2012.7.11
【そばのひ孫と孫は(わ)優しい子かい?納得!】
血中にブドウ糖があふれ足の切断、失明、腎臓病などの合併症を引き起こす「糖尿病」。ここ50年で患者数は40倍に増え、「予備軍」も合わせるとその数は2千万人を超えると推計されます。発症の若年化も進んでおり、40代女性も18.2パーセントが糖尿病もしくは予備軍とされるなど、糖尿病はもはや「国民病」です。
そうした中、これまで常識と考えられていた治療に新事実が次々登場しています。例えば、「インスリン注射」。糖尿病の早期の段階で打つことで、すい臓を休ませることができ、その結果、機能回復につながるなど、思わぬ効果が生まれています。
番組では、糖尿病の検査から治療まで、医療現場の最新事情をリポートしました。
糖尿病は血液中の糖が処理しきれずあふれてしまう病気。見つけるには血糖値を測ることが重要ですが、それだけでは発見しにくい“隠れ糖尿病”と言われるタイプがあります。血糖値は食事するたびに上昇します。健康な人は数時間で元に戻りますが、糖尿病の人は血糖値が高いまま下がりません。
隠れ糖尿病は空腹の時は血糖値が低いのですが食後にぐんと上がってしまう人のこと。1回血糖値を測っただけでは見のがされてしまうこともあります。
隠れ糖尿病を見抜く検査の一つにヘモグロビンA1cというものがあります。
通常、血糖値は血液中に流れる糖の量を測ります。しかしこの検査は赤血球中のヘモグロビンに注目しています。ヘモグロビンには糖と結びつきやすい性質があります。くっついている糖の割合を調べることで、赤血球中の糖の値を知ることができます。これがヘモグロビンA1cです。つまり、食後に糖が増えた時でも、空腹で糖が減っている時でも、赤血球の中の糖の割合は変わらないため、確実に判断ができるのです。
【ヘモグロビンA1cの基準】
<予備軍>
NGSP値:6.0〜6.5パーセント未満
JDS値:5.6〜6.1パーセント未満
<糖尿病>
NGSP値:6.5パーセント以上
JDS値:6.1パーセント以上
※足立区の9つの薬局では一昨年からヘモグロビンA1cの検査機を置き、無料で検査を実施しています。検査した800人のうち、3割が糖尿病、もしくは予備軍と疑われると分かっています。
ホームページ:http://a1c.umin.jp/
問い合わせ:筑波大学大学院人間総合科学研究科 内分泌代謝・糖尿病内科
電話:029−853−3053
治らないとされてきた糖尿病ですが、新たな治療法も生まれています。それは糖尿病発症初期の段階からインスリン注射を用いてすい臓を休ませるという療法。
血液中の糖が増えるとすい臓がインスリンを出し、細胞内に糖を取り込むよう促します。糖が増えるたびに、すい臓はインスリンを出して対処しますが、常に大量の糖が入ってくる状態になると、処理できなくなり、次第に疲弊していきます。すると、インスリンの量が減り、ますます糖が増えてしまうという悪循環に陥ります。これが糖尿病が悪化するメカニズムです。
この療法は糖尿病の初期の段階で、注射でインスリンを補います。それにより、ひとまず血糖値は下がります。インスリンを補ったことで、すい臓を休めることができ、その間にすい臓の機能が回復すると考えられています。
ことし6月、早めにインスリン導入する治療法の安全性と効果を確かめる世界40か国のべ12,000人を対象とした治験の最終報告がアメリカの全米糖尿病学会で発表されました。それによると、糖尿病患者の7年間にわたるヘモグロビンA1cの推移は飲み薬などの一般的な治療法だと高いままでしたが、早期にインスリンを導入した患者では低く抑えられていました。さらに糖尿病予備群の患者にもインスリンを試した結果、一般的な療法では43.1パーセントが糖尿病に進行してしまいましたが、早くインスリンを導入する療法では34.5パーセントに抑えられました。
※長く糖尿病を患いすい臓が疲弊しきっている場合はすい臓の機能回復まで見込めない場合があります。自分がインスリン注射の導入ができるかはかかりつけ医に相談して、その医師の指示に従ってください。
同じようにすい臓を休ませる薬として、2009年からインクレチン関連薬も登場しています。インクレチン関連薬は食後に血糖値が上がったときにしか作用しません。また肝臓から新たに糖を作り出すグルカゴンの働きを抑制する効果もあります。
※インスリン注射とインクレチン関連薬はそれぞれ患者の状態の応じて医師の判断により行うものです。どちらが優れているというものではありません。
ことし5月、九州大学の研究グループが福岡県久山町で行った疫学調査の結果を発表しました。1,999人の住民を21年間追跡した調査では、1日あたりのマグネシウムの摂取量が多いグループの方が糖尿病発症の危険度が低くなることがわかったのです。
糖尿病の専門医でマグネシウムについて研究している東京慈恵会医科大学の横田邦信教授の話によると、マグネシウム不足によって酵素の働きが悪くなると糖が細胞の中にうまく取り込めなくなると言います。インスリンが細胞にくっつくと、チロシンキナーゼという酵素が働き、糖を取り込むように、細胞に指令を出しているのです。しかしマグネシウムが不足すると、チロシンキナーゼの働きが悪化し、細胞が糖を取り込みにくくなると考えられています。
横田教授はマグネシウムは食品でとることが望ましいと言います。横田教授が考案したマグネシウムを多く含む食品の頭文字をとった標語です。
【そばのひ孫と孫は(わ)優しい子かい?納得!】
そば、ばなな、のり、ひじき、まめ、ごこく、とうふ、まっ茶、ごま、わかめ、やさい、さかな、しいたけ、いちじく、こんぶ、かき(牡蠣)、いも、なっとう、とうもろこし、くるみ
【五穀米】
<材料・2人分>
・白米・・・4分の3合
・五穀米・・・22グラム
※1人あたりのマグネシウム摂取量 23ミリグラム
【あさりのみそ汁】
<材料>
・あさり・・・正味40グラム
・だし・・・240ミリリットル
・みそ・・・小さじ2
・小ねぎ・・・適量
※1人あたりのマグネシウム摂取量 27ミリグラム
【シーフードと野菜のオイスター炒め】
<材料>
・するめいか・・・正味80グラム
・ブラックタイガー・・・正味80グラム
・かたくり粉・・・小さじ4分の3
・チンゲンサイ・・・2分の1株
・にんじん・・・3分の1本
・たけのこ・・・30グラム
・たまねぎ・・・3分の1コ
・きくらげ(乾)・・・1グラム
・ピーマン・・・2分の1コ
・サラダ油・・・大さじ1と2分の1
・しょうゆ・・・小さじ2
・砂糖・・・小さじ4分の3
・酒・・・大さじ1
・オイスターソース・・・小さじ2
※1人あたりのマグネシウム摂取量 58ミリグラム
【ひじきの白和え】
<材料>
・ほしひじき・・・4グラム
・板こんにゃく・・・40グラム
・きゅうり・・・3分の1本
・木綿豆腐・・・3分の1丁
・トマト・・・2分の1コ
・塩・・・少々
・しょうゆ・・・少々
・砂糖・・・小さじ3分の2
・いりごま・・・小さじ2
※1人あたりのマグネシウム摂取量 44ミリグラム
【バナナ】
・バナナ・・・2本
※1人あたりのマグネシウム摂取量 39ミリグラム
※1人あたりのマグネシウム摂取量の合計 191ミリグラム
注意:国が定めるマグネシウムをサプリメントでとる場合の上限は1日350ミリグラムです。
<河盛隆造さん>
・『高血糖を下げる生活事典』(成美堂出版 1,260円・税込み)
・『血糖値を下げる!レシピ―1日30gの食物繊維で糖尿病を防ぐ』(NHK出版 998円・税込み)