朝日新聞デジタル:児童買春、アプリがきっかけ GPSで近くの相手探し
逮捕された男2人が悪用したアプリ。自分の近くにいる人の情報が顔写真付きで表示される(画像の一部を加工しています)
GPSを利用した新たなチャットアプリの仕組みスマートフォン(スマホ)のアプリをきっかけにした児童買春の被害が広がりつつある。全地球測位システム(GPS)の情報をもとに、近くにいる人と交流できるアプリを悪用して買春をしたとして、愛知県警はこのほど、男2人を逮捕した。見知らぬ人と手軽に出会える便利さが、様々な犯罪の手段になりかねない実態がうかんだ。
このアプリは無料で、年齢制限はない。はじめに性別、年齢、顔写真といった利用者の情報を登録する。GPS機能が働き、現在地の近い順に他の利用者の顔写真やコメントが画面に表示され、好みの人とチャットができる仕組みだ。
アプリの配信サイトは、このアプリを「近くのイケメンチャット! 婚活、ご近所友達作り、恋人探し、位置出会いに」と宣伝。「ナンパ」を指南するサイトでも「ナンパ師にはおいしいアプリ」「可愛い子もけっこういるので、メッセ(メッセージ)を出しまくって下さい」と紹介されている。
愛知県警は5〜6月にかけて、このアプリで出会った女子中高生に現金を渡す約束をしてみだらな行為をしたとして、同県一宮市の会社員の男(26)と同県豊川市の男子大学生(20)を児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕した。
県警によると、逮捕された一宮市の男は、チャットで「下着を売ってほしい」と、中学3年の少女に話しかけてメールアドレスを交換した。その日のうちに会う約束をし、翌日に現金2万5千円を渡してみだらな行為をしていた。男は「2月にアプリをインストールしてから、出会った女性4、5人と買春した」と供述したという。
県警幹部は「出会いのきっかけにアプリが使われたのは、これまでにない手口だ」と指摘している。
■「絡んでください!」10代もプロフ登録
記者もこのアプリをインストールして、若者が多い名古屋市の繁華街・栄地区で試してみた。
自分のプロフィルを登録すると、近くにいる約40人の写真がずらりと並んだ。8割ほどは男性のようだ。自分と相手との正確な距離はわからないが、アプリの説明によると、左上から近い順に並んでいるという。
利用者を何人か選んでみた。写真、名前、年齢に加えて自己紹介のコメントが載っている。「暇してる時多いから誰か相手して」「絡んでください!」。遊び相手を探すような内容が目立つ。通信中の人は写真が緑色の枠で囲まれている。多くは20代としているが、11〜16歳も4人いた。
このアプリを開発した東京都内の会社によると、チャットの中で「援助交際」などの「禁止ワード」を使うと自動的に把握され、チャットができなくなる措置をとっている。ただ、同社は取材に対して「(それ以上の)リスク管理は利用者のモラルの問題だ」とし、年齢制限といった対策をとる考えはないという。
別の会社のアプリでは、近くにいる人の現在地を地図の上に示したり、自分との距離をおおまかに表示したりするものもある。
ネットの情報流通などに詳しい神戸大大学院の森井昌克教授(情報通信工学)は「GPSの情報はストーカーなどに悪用されるおそれがある。年齢認証を厳しくするなど、自主規制が必要だ」と話す。
保護者も目を光らせる必要があるようだ。メディアと教育の問題に詳しい千葉大の藤川大祐教授(教育方法学)は「スマホの契約には、新しいアプリをインストールできない設定もある。保護者は子どもがどんなアプリを利用しているかを把握し、使い方について子どもとよく話し合ってほしい」と呼びかけている。(菅沼遼、久保田一道)