【近ごろ都に流行るもの】「有名デザイナーコラボ服」 低破格でモードの味わい: 低価格のアパレル企業と有名デザイナーのコラボ商品が続々登場している。小ロット高コストが前提のハイファッションの世界観を、大量生産体制でお手頃に提... bit.ly/KZjLji
【近ごろ都に流行るもの】「有名デザイナーコラボ服」 低価格でモードの味わい+(1/3ページ) - MSN産経ニュース
ニッセン2012年秋冬コレクション。田山淳朗氏デザインの服が破格値で登場=東京・原宿
低価格のアパレル企業と有名デザイナーのコラボ商品が続々登場している。小ロット高コストが前提のハイファッションの世界観を、大量生産体制でお手頃に提供する“両極の融合”。景気低迷の世に大歓迎を受ける一方、「ブランド価値の崩壊」など否定的な意見も根強く、試行錯誤が続いている。
10頭身のモデルがブルネットの髪を揺らしてランウェイを闊(かっ)歩(ぽ)する。輝くライトの中でポーズを決めたワンピースの値段は…なんと2990円。
大手通販「ニッセン」が5月、東京・原宿で開いた「2012年秋冬コレクション」の一幕だ。日仏の有名ブランドを長年手がけてきた田山淳朗氏によるデザイン。同社が、独自開発した軽量素材「フリードエアー」の可能性を広げたいと依頼した。
重いイメージのあったウールコートが軽やかで端正なAラインに仕立てられ、9990円という値段にも驚く。「これは通常のニッセン価格。田山さん側へのデザイン料は販促・宣伝費の位置づけで、商品価格に上乗せしていないんです」と佐村信哉副社長が打ち明けた。
今年いっぱい田山氏との協業を実施する。「仕事を一緒にすることで社員も非常に勉強になっている。コラボ商品による新規客の取り込みとともに、従来顧客にも驚きや新鮮さを感じてもらえているようだ」と広報担当。
低価格アパレルといえばユニクロ。ミラノコレクションなどで名をはせた大御所、ジル・サンダー氏と協業したブランド「+J」が昨秋、立ち上げから2年で消滅。「戦略の失敗」が報じられる中、準備を進めていた「アンダーカバー」高橋盾(じゅん)氏との新ブランド「UU(ユニクロ アンダーカバー)」が今春、スタートした。
高橋氏は裏原宿ブランドで初めてパリコレデビュー(2002年当時)を果たし、日本のストリートファッションをモードに高めた立役者。「日本人によるクリエイションを、日本から世界に発信したい」とする同社が、1年半前から要請していた。
「UU」では「家族」をテーマに男女、子供、ベビー服まで130デザインを商品化。国内830店舗中、首都圏を中心にした32の大型店とウェブのみで扱う。「売り場を大きく展開しなければ、デザイナーの世界観は表現できない。+Jはスタート時の店舗数が多すぎた結果、1店当たりの品数が薄くなり、魅力が伝えきれなかった。その反省も生かされている」とPRチームリーダーの青野光展さん。
3月の東京・銀座のグローバル旗艦店オープン時の先行発売では、専用フロアが終日入場制限する大盛況で、ライダースジャケット(メンズ7990円、キッズ4990円)などが、通常商品より高めながらも即日完売。一方で、売れ残って値下げされる商品も出ており、ネット上では多様な評価が飛び交う。
高橋氏の3月14日のブログには「発表以降、沢山の賛否両論を耳にします」とした上で、協業を受けた理由が語られていた。コストや価格のバランスが保てず泣く泣く撤退した子供服を再開できる喜びとともに、「今までアンダーカバーを知らなかった人たちへ、僕のクリエイションが届けられる」とも。コラボ商品でも、自らの作品として世に問おうというデザイナー魂やこだわりがにじむ。
低価格アパレルと有名デザイナーのコラボは4年前、リーマンショックと同時期に日本上陸した「H&M」の取り組みが世界的に有名だ。
だが、高級服が売れない時代に、わが国が誇る服飾文化を守るひとつの手法でもあると気づいた今、がぜん日本の企業とデザイナーの組み合わせを応援したくなってきた。(重松明子、写真も)