分野は,らせん高分子の設計,合成,構造,物性,機能相関解明。趣味はクールなホームページの作成。家族は妻と2 人の息子。