原発の動向がようやく固まって来たので、やっと、燃料が安くなって来ていることを報道開始です!…原発無くば電力不足、安全と関係のないはずの原料購入高の経済への影響、とまで言っていたのです。そして、原料供給圧力と天然ガス価格下落予想、そして円高…技術進歩もあり、2016年頃には火力発電効率70%も出て来そうですね!
東電、北米シェールガス購入検討 燃料費減へ16年メド、政府も後押し :日本経済新聞
東京電力が北米産の新型ガス「シェールガス」の購入を検討していることが1日明らかになった。早ければ2016年から調達する。価格は今の日本向け液化天然ガス(LNG)の半値に抑えられるとみており、東電は火力発電に使う燃料費の軽減を期待する。電気料金引き上げの理解を得るためコスト圧縮の姿勢を示す。公的資金注入で東電を管理下に収める政府も調達を支援する。
日本は米国と自由貿易協定(FTA)を結んでおらず、ガスの輸入には米エネルギー省の許可が必要になる。野田佳彦首相はオバマ大統領との先の首脳会談で、米国からの輸出拡大へ協力を求めた。東電と原子力損害賠償支援機構がつくった総合特別事業計画は燃料の安定調達に「国を挙げた対応が必要」と指摘。経済産業省は米国への働きかけを続ける。
東電は経産省が4日開く電気料金引き上げの審査をする有識者会議で、北米産のシェールガスの購入を検討中と表明する見通しだ。東電は7月実施の原案で家庭向け値上げの認可を経産省に申請したが、消費者などの反発は根強い。シェールガスの調達は16年以降とみられ今回の値上げ幅の縮小にはつながらないが、コスト削減への努力を示して値上げへの反発を和らげることを目指す。
シェールガスは泥や砂が固まってできる層に閉じ込められた天然ガス。採掘技術の確立で、現在は米国の天然ガス生産の2割超を占める。現地の価格は100万BTU(英国熱量単位)あたり2〜3ドルで、日本の調達価格の7分の1〜8分の1と割安。液化や輸送のコストを加えても、日本向けのLNGスポット価格の半値程度にできる。
東電はシェールガスを活用し燃料費を長期的に抑える考えだ。東日本大震災後に止まった原子力発電所の能力を火力で補った結果、LNGの消費が拡大している。東電によると12年度の調達量は震災前の10年度より約1割増える見通し。12年度分のLNGで割高な短期・スポット契約の比率は23%で、10年度(10%)の2倍超に高まった。
国内最大のガス調達企業である東電がシェールガス購入に踏み出せば、日本のエネルギー産業全体に与える影響は大きい。
(変貌LNGビジネス)(上)シェールガス、日本へ :日本経済新聞
原子力発電所の相次ぐ運転停止で2011年度の液化天然ガス(LNG)輸入量は10年度比18%増の8318万トンと過去最高となり、11年に31年ぶりの貿易赤字に陥る一因となった。世界最大のLNG輸入国にもかかわらず世界で最も高い価格で買わされている日本。企業はLNG調達の抜本的な見直しに取り組み始めた。LNGビジネス地殻変動の動きを探る。
購入分の半値
「ぜひ米国産ガスを売ってほしい」(都市ガス大手)。「日本向け販売ルートを確保したい」(大手商社)。日本のLNG調達担当者がこれまで無縁の地だった米国へ頻繁に通っている。
狙うのは米本土のシェールガスを原料にするLNG。米天然ガスの指標価格は100万BTU(英国熱量単位)あたり2ドル台。これに液化・輸送コストを加えても10ドル未満と日本が購入するLNGスポット価格(17〜18ドル)に比べて半値だ。
20年代にガス消費量の3割を輸入すると予測された米国がシェールガス革命によって一変し、16年ごろから輸出が本格化する。「割高なアジアのガス価格が下がる好機」と鳥原光憲日本ガス協会会長は期待する。
欧米のようにパイプラインでガスを調達できない日本は1970年代から産出国と長期契約でLNGを調達してきた。原油に連動して価格が上昇傾向にあったところに震災による急激な需要増につけ込まれ「韓国と並び世界で最高値で買ってくれるお客さん」(経済産業省幹部)となった。
シェールガス革命の恩恵を日本にもたらす動きがようやく本格化する。三井物産と三菱商事は4月中旬、米センプラ・エナジーがルイジアナ州で16年以降に計画するプロジェクトでそれぞれ年4百万トンの調達に向けた協議を始めることで基本合意した。資源メジャーや欧米アジアの石油ガス会社など約30社と競合したが「国内に安定した顧客を持つ強み」(三菱商事)を武器に輸出能力の3分の2を確保した。
もっともシェールガス頼みに危うさもある。米国で輸出許可を申請中なのは13カ所、輸出能力は年1億トン超と日本の11年度輸入量を上回るが「実現するのは数カ所」が関係者共通の見方。米国はLNG輸出を原則、自由貿易協定(FTA)締結国に限る。政府の許可があれば非締結国へ輸出できるが、許可が出たのは1件にとどまる。
シェールガス革命のもう1つの効果は「安定調達・供給」に安住していた電力、都市ガス会社の意識を変えたことだ。
権益取得の動き
東京ガスは住友商事と組み4月下旬、米東部メリーランド州のプロジェクトから年230万トンの調達で協議開始。認可取得後、17年以降に輸入する。岡本毅社長は「大西洋圏で取引されるアフリカ産も購入したい」と調達先拡大に意欲的だ。
リスクを伴うプロジェクト投資の抵抗感も薄れている。東ガス、大阪ガス、中部電力は三菱商事が参画するカナダのシェールガス権益を共同で取得。中部電の水野明久社長は「調達価格引き下げに効果がある」と期待をかける。調達先が広がれば広がるほど、売り手主導のLNGビジネスを変える可能性が広がる。
日本企業にとって参考になるのが自由化で先行した欧州のエネルギー企業。独エーオンは北アフリカや北海の開発事業に積極的に参画。収益の1割弱を権益から得るほか、増殖する「自社ガス田」をロシアとの価格交渉の材料に使い、調達コスト引き下げに動く。
東京電力の電気料金引き上げ論議を契機に、コストを積み上げて価格を決定する「総括原価方式」へ厳しい目が向けられている。安定調達に安住していた日本のエネルギー企業は「賢い買い手」へどのように変わるかが問われている。
(変貌LNGビジネス)(下)「日の丸ガス田」始動 :日本経済新聞
「開発費も供給先も確保できる。東京電力の権益を譲ってほしい」。昨年末以降、豪州の液化天然ガス(LNG)巨大プロジェクト「ウィートストーン」での東電権益を狙い、中国やインドの複数の資源会社が開発主体の米資源大手シェブロンに働きかけていた。
東電権益に食指
東電は2009年、3千億円超を投じて11.25%の権益取得を表明したが、取得前に福島第1原子力発電所事故が発生。賠償金負担が重い東電単独の出資が困難と知ると、新興国のエネルギー企業が権益買収に動く。
5月中旬。危機感を強めた経済産業省の後押しもあり、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、三菱商事、日本郵船の官民による日の丸連合が組まれ、権益が新興国の手に渡る事態はなんとか回避された。
新興国の台頭が世界のエネルギー勢力図を変えつつある。需要が縮む日本に比べ、中国やインドのエネルギー購買力は膨張する。日本が世界最大の需要を武器に自由に調達できる時代は過ぎた。
調達力向上が必要(東電・東ガスが運営する輸入基地、千葉県袖ケ浦市)
5月18日。この日を日本のエネルギー関係者は感慨深く迎えた。国際石油開発帝石など日本勢が76%の権益を持つ豪州北西部沖のLNG開発事業「イクシス」の着工日。日本企業が初めて操業主体となる「日の丸ガス田」で、16年末に年840万トンのLNGを生産し、7割を日本に供給する。
リスクは覚悟
LNG開発には技術力のほか資金調達や売買交渉など広く深いノウハウが必要。原油生産よりハードルが高く、手がけるのは欧米石油メジャーなど一握り。「資源のない日本に貢献したい意地」(北村俊昭社長)が総事業費約2兆7千億円の巨額投資に踏み切らせた。
資源開発の世界では操業主体を経験して初めて世界的な資源会社として認知される。「メジャーや資源国から共同事業で声をかけられるケースが増えた」と北村社長は変化を実感している。
そのひとつが英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルとの関係強化。「洋上LNGの世界を開拓しよう」との呼びかけに応じ、シェルが豪州沖で計画する世界初の洋上LNG事業へ国際帝石が17.5%出資。シェルは国際帝石のインドネシア事業に30%出資している。技術力、情報力とも世界有数のシェルと組めば国際帝石は新興国勢に先行できる可能性が広がる。
三井物産はメジャーが目を向けなかった東アフリカ沖でフロンティアを切り開く。2割の権益を持つモザンビーク北部沖合の天然ガス鉱区はガス層が次々と発見され、埋蔵量が24兆〜50兆立方フィートと単一鉱区では世界最大となる見通しで、メジャーを悔しがらせている。
単なる幸運ではない。グループの技術者は約100人と日本の石油開発大手に匹敵する規模。有望な探鉱情報をいち早く入手し、メジャーの関心が薄い「中穴」狙いに徹してきた。三井物産の飯島彰己社長は「(投資が回収できない)リスクはあっても探鉱段階から取り組むメリットは大きい」と強調する。
大阪ガスはガス田に加えて欧米LNG基地権益にも投資する。ガスの採掘から液化まで最新の情報を手にすることで、「正確なコスト計算が可能になり、投資戦略にも役立つ」と尾崎裕社長は狙いを説明する。
東電と東京ガスが米アラスカ州から初めてLNGの輸入を開始して約40年。世界のLNGビジネスをリードしてきたのは日本企業だ。新興国との資源の奪い合いはさらに激しくなる。日本企業はフロンティアを切り開き続ける覚悟が必要だ。
加藤貴行、京塚環が担当しました。