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メモ「妊娠検査キットに金ナノ技術/豊島逸夫」

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妊娠検査キットに金ナノ技術 :豊島逸夫の金のつぶやき :金 :マネー :日本経済新聞

 仕事の後に生ビールがたまらない暑さになってきたところで、チェコの醸造所が純金入りビールを発売した。

 1瓶に0.018グラムの純金箔が入っている。今の金価格だと、77円ほどの価値がある。だから、このビールはシャンパン・ボトル入り醸造にも18カ月かかる特別製。受注生産限定で、500本がまず製造されたそうな。ブランド名は「RE」。これは、エジプトの太陽の神の名前だとか。

 この手の純金入り飲食料品は色々あるが、どれも、使用純金の価値に比べ、法外とも言える価格がついている。先日は金箔入りラーメン1600円というのがあって驚いた。定価600円のラーメンに、パラパラと金箔がのるだけで、1000円もの付加価値がつくとは。はっきり言ってボッタクリ商法である。

 そもそも金は1グラム(約4000円)を0.1ミクロンの薄さにして畳3分の1にまで延ばせたり、細線にして3000メートルまで引き延ばせたりする展延性を持つ。もし600円のラーメンに純金の価値として1000円分の金箔を盛ったら、モヤシ大盛りのボリュームどころか、間違いなく金箔がドンブリからあふれてしまうであろう。それでも、顧客が1600円を払うのは、金や金価格についての知識がないからだと思う。

 なお、金が食されるということは、胃酸攻撃にあっても全く腐食せず変質しないという金の不腐食性による。食べても、人体への害は全くない。しかし、益も全くない。要は無害無益なのだ。胃腸を通過した後は、ただ排せつされるだけ。それでも、人々が金箔入りとありがたがるのだから、人の心を高揚させる効果はあるのだろう。慶事に供するものとしては適しているのかもしれない。そういえば、結婚式のメニューにもよくみられる。

 ちなみに、この不腐食性を利用してバイオの世界で金が使われている例もある。患者の体内の患部にピンポイントで抗生物質などを血管を通じ注入する際に、微量の金が薬を運ぶキャリアーとして使われるのだ。

 医療面では、金が、インフルエンザや妊娠の検査キットにも使われている。

 鼻の粘膜から採取したサンプルを、純金のナノ微粒子に触れさせると、インフルエンザ・ウイルスが含有されている場合に変色する技術が開発されたのだ。

 妊娠検査キットの場合は、尿中に含まれる女性ホルモンに結合するタンパク質を、金のナノ微粒子の表面につける。検査で女性ホルモンが金のナノ微粒子につき始めると、薄いピンク色が青紫色に変色するのだ。同じ原理で、抗がん剤に対する耐性も診断できるという。

 この金ナノ技術、実は、日本が世界をリードしている。首都大学の春田正毅教授は、金ナノ触媒研究の世界的な先駆者でもあり権威として金ハイテク技術関連の国際会議では基調講演のレギュラーメンバーだ。

 ハイテク関連では、携帯電話やパソコンに欠かせないボンディング・ワイアという純金極細線の生産でも、日本はダントツの世界一だ。

 2011年の電子工業分野での金需要量の世界ランキング・トップ5は以下の通り。

1. 日本 108.0 トン

2. 米国  58.3

3. 中国  51.0

4. 韓国  31.6

5. 台湾  18.1

 この電子工業用需要の総量は世界全体で319.9トン。

 11年の世界の年間金生産量は2818トンであるから、11%ほどのシェアを占めるのだ。

 ということは、この携帯やパソコンに使われている微量の金を回収すれば、300トン以上の金供給量が見込まれることになる。今や残る有望な金鉱脈が主として海底という時代に、「都市鉱山」は有力な金供給源ゆえ、金リサイクルが「成長分野」ということも納得できるであろう。

 

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。
 1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリッヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく、独立系の立場からポジショントーク無しで、金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。
ブログは「豊島逸夫の手帖」http://www.mmc.co.jp/gold/market/toshima_t/index.html
ツイッター(http://mobile.twitter.com/search?q=jefftoshima)ではリアルタイムのマーケット情報に加えスキー、食べ物など趣味の呟きも。日経マネーでは「現場発国際経済の見方」を連載中。日本経済新聞出版社や日経BP社から著書出版。
業務窓口は jefftoshima@hyper.ocn.ne.jp


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