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メモ「日本の再生エネルギー動向/飯田哲也・沢昭裕」

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「普及進めば価格も低下」 環境エネルギー政策研究所 飯田哲也所長  :日本経済新聞

 ――日本の再生可能エネルギーの普及状況は。

 

 「水力発電を入れても再生エネの発電比率は10%程度で、この10年間増えていない。同じ期間に3倍にまで増やしたドイツの18%や、スペインの20%に比べて大きく出遅れた。米国でもテキサス州では風力発電、カリフォルニア州では太陽光発電が盛んだ。お隣の中国でも風力発電が急速に伸びている」

 ――出遅れの原因は。

 「4つ理由がある。1つは支援制度がなかったこと。特に再生エネ電力を所定の価格で電力会社が買い取る固定価格買い取り制度(FIT)の導入が遅れたことだ。2つ目は電力会社による送電線の独占。諸外国では電力会社に再生エネ会社との送電線接続を義務付けているところが多いが、日本の電力会社は接続に消極的だった」

 「3つ目は国と自治体による裁量規制の過剰と混乱だ。どんな小さい発電設備にも主任技術者が必要とか、風車に高層ビル並みの耐震性を求める建築基準法を適用するとか、不合理な規制が多い」

 「そして4つ目が地域社会との合意不在。今の日本では風車の建設に、激しい反対運動が起こることがある。再生エネは『地域主権』が基本。よそから来た会社だけではうまくいかない。地域社会が主役になるプロセスが必要だ。最近は私のところにも各地の自治体や市民団体が再生エネに興味をもって相談に来るようになった。頼もしい動きだと思う」

複数電源で供給は安定

 ――日本でも7月から再生エネの全量買い取りが始まるが、その結果、電気料金が上がる、という懸念がある。

 「再生エネの弱点は高コストとよく言われるが、太陽光発電のコストは近年急速に下がっている。国際的には発電能力1キロワットの太陽光モジュールは2年前には10万円したが、今は5万円ぐらい。液晶テレビ以上の値下がりペースだ。早ければ5年、遅くとも10年内に既存の発電とコスト的に同等になり得る。二酸化炭素を削減できるメリットに加えて、今後の化石燃料の高騰リスクや計り知れない原発の社会的費用を含めて考えると、再生エネによる需要家の負担はむしろ小さい」

 ――コストダウンの原動力は何か。

 「一言で言えば、ラーニングカーブ(学習曲線)の効果だ。画期的な技術革新が起こらなくても、生産量や設置量が増えるにつれて、経験や知見が積み重なり、コストが下がる。太陽光パネルと鏡の組み合わせで、コストを上げずに発電量を2倍にしたスウェーデンの例もある。国際エネルギー機関(IEA)も『再生エネはディベロプメント(技術開発)ではなく、デプロイメント(普及拡大)こそ重要』と指摘している」

 「一方、巨大技術の原子力発電は正反対の傾向がみられる。技術革新が遅い上に安全規制の強化や製造技術の劣化でコストは上昇する一方だ。フィンランドで建設中のオルキルオト原発3号機は、施工の不手際などで建設費用が当初想定の5倍近い1.5兆円まで膨らんだ」

 ――太陽光や風力は気象によって発電量が揺れる不安定電源だ。

 「確かにそうだが、風力や太陽光の比率が全電力の1%未満の現状では問題なく調整できる。スペインでは全発電設備の20%を風力が占めるが、IT(情報技術)を駆使しつつ、他の電源をミックスすることで十分な安定性を確保した。彼らは風力比率を30%まで高めても大丈夫という」

 ――2030年段階での日本の電源構成はどんな姿か。

 「節電や省エネで効率を高め今より30%電力消費を減らし、残り70%のうち、30%を風力と太陽光を中心とした再生エネルギー、40%を天然ガス中心の火力発電でまかなえばよい。原発は必要ない」

 いいだ・てつなり 京都大大学院原子核工学専攻修士課程修了、神戸製鋼所などを経て認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長。53歳。

再生エネルギーの実力は 「高コスト 利用者に負担」 21世紀政策研究所 沢昭裕研究主幹 :日本経済新聞

 原子力発電への社会の信頼が揺らぐなか、代替電源として太陽光や風力などが脚光を浴びている。一方で「お天気任せ」「風任せ」とも言われる再生可能エネルギーにどこまで期待できるのか、という懐疑論もある。再生エネの実力について、慎重な見方の21世紀政策研究所の沢昭裕研究主幹と推進派の環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長に論じてもらった。

 ――原子力発電に逆風が吹き、太陽光など再生可能エネルギーが注目されている。

 

 「日本は石油ショックや、温室効果ガス削減を定めた京都議定書の批准を受けて、再生エネに熱心に取り組んできた。例えば太陽光発電ではドイツがダントツの世界一だが、日本はそれに続く2位グループで国土の広大な米国よりも導入量が大きい」

 ――しかし、再生エネのエース格とされる風力では大きく出遅れた。

 「日本で風力が進まないのはひとえに自然条件の制約だ。風力のポテンシャルが大きいのは北海道だが、人口が少なく、遠くの消費地まで電力を運ぶ必要がある。送電線の敷設費用まで考えれば、コスト的に厳しいのが実態。脱原発を宣言したドイツも同国北部の北海で洋上風力を進めようとしているが、需要地の独南部まで電力を持ってくるには長大な送電線が必要。そのコストをだれが負担するのかが大きな問題になり、送電会社が身売りを考える事態にもなっている」

 「米国でもオバマ政権がグリーン・イノベーションを掲げて船出したが、最近は話題にもならない。補助金を与えた太陽光パネルメーカーが破綻するなどの失敗で、幻想から覚めた。太陽光の全量買いとりをやめたドイツも同じ状況だ。環境政策は聞こえがよく、政治家に人気のあるテーマだが、現実に環境を軸にした成長戦略で成功した国はほとんどない」 

導入なら「量」義務付けを 

 ――日本では、再生エネを電力会社が全量買い取る固定価格買い取り制度(FIT)が7月から始まる。

 「FITは最終的に再生エネの高いコストのつけを需要家に回す仕組みだ。原発事故の直後には太陽光発電のコストは非常に安いと言っていた人たちが、今度は『買い取り価格が1キロワット時40円以上でないと成り立たない』と言い始めた。今の電気料金は単価の高い家庭向けでも1キロワット時20円強で、それをはるかに上回る。原発がらみの補助金がよくやり玉にあがるが、FITは再生エネに対する補助金にほかならない」

 ――FITで電気料金は上昇するのか。

 「確実に上がる。東京電力の値上げ表明について世論は大反発し、政治家は東電にリストラの徹底を求めているが、同様にFITの買い取り価格算定にも厳しく臨んでほしい。電気は生活必需品であり、値上がりした時のダメージは低所得者層ほど大きいという逆進性があるからだ」

 ――月内にも買い取り価格の水準が固まる見通しだ。

 「経済産業省の調達価格等算定委員会で議論を進めているが、この場には大口需要家の代表が入ってない。もともと鉄鋼会社の人が候補に入っていたが、政治的に排除されてしまった。電力をたくさん使う立場から『なるべく安い電力がいい』と主張するのは当たり前。利用者サイドの声を聞かないで、価格を決めてしまうのは奇妙な話だ」

 ――とはいっても、フクシマ以降の日本にとって、再生エネの普及促進は非常に重要なテーマだ。

 「本当に再生エネを普及させたいなら、値段だけ決めて、発電量や設備容量などの『量』を決めないFITではなく、逆に電力会社に導入量を義務付ける規制を導入するほうが確実だ。FITでは供給会社間のコストダウン競争がなく、技術開発のインセンティブも働かない」

 「逆に電力会社も自ら再生エネ導入を飛躍的に伸ばす青写真を策定し、世論に訴えてはどうか。それをせずに、原発再稼働ばかり言えば、不信感を持たれてもしかたがない。原発事故以降、世論にたたかれ続け、電気料金値上げをめぐる深刻な説明不足もあって、電力会社はますます殻に閉じこもっている印象。だが、状況に萎縮するばかりでは『公益事業』の名がすたる」

 ――有望な再生エネは。

 「地熱発電は火山国の日本に適した形態。石炭などに木材チップを混ぜて燃やすバイオマス混焼も地域によっては有望だ」

 さわ・あきひろ 81年一橋大経済卒。経済産業省環境政策課長や東大先端科学技術研究センター教授を経て、07年より現職。54歳。

「地熱」48%、高い期待  :日本経済新聞

 太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス(生物資源)のうち日本で最も有望な再生可能エネルギーを日本経済新聞電子版の読者に尋ねたところ、地熱が48%と圧倒的な支持を集めた。「天候に左右されず安定的」「火山国として活用すべき」との意見が目立った。太陽光は23%。「どれかに頼るのではなく、地域特性に応じ最適なものを生かすべき」との指摘があった。

 再生エネ普及によるコスト増は68%が「受け入れる」と回答。「原発が危険な以上やむを得ない」といった声の一方で「発送電分離など電力業界の競争促進が必要」との注文が相次いだ。「受け入れない」と答えた読者は「再生エネならすべてよしという風潮は疑問」などを理由に挙げた。


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