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メモ「商業ロケット打ち上げ市場に参入/日本:三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)」

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いよいよ、宇宙に本腰ですね!航空機にも手が伸びており、自動車の次は、エコ関連以外では、この分野が注目ですね!

日本、商業ロケット打ち上げ市場に参入−高コストとの戦い - WSJ日本版 - jp.WSJ.com


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打ち上げに成功した「H2A」ロケット(5月18日、鹿児島県種子島)

 

【種子島(鹿児島)】三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は18日未明、鹿児島県・種子島宇宙センターから、初の商業契約に基づく韓国の衛星を搭載したH2Aロケット21号機を打ち上げ、衛星の軌道投入に成功した。 

 日本はこれにより、43億ドル(約3400億円)に上る商業衛星打ち上げ市場に参入を果たした。しかし、同市場には新規参入者が相次ぐ一方、既存の企業は低価格での衛星打ち上げを請け負っており、日本勢が生き残っていけるのか疑問の声も出ている。

 米海軍大学院のジェームズ・クレイ・モルツ教授(国家安全保障専攻)は、「日本のロケットは高い賃金や原材料費のため、これまでは世界水準を上回っていたが、ロシアのプロトンなどと競争できる水準に近づいてきた」と述べる。

  日本政府は近年、政府主導の産業発展である産業政策を縮小しているが、宇宙プログラムは官民合同のままで来ている。日本の宇宙産業の主要な目標は偵察衛星 を含め自国の衛星を軌道に乗せることだったが、三菱重工は事業を継続させるためには、政府系の衛星の受注だけにとどまらず、コスト低減のため商業衛星市場 に参入する必要があると判断した。


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世界のロケット打ち上げ市場の規模(緑:世界、青:米国)

 H2Aの打ち上げ成功比率は95%以上に達し、大口顧客にアピールできる水準となっている。だが、フランスのアリアンやロシアのプロトンなどの既存のメーカーだけでなく、インドや新興の米スペースX社との激しい競争が待ち受けている。

 三菱重工はH2Aの打ち上げコストを大幅に削減しているが、円高がこれを打ち消しており、業界関係者によればH2Aの価格は標準の打ち上げ価格である約1億ドルを大きく上回っているという。これに対し、スペースXのファルコン・ロケットは5500万ドルとはるかに安い。

 ロケット使用頻度の高い日本の衛星テレビ事業者スカパーJSATやブロードキャスティング・サテライト・システムでさえ、H2Aによる衛星打ち上げを敬遠している。スカパーは1989年以降22基の衛星を打ち上げているが、15日に打ち上げた最新のものはアリアンのVロケットを使用した。スカパーの広報担当者は、「価格、信頼性などで我々の条件を満たせば、将来日本製ロケットを使用する可能性はある」と述べている。

 三菱重工は、2007年にJAXAからロケット打ち上げの売り込みを引き受けて以来、100社以上からの引き合いがあったという。だが、成約に至ったのは今回の韓国からの1件のみだ。

 専門家の中には、日本が商業部門での競争に真剣なのかどうか疑問視する向きもある。米国の宇宙産業で働いているある企業幹部は「日本がロケット事業に参入したのは利益を得るためではないと思う。国威発揚のためだ」と語る。

 日本は、次期基幹ロケット「H3」の開発を来年にも開始し、2022年の初打ち上げを目指す計画だ。 

 三菱重工は、計画には政府の予算が充てられ、ファルコンとの価格競争力もあると話す。価格を引き下げるため、中型ジェット機の部品や自動車に使われるコンピューターを使って生産の効率化を図るという。

 価格競争力のなさを補うため、ロケット打ち上げサービスからレーダー制御システムなど地上設備まで新興国の宇宙開発計画を丸ごと請け負うことも考えている。

海外衛星を初搭載、宇宙ビジネスの勝算は 

三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は18日未明、国産大型ロケット「H2A」を使い韓国の人工衛星を打ち上げる。H2Aは今回が21回目の打ち上げだが、海外から受注した衛星を搭載するのは初めて。成功すれば、日本の宇宙ビジネスは新たな一歩を踏み出す。ただ、過当競争の衛星打ち上げ市場で勝ち残るのは容易ではない。

 

H2Aロケット21号機の中核部分。日韓の衛星を相乗りさせ打ち上げる

H2Aロケット21号機の中核部分。日韓の衛星を相乗りさせ打ち上げる

 

 

 通信や放送衛星など静止衛星の打ち上げ需要は世界全体で年間20〜25基で、今後も伸び悩むとみられる。技術進歩で海底光ファイバーケーブルの大容量化と新規敷設が進み、大陸間でデータをやり取りする通信需要を、地上の通信インフラと衛星とが奪い合っているからだ。

 

 衛星も対抗上、大容量化と長寿命化が進んだ。結果として打ち上げ回数が少なくなる。これを最大手である欧州のアリアンスペースやロシア、中国など、日本より打ち上げ実績が多いライバルがひしめく市場で、分け合う構図だ。

 

 日本航空宇宙工業会の調べでは、過去10年間のシェア(ロケットの打ち上げ機数ベース)はロシア・ウクライナ勢がほぼ半分(45%)を占め、欧州(23%)、米国(16%)が続く。

受注獲得を優先

 今回のH2A21号機は、韓国の衛星と日本の観測衛星の2つを相乗りさせて一緒に打ち上げる。H2Aの打ち上げコストは約100億円。コストを単純に分け合うなら1基当たり50億円前後の計算だが、韓国には相当割安な価格を提示したとみられている。初受注の獲得を最優先したようだ。

 

 今回の打ち上げが成功したとしても、あくまで「初めの一歩」にすぎない。継続した受注と打ち上げの成功で実績を積み重ねていかなければ、日本の宇宙ビジネスを息長く大きく育てていくことはできない。

 

 そもそも衛星の打ち上げで「もうける」ことはできるのか。宇宙政策に詳しい鈴木一人・北海道大学教授は「打ち上げビジネスは自動車や電機とは根本的に違う」と話す。

 

 世界のどの国でも純粋に民需だけでは、ビジネスとしては成り立たない。軍事や科学研究など官需が下支えをしているのが現実だ。

支援手厚い欧米

 宇宙ビジネスの最先端を走る米国のベンチャー企業、スペースX社も例外ではない。宇宙観光旅行を将来ビジネスに描き、自前で開発したロケットで無人宇宙船「ドラゴン」を近く打ち上げ、国際宇宙ステーションへの物資輸送を狙う。

 

 民間宇宙船のステーションへのドッキングが成功すれば、宇宙開発の新たな歴史が刻まれる。ただ、打ち上げ費用を払うスポンサーは実は米航空宇宙局(NASA)。スペースシャトルが退役した後、NASAは民間の輸送力を活用、ベンチャー側は官需を足がかりに飛躍しようとしている。

 

 三菱重工業によると、H2型ロケットの安定生産とコストダウンには年間4回の打ち上げが必要という。うち2、3回は日本政府からの受注を見込む。安定した官需がなければ日本の宇宙ビジネスは離陸しない。

 

 官需をテコにしてまで宇宙ビジネスを育てる必要があるのか。その議論が日本では生煮えのままだ。欧州やロシアなどは自前のロケットや衛星の保有が安全保障の観点から不可欠だと考え、さらに上乗せする形で国の戦略として宇宙ビジネスによる収益獲得を目指す。

 

 そうした戦略も司令塔もないのが今の日本の姿だ。

 

(編集委員 滝順一)

   

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